6月23日の誕生花「ビヨウヤナギ」

「ビヨウヤナギ」

基本情報

  • 和名:ビヨウヤナギ(美容柳)
  • 学名Hypericum chinense
  • 英名:Chinese St. John’s wort
  • 科名/属名:オトギリソウ科/オトギリソウ属
  • 原産地:中国
  • 開花時期:6月〜7月(初夏)
  • 花の色:鮮やかな黄色
  • 分類:落葉低木

ビヨウヤナギについて

特徴

  • 優美な長い雄しべ
     ビヨウヤナギ最大の特徴は、黄金色に輝く繊細で長い雄しべです。糸のようにしなやかで、まるでレース細工のような風情があり、風に揺れる姿は非常に優美です。
  • 花びらと葉のバランス
     花びらは5枚で鮮やかな黄色。柳のように細長く垂れた葉と組み合わさることで、しなやかで上品なシルエットを作り出します。
  • 低木ながら存在感のある花姿
     樹高は1〜1.5mほどで庭木や生垣としても親しまれていますが、花の美しさと造形的なフォルムにより、高貴な印象を与えます。

花言葉:「気高さ」

ビヨウヤナギに与えられた花言葉のひとつに「気高さ(nobility)」があります。その由来は以下の点にあります:

1. 繊細で気品ある花姿

 ビヨウヤナギの雄しべは、非常に細く長く、金色に輝くように咲き広がります。その姿はまるで王族の冠飾りや装飾品のようで、自然の中にあってもひときわ高貴な雰囲気を放ちます。

2. 風に揺れる優雅な佇まい

 派手すぎず、しかし目を引く美しさを持ち、慎み深さと堂々とした風格を併せ持つ様子から、内面の「気高さ」が象徴されているとされます。

3. 名前に込められた「美容」の美意識

 「美容柳」という名前自体が、「美しさ」と「優雅さ」を感じさせ、古来より女性的な気高さや気品を連想させる植物として愛されてきました。


「風に揺れる、美容柳のように」

六月の終わり、梅雨の晴れ間に、祖母の庭でひときわ鮮やかな花が揺れていた。
細く長い金の糸のような雄しべを、陽の光が照らしていた。
——ビヨウヤナギ。祖母が最も愛した花だった。

「この花を見ると、昔のことを思い出すよ」
かつて祖母がそう言っていたのを、ふと思い出す。

祖母、静子は、小さな茶道教室を営んでいた。戦後の混乱の中でも凛として立ち、教え子たちに「気品とは姿勢にあらず、心に宿るものです」と語り続けていた。
私はその背中を見て育った。美しさを競うのではなく、穏やかに、けれど確かに人を包み込むような在り方を。

静子が亡くなって一年が経つ。
その命日に合わせ、私は庭の手入れをしに来ていた。枝垂れた葉の間から、黄金の雄しべがそっと揺れている。まるで、あの人の笑みのように。

「人から何を言われても、自分の信じた美しさを大事にしなさい」
中学生の頃、私が地味だと笑われて泣いて帰った日、祖母はそう言って、ビヨウヤナギの下で肩を抱いてくれた。
「ほら、この花、派手ではないけれど、すごく上品でしょう。風に逆らわず、けれど負けずに咲いている。あなたもそんなふうでいいのよ」

その言葉が、どれほど私を支えてきたことだろう。
就職も、結婚も、人より少し遠回りした。けれど今、私は好きな仕事に就き、小さな出版社で自分の想いを言葉にできている。
——派手じゃなくていい。けれど、誰かの心にそっと残るような美しさを。

ふと、風が吹き、庭のビヨウヤナギが一斉に揺れた。金色の雄しべが日の光を受けてきらめき、一瞬、何か神々しいものを見るような気がした。
まるで、祖母が「よくやったね」と微笑んでくれているようだった。

私は一輪、そっと切り取り、小さな花瓶に生けた。
仏壇の前に置き、深く頭を下げる。

「おばあちゃん、わたし、ちゃんと歩いてるよ」
「あなたが好きだったこの花のように、自分らしく、気高くありたいと思ってる」

風がまた、庭の草木を揺らした。
その中で、美容柳だけが、ひときわ静かに、優雅に揺れていた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です