6月25日の誕生花「ヒルガオ」

「ヒルガオ」

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基本情報

  • 学名Calystegia japonica
  • 英名:Japanese bindweed / False bindweed
  • 科名:ヒルガオ科(Convolvulaceae)
  • 属名:ヒルガオ属(Calystegia)
  • 原産地:日本、中国など東アジア
  • 開花時期:6月~8月
  • 花色:淡いピンク、薄紫、白など
  • 草丈:つる性で、地面を這ったり周囲に巻きつく
  • 生育地:道端、空き地、野原などの日当たりの良い場所

ヒルガオについて

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特徴

  1. 日中に咲く一日花
     朝に花を開き、夕方にはしぼむ一日花で、早朝から昼ごろが見ごろ。アサガオ(朝顔)とよく似ていますが、ヒルガオの方がやや小さく、野生化しているものが多いです。
  2. つるを伸ばして繁殖
     他の植物やフェンスなどに巻きついて成長する、強い繁殖力を持つ植物です。地下茎でも増えるため、一度根づくと駆除が難しいほど丈夫です。
  3. 柔らかな色合いと質感
     花びらはラッパ状で、淡いピンクが多く、どこか儚げな雰囲気を持っています。その素朴な姿が、野に咲く風情を漂わせています。

花言葉:「絆」

Jacques GAIMARDによるPixabayからの画像

ヒルガオの代表的な花言葉のひとつが「絆(きずな)」です。
この意味には、以下のような植物としての性質や姿が関係していると考えられています。

◎ つるが絡み合う様子から

ヒルガオはつるを巻きつけるように成長するため、他の植物や構造物に寄り添って咲きます。この「巻きつく」「離れない」姿が、人と人とのつながりや心の結びつきを連想させ、「絆」という花言葉につながりました。

◎ 見えないところで支え合う地下茎の存在

ヒルガオは地上のつるだけでなく、地下茎でも仲間を増やしていきます。地中でつながり合いながら、目に見えない場所でも関係を保つその生態は、まるで長い友情や家族のような深いつながりを思わせます。

◎ 控えめでも確かな存在感

派手さはありませんが、夏の野に自然に咲いている姿は、そっと寄り添い、支えるような愛情を感じさせます。これは、絆の本質──無言の支えや共感──と通じる部分があります。


「昼の絆(ひるのきずな)」

ThomasによるPixabayからの画像

夏の日差しがまぶしい昼下がり、古びた線路沿いに、淡いピンクの花が静かに揺れていた。
 ヒルガオ。誰に手入れされるわけでもなく、ただ自然に、誇らしげに咲いている。

 その線路沿いを、ひとりの女性が歩いていた。
 名前は澪(みお)。十年ぶりに、故郷の町へ帰ってきた。

 「変わらないなぁ……」

 口にした声は、どこか苦笑混じりだった。
 高校卒業と同時に飛び出した町。東京での生活に必死で、戻る理由もなかった。
 けれどこの春、父が亡くなり、遺品整理のために帰ってきたのだった。

 町は少し寂れていた。子どもの頃に通った文房具屋も、友達と通った駄菓子屋ももうない。
 だけど――このヒルガオだけは、ずっと変わらず咲いていた。
 昔と同じ場所に、同じように、線路の柵に絡みついて。

 「……さやか」

 澪は小さく名前を呼んだ。
 小学校からの親友、さやか。澪にとって、最も大切な存在だった。

 二人はよく、この線路沿いを歩いた。学校の帰り道、夢の話をしたり、恋の相談をしたり。
 心細かった思春期のすべてを、さやかと分かち合った。
 けれど、高校三年の冬、たったひとつの誤解がきっかけで、関係はあっけなく壊れた。

 「先に裏切ったのは、どっちだったんだろうね」

 声に出すことはなかったが、何度も心の中で自問した。連絡する勇気もなかった。
 時間だけが過ぎ、いつしか「もう遅い」と思い込むようになっていた。

 線路を越えた先に、小さな花壇があった。ふと見ると、ヒルガオが、誰かに添えられたように石のそばに咲いていた。
 そして、そこには小さな木製の名札――

 「佐原さやか ここに眠る」

 風が止まり、澪の足が固まった。胸の奥がぎゅっと締めつけられる。

 ――会いに来るの、遅かったね。

 そんな声が聞こえた気がした。

 けれど、澪は泣かなかった。ただ、石の前に静かに腰を下ろし、ヒルガオの花に指をそっと触れた。

 「さやか、あのとき、ちゃんと話せてたら……」

 風がまた吹いた。つるが揺れ、花が澪の膝に触れた。

 絆は、目に見えないところで繋がり続ける。たとえ言葉を交わせなくても、姿を見られなくなっても。
 まるでヒルガオが、土の下で根を広げ、季節が巡っても咲き続けるように。

 澪は立ち上がり、線路沿いの道を歩き出した。
 この花が咲いている限り、きっと、さやかとの絆もほどけはしない。そう信じられる気がした。

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