6月12日の誕生花「ユッカ」

「ユッカ」

Роман РаспутинによるPixabayからの画像

基本情報

  • 学名:Yucca
  • 和名:ユッカ属(イトラン属)
  • 別名:「青年の木」(若くシンボル的な存在感から)
  • 原産地:北アメリカ、中央アメリカ
  • 開花時期:5月~10月頃
  • 分類:リュウゼツラン科、バツリ系単子葉植物

ユッカについて

特徴

  • :剣のように鋭く、上へ向かって伸びる肉厚の常緑葉
  • :直立し、高い種では数メートルに達する木質の幹を形成
  • :初夏〜夏に白〜クリーム色のベル型の花を咲かせる
  • 耐性:乾燥・暑さ・寒さに強く、手間がかからないタフな観葉植物
  • 栽培しやすさ:日当たりを好み、水やりは控えめ。風通しの良い環境が適しており、初心者にも扱いやすい

花言葉:「勇壮」

ユッカの花言葉には「勇壮」「颯爽」「偉大」「立派」などがあり、これは

  1. 鋭く強靭な葉がまるで剣のように力強く伸びる姿
  2. 白い花が清々しく、空に向かって堂々と咲く様子
    から来ていると言われています。

「青年の木」という別名にも表されるとおり、若々しく勇ましいイメージが根底にあります


「青年の木の約束」

駅から少し離れた町外れに、小さな園芸店がある。看板には「緑の扉」と手書きの文字。古びているが、不思議と味がある。店の奥、日差しが差し込む窓際に、それはあった。

背筋を伸ばして立つ、ひときわ存在感のある観葉植物。鋭く尖った葉を天に向け、まるで剣士が静かに構えているようだった。

「それは、ユッカ。『青年の木』って呼ばれてるの。強くて、真っ直ぐで、そして勇ましいのよ。」

店主の言葉に、佐伯はふと足を止めた。

「花言葉はね、『勇壮』とか『颯爽』とか。若さの象徴みたいな植物なの。」

それは、彼にとって妙に引っかかる言葉だった。

大学を卒業して三年。夢だった職場に就いたものの、現実は理想とはかけ離れていた。やりがいも情熱も、日々の残業の中で、いつしか霧のように消えていった。

「でも、たまに花も咲くのよ。白くて清々しくて、堂々と空を見上げるような花。」

佐伯はその話に、胸の奥がわずかに震えるのを感じた。

「…この木、もらっていきます。」

その日から、彼の部屋に青年の木がやってきた。

初めはただの観葉植物だった。朝の光に晒し、水をやり、ときどき話しかけた。すると、少しずつ、変化が生まれた。彼の生活に、わずかだがリズムが戻ってきたのだ。

ふとした瞬間に、ユッカの葉の尖りを見ると、自分の姿勢が正される気がした。うつむきがちだった首が、少しだけ上を向く。白い花を咲かせる姿を想像するたびに、自分もまた何かを咲かせられるのではないかと思えた。

季節がひとめぐりしたある朝。

窓のそばで、ユッカが白い花を咲かせていた。まるで空に向かって誇らしげに咲く、希望の灯火のように。

その日、佐伯は会社に辞表を出した。勢いだけではなかった。新しい道を歩むため、準備もした。かつて諦めた、学生時代に夢見た小さな設計事務所を始める覚悟だった。

友人に言われた。

「なにがあったんだ? 急に変わったな。」

彼は笑った。

「毎日見てたんだよ、真っ直ぐ立ってるヤツを。」

青年の木は今も彼の部屋にいる。花はまた散ったが、葉は今も空に向かって剣のように伸びている。

若さは年齢じゃない、と佐伯は思う。

まっすぐ立ち、空を見上げる。その姿勢こそが、「勇壮」や「颯爽」を体現するのだ。人生に迷った時は、ふとあの木を見ればいい。きっと、背筋を伸ばせと言ってくれるだろう。

そして、白い花が咲いた日を、また迎えるために。

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