7月28日の誕生花「オシロイバナ」

「オシロイバナ」

基本情報

  • 和名:オシロイバナ(白粉花)
  • 学名Mirabilis jalapa
  • 英名:Four o’clock flower / Marvel of Peru
  • 科名:オシロイバナ科
  • 原産地:ペルーなど熱帯アメリカ
  • 花期:夏(6月~10月)
  • 草丈:50~100cmほど
  • 分類:多年草(日本では一年草扱い)

オシロイバナについて

特徴

  • 夕方に咲く花
     昼間は閉じており、夕方から夜にかけて咲くのが特徴的です(名前の由来の一因にもなっています)。
  • 豊富な花色と模様
     赤、黄、白、ピンク、斑入りなど色のバリエーションが豊かで、同じ株に複数色の花が咲くこともあります。
  • 芳香性がある
     夕方になると、甘くほのかな香りを放ち、夜間に活動する蛾などを引き寄せます。
  • 種に白粉のような粉
     黒い種の中に白い粉状の胚乳が含まれており、これが和名「白粉花(おしろいばな)」の由来です。
  • 丈夫で繁殖力が強い
     日本では放っておいても種がこぼれて自然に増えるほどで、庭先や道端でもよく見かけます。

花言葉:「内気」

オシロイバナの花言葉のひとつに 「内気(Shyness)」 があります。
この言葉は、植物の性質や咲き方に深く関係しています。

● 夕暮れにだけ咲く「控えめな姿」

日中の明るい時間を避け、人目を避けるように夕方からひっそりと咲くことが、「内気」や「恥ずかしがり屋」のような性格を連想させます。まるで、人前に出ることをためらっているかのように、日没後にそっと花を開くその様子が、内気な心を象徴しているのです。

● 儚く静かな美しさ

咲いている時間も比較的短く、翌朝にはしぼんでしまうことが多いため、その儚く目立たない咲き方も、「自己主張しない性格」や「控えめな美しさ」の象徴とされました。


「夕暮れにだけ咲く」

陽が沈む少し前、古い町の裏通りにある小さな庭で、彼女はいつものように静かに水をやっていた。

 この家には、誰も足を踏み入れない庭がある。表通りからは見えないその場所に、夕方になると花を咲かせる植物がいくつか育っていた。とりわけ一角に群れて咲くオシロイバナは、夕暮れの風にそっと揺れながら、その姿をほんのひとときだけ現す。

「咲いたのね」

 少女――葉月(はづき)は、そっと膝をつき、咲き始めたばかりの花に視線を落とす。昼間にはまだ固く閉じていた蕾が、夕方の空気を感じ取って、ようやくゆるやかに開きはじめていた。

 彼女は中学三年生。人と話すのが苦手で、クラスでもあまり目立たない存在だった。教室で手を挙げることも、誰かと一緒に昼食を食べることもない。ただ静かに時間を過ごし、下校後はこの庭に来るのが日課だった。

 「夕方にしか咲かないなんて、なんだか、わたしみたいだよね」

 ふと、そんな言葉がこぼれる。明るい時間に目立つ花はたくさんある。でもオシロイバナは違う。誰もが家に帰るころ、誰にも見られない時間帯に、ようやく花を開く。そして翌朝にはもうしぼんでしまう――そんな性質を持っている。

 葉月はその花に、自分自身を重ねていた。

 ある日、同じクラスの男子――新(あらた)が、彼女に声をかけてきた。

 「この前、図書室で詩を読んでたよね。……好きなの?」

 突然のことに、葉月は言葉を失った。誰かに話しかけられるなんて思ってもみなかった。小さくうなずいたあと、彼女は少しだけ微笑んだ。

 新は、まるで夕焼けみたいな少年だった。明るくて、まっすぐで、でもどこか淡くて優しい。彼は葉月の「静けさ」に興味を持っていた。騒がしさの中にいない彼女が、まるで別の時間を生きているように見えたのだ。

 それから、二人は少しずつ言葉を交わすようになった。放課後に図書室で本を読む日もあれば、時折、庭にも足を運ぶようになった。

「この花、オシロイバナっていうんだ」

 ある夕方、葉月はそう言って、咲いたばかりの花を指さした。

「夕方だけ咲くんだ。朝になると、もう閉じちゃう。……なんだか恥ずかしがり屋みたいでしょ」

 新は笑った。「でも、ちゃんと咲いてるんだね。誰かが気づいてくれるのを待ってるみたいに」

 その言葉が、胸の奥にすっと染みこんだ。

 ――誰かが見つけてくれる。それだけで、咲く意味がある。

 その夜、葉月はノートを開き、一行の詩を書いた。

 「わたしは、夕暮れにだけ咲く けれど、あなたにだけは見てほしい」

 オシロイバナの花言葉は「内気」。でもそれは、咲かないという意味じゃない。ただ、咲く時間が、ほんの少し静かなだけ。人知れず咲く花にも、やさしい想いと強さがある。

 それを知っている人が、一人でもいるなら――きっと、それでいい。

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