「アンスリウム」

基本情報
- 学名:Anthurium など
- 科属:サトイモ科・アンスリウム属
- 原産地:熱帯アメリカ~西インド諸島
- 別名:オオベニウチワ、フラミンゴフラワー、テイルフラワー
- 開花期 :5月~10月
- 開花期:周年(観葉植物として温室や室内で管理されれば一年中花を楽しめる)
アンスリウムと呼ばれている部分の「花」に見える赤やピンク、白の部分は、実際には「苞(ほう)」と呼ばれる葉が変化したものです。中央に突き出た黄色い棒状の部分が「肉穂花序(にくすいかじょ)」で、そこに小さな花が密集して咲いています。
アンスリウムについて

特徴
- 情熱的な色合い
真紅や濃いピンク、純白など、鮮烈で光沢感のある花苞が特徴。南国らしい強い存在感を放ちます。 - ハート形の花苞
つややかなハート型をした花苞は、愛や情熱の象徴として親しまれています。 - 長持ちする花
切り花にしても非常に日持ちが良く、フラワーアレンジメントやブーケでも人気。 - 観葉植物としても楽しめる
光沢のある濃緑色の葉も美しく、室内のインテリアグリーンとして栽培されることも多い。
花言葉:「恋にもだえる心」

アンスリウムの代表的な花言葉のひとつが「恋にもだえる心」です。これは次のような理由に由来します。
- 燃えるような赤色
炎を思わせる赤い苞は、激しい情熱や燃え上がる恋心を象徴しています。 - ハート形の苞
恋や愛のシンボルであるハート形が、苦しくも切ない「恋心」を連想させます。 - 熱帯性の花の雰囲気
南国の強い日差しに映える艶やかな姿が、「抑えきれない情熱」や「熱い思い」をイメージさせる。
こうした特徴から、「恋に焦がれて胸を痛める心情」を花姿に重ね、「恋にもだえる心」という花言葉がつけられました。
「恋にもだえる心」 ―アンスリウムの赤に寄せて―

真紅のアンスリウムが、窓辺の花瓶に差してあった。
艶やかなハート形の花苞は、まるで誰かの胸の鼓動を映しとったように光を宿し、中心から突き出た肉穂花序は、抑えきれない衝動を象徴するかのように力強く伸びている。
――恋にもだえる心。
花言葉を知ったのは、彼女と初めて美術館へ行った日のことだった。展示室の隅に、現代アートのように活けられたアンスリウムを見つけて、彼女は笑みを浮かべた。
「ねえ、この花、知ってる? “恋にもだえる心”っていう花言葉があるんだよ」
彼女の声は、ひどく柔らかく、それでいてどこか熱を帯びていた。
あの瞬間、花よりも彼女の横顔の方が鮮烈に目に焼きついた。

それから数か月。
彼女と過ごす時間は、私にとって炎のようだった。いつか消えるとわかっていながら、どうしてもその熱を手放せない。
けれど、現実の世界は恋の情熱だけで回るものではない。彼女には遠く離れた街で待つ婚約者がいて、私には手放せない仕事があった。互いに一歩を踏み出すこともできず、ただもがき続けるしかなかった。
夜、電話越しに彼女がため息まじりに言った。
「もし生まれ変われるなら、何になりたい?」
私が答えに迷っていると、彼女は小さく笑って言った。
「私はね、アンスリウムになりたいの。燃えるように真っ赤で、見た人の心を苦しくさせるような花に」

その言葉が胸を刺した。
花は何も選べない。ただ咲き、ただ散る。だからこそ、純粋で、残酷だ。
私たちの恋もまた、選べない運命の中で揺らめき、燃え尽きていくしかなかった。
最後に会った日、彼女は赤いワンピースを着ていた。
夏の陽射しを浴びて輝くその姿は、まるでアンスリウムそのものだった。
「ねえ」彼女が言った。「この恋は報われないかもしれない。でも……もがいた証はきっと残るよ」
彼女の言葉に、私は何も返せなかった。ただ抱きしめる腕の中で、彼女の鼓動だけを確かめていた。

――あれから数年。
窓辺のアンスリウムは、私にあの夏を思い出させる。燃えるように赤く、抑えきれない情熱を宿した姿は、今も胸を締めつける。
恋は終わっても、心にもだえる記憶は消えない。
炎は消えても、熱は残る。
その熱を胸に、私は今日も生きている。