「マリーゴールド」

基本情報
- 学名:Tagetes
- 科名:キク科
- 属名:マンジュギク属(タゲテス属)
- 原産地:メキシコ・中央アメリカ
- 開花時期:4月〜12月(長期間咲く)
- 花色:黄色、橙色、赤褐色、混色など
- 草丈:20〜100cm(種類による)
マリーゴールドについて

特徴
- 一年草で育てやすく、園芸初心者にも人気。
- 鮮やかな色彩と、丸くふっくらとした花形が印象的。
- 花壇やプランター、寄せ植えなどで広く利用される。
- 独特の香りを持つ(特にフレンチ・マリーゴールド)。
- 虫除け効果があることから「コンパニオンプランツ」としても知られる。
- 根から分泌される物質が、害虫やセンチュウ(寄生性線虫)を抑制する。
花言葉:「変わらぬ愛」

マリーゴールドには複数の花言葉がありますが、**「変わらぬ愛」**はその中でも特に心に残るもののひとつです。
この言葉の由来には、以下のような理由が考えられます:
1. 長く咲き続ける性質
- マリーゴールドは春から秋まで非常に長い期間、絶えず花を咲かせる植物です。
- その「咲き続ける姿」が、変わらぬ気持ち・愛情を象徴するとされます。
2. 鮮やかな花色が色あせにくい
- 太陽のように明るい橙色や黄色の花は、時間が経っても色褪せない印象を与えます。
- これが「色褪せぬ愛」「いつまでも変わらない思い」を象徴するものとされました。
3. 守り続ける強さと愛情
- 害虫を遠ざける働きを持つことから、「大切な人を守る」というイメージとも結びつきます。
- こうした守護的な性質が「深く、変わらぬ愛情」と解釈されることもあります。
「マリーゴールドの手紙」

山のふもとの町で暮らす祖母の庭には、毎年春になるとマリーゴールドが咲く。橙色の光を宿したその花は、夏の暑さにも負けず、秋の風にも揺れながら、いつまでもそこに咲き続けていた。
その花が好きだったのは、祖父だった。
私が小学三年の夏、祖父は病で床に伏せていた。もう長くはないと、医師に告げられた日、祖母は何も言わずに庭のマリーゴールドを一輪摘んで、枕元のコップにそっと挿した。
「変わらないのよ、この子。どんなに暑くても、どんなに風に吹かれても、ちゃんと咲くの」
祖母はそう言って微笑んだ。祖父は目を閉じたまま、うっすらと頷いた気がした。

祖父が亡くなった翌日、祖母は私にマリーゴールドの種をくれた。
「この花にはね、『変わらぬ愛』って花言葉があるのよ。咲き続けること、守り続けること――それが、愛なの」
その時はよく分からなかった。ただ、祖母の手からこぼれ落ちそうなほど小さな種を、大切にポケットへしまった。
それから十年以上の月日が経ち、私は都会で一人暮らしを始めた。仕事に追われ、恋人とのすれ違いに疲れ、気づけば笑うことさえ減っていた。そんなある日、祖母が倒れたと連絡が入った。
急いで駆けつけた病室。祖母は目を閉じて眠っていた。痩せたその顔には、あの日と同じ優しさが残っていて、私は胸の奥がじんと熱くなるのを感じた。

ベッドの傍らに、古びた封筒が置かれていた。私の名前が、祖母の筆跡で書かれている。
「もし私が目を覚まさなかったら、この手紙を読んでください」
そう書かれていた。手紙の中には、淡い色の便箋と、乾いたマリーゴールドの押し花が挟まれていた。
あの年、あなたがポケットにしまった種、今でも覚えていますか?
あれは、私とおじいちゃんからの贈り物です。
変わらぬ愛とは、派手な言葉じゃなく、ただそこに咲き続けること。
風に吹かれても、季節が変わっても、誰かのために静かに咲く――それが愛なのです。
いつかあなたが、迷って、立ち止まりそうになったら、この花を思い出してください。

私は、涙をこぼしながら微笑んだ。
祖母は目を覚まさなかった。でも、その言葉と花は、確かに私の中で生きている。
数ヶ月後、私は都会を離れて、祖母の家に戻った。あの庭に、もう一度マリーゴールドを咲かせたかった。
種をまき、水をやり、季節が巡る。
そして今日、庭の真ん中に、橙色の光がふわりと咲いた。
風に揺れるその姿は、まるで誰かが笑っているようだった。
私はその花に、そっと語りかける。
「ただ、ここに咲き続けてくれて、ありがとう」