「クローバー」

基本情報
- 学名:Trifolium repens
- 科名:マメ科(Fabaceae)
- 属名:シャジクソウ属(Trifolium)
- 原産地:ヨーロッパ、北アフリカ、西アジア
- 日本での呼び名:シロツメクサ(白詰草)として知られる種類が一般的
クローバーについて

特徴
- 葉の形:通常は3枚の小葉(小さな葉)からなり、「三つ葉」が基本。
- 四つ葉のクローバー:ごくまれに遺伝的・環境的要因で4枚の葉を持つ個体が生まれる。希少性が高いため「幸運の象徴」とされる。
- 花の色:白、ピンク、赤、紫などがあり、球状の小花が集まって咲く。
- 開花時期:春〜初夏(日本では5〜6月がピーク)
- 繁殖力:地下茎や種子で広がり、地面を覆うグランドカバーとしても利用される。
花言葉:「幸福」

三つ葉のクローバーの花言葉:
- 「約束」「私を思って」「復讐」など、さまざまな意味を持つ。
四つ葉のクローバーの花言葉:
- 「幸福」「幸運」「希望」「愛情」
なぜ「幸福」なのか?
- 希少性:四つ葉のクローバーは約1万分の1の確率でしか見つからないとされ、その珍しさが「見つけた人に幸運が訪れる」という言い伝えにつながった。
- 葉の意味(キリスト教文化の影響):
- 四つ葉のそれぞれが「希望」「信仰」「愛情」「幸福」を象徴するとされる。
- 四つ葉のそれぞれが「希望」「信仰」「愛情」「幸福」を象徴するとされる。
- ヨーロッパの民間伝承:
- 中世ヨーロッパでは、四つ葉のクローバーを持っていると魔除けになり、精霊や妖精が見えるとも言われた。
「四つ葉の約束」

少年のアキトが初めて四つ葉のクローバーを見つけたのは、小学三年生の春だった。校庭の片隅に広がるクローバーの群れの中で、ふと目に留まったそれは、まるで光を帯びているかのように見えた。
「ねえ、見て、これ四つ葉じゃない?」
彼の声に応じたのは、幼なじみのユイだった。彼女は草の上にしゃがみこみ、アキトの手のひらを覗き込んで目を見開いた。
「ほんとだ……すごい、初めて見た!」
二人は顔を見合わせて笑った。ユイはそっとアキトの手から四つ葉を受け取り、自分の胸ポケットにそっとしまった。
「お守りにする。これ、私たちの秘密ね」

それから何年も経った。中学生になり、忙しさや距離のせいで、二人はあまり話さなくなっていった。けれどアキトの中で、あの日の四つ葉のクローバーは記憶の中に鮮やかに残り続けていた。
春のある日、ユイが引っ越すという噂が学校に広まった。アキトは気になって仕方がなかったが、直接聞く勇気がなかった。何度も話しかけようとして、やめた。
卒業式の日、アキトはいつものクローバーの群れの前に立っていた。少しずつ日が傾き、影が長く伸びていた。
「ここにいたんだ」
振り向くと、ユイが立っていた。制服の胸ポケットをそっと叩きながら、彼女は微笑んだ。

「あの時の四つ葉、ずっと持ってたよ」
「え……まだ?」
ユイは頷いた。そして、ポケットから色あせた小さな紙に包まれたクローバーを取り出し、アキトの手のひらにのせた。
「これ、返すね。次はアキトが見つけたとき、誰かに渡す番だよ。四つ葉の意味、知ってる?」
アキトは首を振った。
「希望、信仰、愛情、そして……幸福。私ね、あの時、ちょっと魔法がかかった気がしたんだ」
彼女は小さく笑い、クローバーをアキトの手にそっと押し戻した。

「ありがとう、ユイ」
その日、彼は初めて知った。四つ葉のクローバーの花言葉が、単なる「幸運」ではなく、その一枚一枚に深い意味があることを。そして、誰かと分かち合ったとき、それはただの葉ではなく、「約束」になることを。
ユイが去ったあと、アキトはもう一度クローバーの群れに目を落とした。
「次は……誰に渡そうか」
風が吹いて、草がそよいだ。まるでクローバーたちが、静かに囁きかけてくるようだった。