7月11日の誕生花「ハイビスカス」

「ハイビスカス」

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基本情報

  • 科名/属名:アオイ科/フヨウ属(Hibiscus)
  • 学名Hibiscus (Hibiscus rosa-sinensis)
  • 原産地:ハワイ諸島、モーリシャス島
  • 分類:常緑低木(一部は多年草)
  • 開花時期:5月〜10月(暖地では通年)
  • 花色:赤、ピンク、黄色、オレンジ、白、紫など多彩
  • 別名:ブッソウゲ(仏桑花)

ハイビスカスについて

Danny SchreinerによるPixabayからの画像

特徴

  • 南国の花の代表格
     大きく鮮やかな花を咲かせることから、トロピカルなイメージを持つ花として有名です。
  • 一日花
     多くの品種は「一日花」で、朝咲いて夕方にはしぼむという儚い性質を持っています。ただし次々に新しい花を咲かせ、長期間楽しめるのが魅力です。
  • 開花力が高い
     温暖な気候を好み、日光を浴びるほどよく花をつけます。庭植え・鉢植えどちらでも育てやすく、ガーデニングにも人気。
  • 花の構造
     5枚の大きな花びらと、中央に長く突き出た「雄しべ・雌しべ」が特徴的。花の形がダイナミックで、遠目からでも目立ちます。

花言葉:「繊細な美」

hartono subagioによるPixabayからの画像

ハイビスカスにはさまざまな花言葉がありますが、「繊細な美(delicate beauty)」は特に以下の点に由来すると考えられています。

◎ 一日でしぼむ花の儚さ

 見事に咲いたその美しさは、わずか一日で終わってしまう――
 この「儚さ」と「美しさ」の対比は、まるで一瞬の中に宿る美のようであり、まさに「繊細な美」を象徴しています。

◎ 花びらの質感と色合い

 ハイビスカスの花びらは薄くて柔らかく、光を通すほど繊細。
 さらに赤やピンク、黄色などの鮮やかな色彩が、やさしくも華やかな印象を与えます。

◎ 美しくも傷つきやすい存在

 南国の強い日差しの中で輝く姿は生命力にあふれていますが、ちょっとした環境の変化で傷んでしまうほどデリケート。
 そんな特性も「繊細な美」という言葉にぴったりです。


「一日だけの約束」

Dinesh kagによるPixabayからの画像

海風が静かに吹く、南の島の小さな入り江。
 今日も、崖のふちに咲いた真紅のハイビスカスが、朝の光を受けてそっと開いた。

 「やっぱり、今日も咲いてるんだね」

 椰子の木の下に立つ青年・奏太は、しゃがみ込んでその花に視線を落とした。
 隣には、旅先で出会った少女――真白(ましろ)が立っている。真っ白な帽子と、淡いピンクのワンピースが風に揺れていた。

 「この花、一日でしぼんじゃうんだって。夕方にはもう閉じちゃう。だから……朝のこの時間が、一番きれい」

 真白はそう言って、少し寂しそうに微笑んだ。
 奏太は彼女とこの島で出会って、もう三日目だった。宿も偶然同じで、朝になると不思議と決まってこの崖に向かって歩く。話すことは多くないけれど、なぜか言葉がなくても居心地がよかった。

 「なんか、お前みたいだな」
 「……え?」
 「朝の光の中でだけ咲いてて、ふっといなくなっちゃいそうな感じ」

 真白は驚いたように目を見開き、やがて困ったように笑った。

 「……あたしね、病気なの」
 「え……」

hartono subagioによるPixabayからの画像

 その声はあまりにあっけなく、波の音に溶けるようだった。
 「すぐにどうこうってわけじゃないけど、体の中に、ずっと“夕方”が迫ってるの。あたしの“今”って、朝のうちだけなのかもしれない。だから……朝の花が好き」

 赤いハイビスカスが、風に揺れていた。
 触れたら壊れてしまいそうなほど柔らかい花びら。だけど、その色はまっすぐで、あざやかで、命を抱いていた。

 「わたし、自分のことをこの花みたいだなって思ってる」
 「……繊細な美、ってやつか」
 「うん。強く咲いてるのに、ふとしたことで傷ついちゃう。でも、それでも咲きたかったんだって、思えるようになった」

 奏太は返す言葉が見つからなかった。ただ、少しだけ手を伸ばして、真白の帽子のつばを押さえた。風が吹いていた。小さな花も、彼女の髪も、時間もすべて、ほんの一瞬のまぶしさの中にあった。

 やがて、彼女が小さく言った。

 「明日、東京に戻るんだ」
 「……そっか」

 「でも、この島の朝のこと、ずっと忘れない。ねえ、またいつか咲けると思う? わたしの中の花」

 奏太は少し笑って、そっと答えた。

 「咲くよ。今みたいに、光をちゃんと見てれば。朝は、何度でも来る」

 真白は目を伏せ、もう一度ハイビスカスを見た。
 まるで、自分の心を映すような、真っ赤な一輪の花。

 それはたった一日でしぼむ花だった。けれど、誰よりも鮮やかに、自分の時間を咲かせていた。

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