「赤いバラ」

基本情報
- 分類:バラ科 バラ属
- 原産地:北半球の亜熱帯から寒帯にかけて広く分布・アジア、ヨーロッパ、中近東、北アメリカ、アフリカ
- 開花時期:4〜11月(四季咲き品種は春〜秋)
- 花色:深紅、鮮紅色など
- 用途:庭植え、切り花、花束、贈答用
赤いバラについて

特徴
- 花びらが重なり合う、気品と存在感のある花姿
- 色彩が強く、視線を引きつける華やかさを持つ
- 香りのある品種も多く、感情に訴える力が強い
- 一本でも強いメッセージ性を持つ花として知られる
- 古くから「愛」を象徴する花の代表格
花言葉:「熱烈な恋」

由来
- **赤色が象徴する「情熱」「血潮」「燃える心」**から、強く激しい愛情を連想
- 赤いバラは古代ローマ時代から愛と美の女神ヴィーナスと結びつけられてきた
- 恋に身を焦がすような感情や、抑えきれない想いを表す色として定着
- 中世ヨーロッパでは、赤いバラを贈ることが「命がけの愛」の告白とされた
- 控えめではなく、迷いなく相手を想う心が「熱烈な恋」という花言葉へと結びついた
「燃える色で、あなたを想う」

赤いバラを初めて見たのは、祖母の古いアルバムの中だった。黄ばんだ写真の隅で、若い祖母が胸に抱えていたのは、驚くほど鮮やかな深紅の花束。白黒写真なのに、その赤だけが、こちらに迫ってくるように感じられた。
――恋はね、火みたいなものよ。
祖母はよく、そう言っていた。触れれば温かく、近づきすぎれば身を焦がす。それでも人は、火に惹かれる。赤いバラは、その象徴なのだと。
私は今、その赤を、両手に抱えている。

花屋でこのバラを選んだとき、迷いはなかった。淡い色も、可憐な花も、今日は違うと思った。伝えたいのは、もっと強い気持ち。胸の奥で脈打つ、血潮のような想いだった。
赤という色は、不思議だ。見るだけで心拍が少し速くなる。情熱、衝動、そして覚悟。どれも、この色の中に溶け込んでいる。古代ローマの人々が、愛と美の女神ヴィーナスに赤いバラを捧げたという話を、私は思い出していた。人が神に願うほどの想い。それは、ただの好意ではなく、人生を賭けるほどの恋だったのだろう。

あなたと出会ってから、私は何度も自分を抑えてきた。迷惑ではないか、傷つけないか、失うものはないか。そう考えるほど、気持ちは胸の内で燃え上がり、逃げ場を失っていった。
恋に身を焦がす、という言葉は、決して大げさではない。眠れない夜、仕事中にふと浮かぶ横顔、何気ない一言に揺れる心。理性で覆おうとしても、赤い火は消えてくれなかった。
中世ヨーロッパでは、赤いバラを贈ることは「命がけの愛」の告白だったという。軽々しく渡せる花ではない。拒まれるかもしれない。笑われるかもしれない。それでも、差し出す勇気そのものが、愛の証だった。

私は深呼吸をして、あなたの前に立つ。
逃げ道は、もう作らない。控えめな言葉も、遠回しな態度も、今日はいらない。ただ、迷いなく、真っ直ぐに想いを差し出す。
「……これ、受け取ってほしい」
差し出した赤いバラは、炎のように揺れて見えた。けれど不思議と、怖くはなかった。熱はある。でも、それ以上に、覚悟があった。
もし拒まれても、この気持ちが嘘になることはない。赤いバラが象徴するのは、報われるかどうかではなく、燃え尽きるほど想ったという事実なのだから。
あなたが花を見つめ、そしてゆっくりと微笑んだ瞬間、私は理解した。
――これが、熱烈な恋なのだと。
赤いバラは、今日も変わらず赤い。
誰かの心を焦がすために。
そして、迷いなく愛する勇気を、そっと試すために。