エルサルバドル、ビットコインを法定通貨化に
2021年の6月に入って、中米エルサルバドルの議会により、ビットコインを法定通貨として採用するという法案を可決しました。ビットコインは、2020年末ごろから高騰し、2021年5月中旬から下落が続いていた仮想通貨市場ですが、人口600万人ほどの小国による世界初の試みを好意的に捉えられ、ビットコイン価格は反発し半月ぶりに4万ドルを超えてきました。
ビットコインを法定通貨にする狙いは?
人口664万人の中米エルサルバドルが、ビットコインを法定通貨とすることを決定をしました。ブケレ政権がビットコインを法定通貨として採用する「ビットコイン法」という法案を提出。ブケレ大統領の与党が多数を占め、国会で6月8日に同法案が賛成多数で可決されました。そして、90日後に法制化されますが、現在採用されている法定通貨(米ドル)は、そのまま通貨として維持するとのこと。
世界初、仮想通貨を法定通貨に採用
ビットコインを法定通貨とする決定は世界初ですが、その狙いは海外からの送金(仕送り)を促すこと。昨年のエルサルバドルは、海外からの送金が国内総生産(GDP)の約16%を占めているそうです。そうなると当然、海外からの送金が行いやすくなるために増加します。それによってGDPを押し上げて経済活性化の効果を期待しているということです。
もう一つの狙いは?
法定通貨にするもう一つの狙いは、金融包摂(貧困や難民など関わらず、誰もが金融サービスへのアクセスでき、そのサービスの恩恵を受けられるようにすること)の推進です。エルサルバドルの国民は、7割がアンバンクトつまり「銀行口座を持たない人」です。そこで今回、政府が打ち出したのがビットコインを法定通貨にして利用を促し、国民の利便性向上につなげるといった感じでしょうか!
ラテンアメリカ経済の地域委員会局長が警告!?
しかし、国連のラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)の事務局長は、エルサルバドルがビットコインを法定通貨として認めたことに対し、リスクや利益の研究が不十分だと発言しています。事務局長のAlicia Bárcena氏は、エルサルバドルのビットコインの法定通貨採用は「多くのマクロ経済(国や政府のレベルで物価や消費、金融などの動きを国全体から考える)的、財政的、法的な課題を持ち出し、注意深い分析を必要」としています。
国際通貨基金(IMF)も懸念
世界銀行は、エルサルバドルのビットコインの法定通貨採用に対し、技術的支援を拒否しています。その理由は、現在のビットコインの環境への影響や透明性が欠けているので、協力を行えないということだそうです。また、国際通貨基金(IMF)も、ビットコインの法定通貨採用に関して、経済や法律面での懸念が多くあると発表しています。
発展途上国からみれば、仮想通貨は希望!
現在ビットコインに対する各国の規制では、それを法定通貨として採用したとしても、世界銀行などのように途上国への経済的な支援を行う機関から支援を獲得することが難いという可能性が指摘されています。しかし、今後ビットコインをはじめ、仮想通貨のマネロンなどに利用されないような厳しい規制をしていけば、信頼の持てる通貨へと変わっていけるでしょう。それと。なにより、発展途上国にしてみれば貧困から抜け出すための希望になることは間違いないと思います。