「フロックス」

基本情報
- 学名:Phlox
- 科名:ハナシノブ科(Polemoniaceae)
- 属名:フロックス属
- 原産地:北アメリカ、シベリア
- 開花時期:3月から11月(種によって異なる)
- 主な種類:多年草の「オイランソウ(宿根フロックス)」、一年草の「ドラムモンドフロックス」など
- 花色:赤、ピンク、白、紫、青、混色など多彩
フロックスについて

特徴
- ◎ 花が密集して咲く
フロックスは、星型の小花がまとまって球状に咲く姿が特徴的です。群れて咲くことで、花壇や庭を一気に華やかにします。 - ◎ 丈夫で育てやすい
病害虫に強く、初心者でも育てやすい植物。乾燥や高温にも比較的耐性があり、ガーデニング向きです。 - ◎ 芳香がある品種も
特に多年草タイプ(宿根フロックス)は、ほんのり甘い香りを放つものもあり、夏の庭に涼やかさを添えます。 - ◎ 種類と花期の幅広さ
春に咲く品種から、真夏、晩秋まで楽しめるものまであり、長い期間ガーデンを彩ってくれます。
花言葉:「協調」

フロックスの花言葉「**協調(Harmony / Agreement)」」は、主に以下のような花の性質や姿に由来すると考えられます:
● 小花が集まり、調和して咲く姿
フロックスは、一輪一輪は小さな花ですが、それが密集して球状や房状になって咲くため、まるで「調和のとれた集団」のように見えます。その姿が、人と人とが互いに譲り合い、うまく関係を築く「協調性」のイメージと重なります。
● 多色でありながら調和を乱さない
フロックスにはさまざまな花色がありますが、同じ株に複数の色が混ざって咲いても、どこか全体が調和して見える点も、「異なるものが共に美を作る=協調」の象徴となっています。
● 風に揺れながら咲く柔らかさ
強く主張しすぎることなく、風に揺れながら群れ咲く姿は、まるで周囲と呼吸を合わせるよう。目立たずとも調和を重んじる植物のように感じられます。
「フロックス通りの約束」

小さな坂道の途中に、ひっそりと咲く花壇がある。誰が世話をしているのかはわからないけれど、季節ごとに違う花が咲いて、通る人の足をふと止める場所だ。
六月のある日、その花壇は淡いピンクや白、紫の星のような花でいっぱいだった。風が吹くたび、花はさわさわと揺れ、まるで内緒話でもしているように見える。
その花が「フロックス」だと教えてくれたのは、毎朝そこに水をやっている老婦人だった。
「これは“協調”の花言葉を持つのよ」

彼女はにこやかに言った。
「ほら、一輪一輪は小さいのに、こうしてまとまって咲くでしょう? まるで性格も年齢も違う人たちが、穏やかに並んで笑ってるみたいで、好きなの」
その頃、私は新しい職場での人間関係に悩んでいた。立場も経験も違う同僚たちとうまくやれず、自分ばかりが浮いている気がしていた。
「協調かあ……苦手です」
私がそう漏らすと、老婦人はふと空を見上げて言った。
「それは、“誰かに合わせる”って思ってるからかもしれないわね」
「え?」

「“一緒に咲く”って、必ずしも自分を曲げることじゃないのよ。フロックスみたいに、それぞれの色や形のままで、そばにいる。それだけでいいの」
私はその言葉を、何度も心の中で反芻した。
翌日から、私は職場で少しだけ、相手の話をよく聞くようにした。無理に意見を合わせようとはせず、「そういう考え方もあるんだな」と思うようにした。
すると不思議なことに、少しずつ空気が和らいでいった。
会議のあと、先輩がコーヒーを差し出してくれた。後輩が「この資料、すごく分かりやすかったです」と言ってくれた。私は、いつの間にか“浮いている”感覚を忘れていた。

数週間後、また花壇の前を通った。フロックスはそろそろ見頃を過ぎ、色あせ始めていた。
「今日で最後かな」
老婦人が言った。
「でもまた来年、同じ場所で、同じように咲くわよ。まるで“また一緒にいようね”って約束するみたいに」
私はその言葉に、小さくうなずいた。
別々の色をまといながら、寄り添うように咲くフロックス。
きっと私たち人間も、そうやって“協調”していけるのかもしれない。