「ニチニチソウ」

基本情報
- 学名:Catharanthus roseus
- 英名:Madagascar periwinkle(マダガスカル・ペリウィンクル)
- 和名:ニチニチソウ(日々草)
- 科名:キョウチクトウ科
- 原産地:マダガスカルを中心とする熱帯~亜熱帯
- 開花時期:初夏(5月)〜秋(10月頃)
- 草丈:20~50cm程度
- 花色:ピンク、白、赤、紫など
ニチニチソウについて

特徴
- 日々新しい花が咲く
名前の由来でもある「日々草(ニチニチソウ)」は、次々に新しい花を咲かせることから。ひとつの花は1日でしぼみますが、代わる代わる咲き続け、花が絶えません。 - 暑さと乾燥に強い
夏の暑さや乾燥に強く、丈夫で育てやすい植物。日なたを好み、ガーデニング初心者にも人気です。 - 光沢ある葉と整った樹形
光沢のある濃い緑の葉と、整った丸みのある草姿が特徴で、花壇や鉢植えにも映えます。 - 園芸品種が豊富
改良が進んでおり、八重咲きや濃色、淡色などバリエーション豊富。
花言葉:「生涯の友情」

ニチニチソウの花言葉にはいくつかありますが、特に「**生涯の友情(Lifelong Friendship)」」という花言葉は、以下のような植物の性質に由来すると考えられます。
◎ 毎日咲き続ける「変わらぬ存在」
1日でしぼむ小さな花を咲かせ続けるニチニチソウの姿は、まるでどんな日にも寄り添ってくれる友人のようです。そのひたむきさが、「永遠の、絶えない友情」を象徴します。
◎ 暑さにも負けず咲き続ける強さ
過酷な暑さの中でも元気に咲くそのたくましさは、困難の中でも支え合える友情を思わせます。変わらずそばにいてくれる友の存在への感謝が、この言葉に込められているのです。
◎ 四季の中でも長く咲き続ける
春から秋まで、長期間にわたって花を咲かせる姿もまた、「長く続く関係性=生涯の友情」を連想させる理由となっています。
「変わらぬ花のとなりで」

高三の夏、私はニチニチソウを育てはじめた。
発端は、ただの偶然だった。学校の園芸部が余った苗を配っていて、たまたまそれを受け取ったのが私だ。手のひらサイズのポットに、小さなつぼみがついていた。
「それ、日々草っていうんだよ。毎日、新しい花を咲かせるの」
声をかけてきたのは、幼なじみの美咲だった。
美咲とは小学校の頃からの付き合いで、家も近所。中学まではよく一緒に登下校していたけれど、高校に入ってからはクラスも部活も違い、話す機会は少なくなっていた。

でもその日、彼女は笑って言った。
「水を切らさなければ、暑さにも強いんだよ。すごく、がんばり屋さんなの」
その言葉がなぜか胸に残って、私は持ち帰った苗をベランダに置き、毎朝水をやるようになった。
ひとつの花は一日でしぼんでしまうけれど、翌朝にはまた新しい花が開いていた。真夏の陽射しの中でも、毎日、欠かさず。
それはまるで、どんな日にも隣にいてくれた美咲のようだった。
八月の終わり、美咲が転校することになった。
お父さんの転勤で、急に決まったという。私は何か言いたかったのに、言葉が見つからず、ただ「そっか」とだけ返した。

「ねえ、ニチニチソウ、咲いてる?」
駅までの見送りの途中、美咲が言った。
「咲いてるよ。毎日、ちゃんと」
「よかった。なんだか、あれって友情みたいだよね。昨日と今日がちょっとずつ違っても、変わらず咲いてる」
私はうなずいた。あの花は、少しずつ、でも確かに咲き続けている。昨日の花と今日の花は違うけれど、その姿はいつも隣にあった。
「ありがとう、ずっと一緒にいてくれて」
美咲が言った。
私はたまらなくなって、彼女の手を握った。
泣きそうだったけれど、笑った。たぶんそれは、美咲も同じだった。
それから数年。
大学に進み、一人暮らしを始めた部屋のベランダでも、私はニチニチソウを育てている。季節がめぐるたびに新しい苗を買い、毎朝水をやる。

ふと、あの夏を思い出す。
真っ直ぐな陽射しの中で、何も変えられなかったこと。でも、確かにあったもの。変わらず咲く花。変わらず隣にいてくれた、美咲という存在。
今でも手紙をやりとりしている。
遠く離れても、気持ちは変わらない。
まるでニチニチソウのように、静かに、でも確かに続いている。
友達って、こういうものかもしれない。
声をかけなくても、毎日会えなくても、ちゃんとそこにいる。
一日一日を咲かせながら、いつかまた会う日まで。
今年もまた、ベランダで小さな花が咲いた。
私はそれに「おはよう」と声をかける。
――変わらぬ友情のように、今日もまた、一輪。