「カンナ」

基本情報
- 学名:Canna
- 科名:カンナ科(またはクズウコン科とされる場合も)
- 原産地:熱帯アメリカ
- 開花時期:6月~10月中旬
- 分類:多年草(球根植物)
- 花色:赤、オレンジ、黄色、ピンクなど(鮮やかな色が多い)
カンナについて

特徴
- 大きく鮮烈な花
カンナの花は、まるでトロピカルな太陽のエネルギーを凝縮したかのように、ビビッドで存在感があります。花びらは波打つような質感をもち、遠目でも目を引く派手さが魅力です。 - 大きくしっかりした葉
葉はバナナの葉に似た大きく丈夫な形で、緑のほか、赤みを帯びた品種や斑入りのものもあります。観葉植物のような迫力を持ち、花と葉の両方が鑑賞価値を高めています。 - 強い日差しと暑さに強い
熱帯原産だけに、夏の直射日光にも負けず咲き誇ります。むしろ暑さを味方につけるような勢いがあり、真夏の庭や公園でも元気に咲き続けます。 - 育てやすい球根植物
冬場は球根の状態で越冬し、春以降に再び力強く芽吹くため、毎年楽しむことができます。
花言葉:「情熱」

カンナに込められた花言葉の中でも、とりわけ印象的なのが「情熱(Passion)」です。
この花言葉は、以下のようなカンナの性質や姿から生まれたと考えられます。
◎ 燃え上がるような色彩
カンナの花は赤やオレンジなど、炎を思わせるような鮮烈な色合いを持っています。
夏の陽射しの中で咲くその姿は、まさに熱くたぎる心や情熱的な思いを視覚化したような印象を与えます。
◎ 力強く咲く姿
猛暑にも屈せず、堂々と空に向かって咲くカンナ。
その生命力と自己主張の強さが、まるで何かに情熱を注ぐ人のエネルギーや意志の強さを象徴しているようにも見えます。
◎ 南国的で官能的な雰囲気
カンナには、どこかエキゾチックで艶やかな美しさがあります。
それは単なる派手さではなく、内に秘めた熱情や、あふれる生命力といった「情熱的な存在感」と重なります。
他の花言葉
- 快活
- 妄想
- 尊敬
これらの花言葉も、カンナの陽気さや堂々とした佇まいから来ているとされます。
「情熱の庭」

七月の終わり、祖母の家に帰ってきた。
庭の一角に、背の高い花が真っ赤に咲いている。まるで燃える炎のような色。葉は大きくしっかりとしていて、風に揺れるたびにどこか南国の空気を連れてくる。――カンナだ。
「昔ね、あの花を見ると元気が出たのよ」と、祖母が生前よく話していたのを思い出す。「情熱、って花言葉があるの。あたしにはもうないけど、あなたにはきっとあるから、覚えておきなさい」
そのときは笑って聞き流していた。でも今、祖母のいないこの庭で、その言葉の意味をようやく理解した気がした。
東京での生活に疲れていた。

仕事は一応順調。でも心が追いついていない。やるべきことをこなす日々の中で、「やりたいこと」はいつのまにか見失っていた。職場で「情熱的な人ですね」と言われたこともあったけれど、それはただの「頑張りすぎ」と同義だった。
祖母が亡くなったと連絡を受けたとき、私は「休みます」と上司に告げて、何も持たずにこの町へ帰ってきた。
庭のカンナは、まるで何事もなかったかのように咲いていた。
真夏の太陽をそのまま受け止めるように、まっすぐに立ち、どの花よりも鮮やかに、誇らしげに。
私はその前にしゃがみこんで、しばらく見入っていた。
花びらは炎のように波打ち、茎はしっかりと根を張っている。枯れそうな気配もない。むしろ暑さを喜んでいるようだ。

「燃え上がるような色彩、って感じだね」
思わず声に出した。
そしてすぐに、祖母の言葉を思い出した。
――あなたにはきっとあるから、覚えておきなさい。
情熱。それはきっと、華やかさだけじゃない。何かを信じて立ち上がり続ける力。
誰にも見えなくても、自分の心の中に静かに灯り続ける火。
カンナは、その火を形にしてくれているのかもしれない。
私はその日、庭の手入れを始めた。
草を取り、土を耕し、祖母が大切にしていた鉢をひとつひとつ磨いた。汗は滝のように流れたけれど、不思議と心は軽くなっていった。

夜、母から電話があった。「あのカンナ、あんたが生まれた年に植えたのよ」と言われた。
何も知らず、ただ「きれい」と思っていた花が、実は私と同じ年月を生きてきたということに驚いた。そして少しだけ、胸が熱くなった。
次の朝もカンナは咲いていた。
昨日よりも、少しだけ背が伸びたような気がする。
「私にも、まだ情熱ってあるのかな」
つぶやくと、風が吹いた。花がふわりと揺れた。
それはまるで、「あるよ」と答えてくれたように思えた。
――また、東京に戻ろう。少しずつでも、もう一度やってみよう。
カンナのように。太陽に向かって、堂々と。情熱を忘れずに。