10月25日の誕生花「ガイラルディア」

「ガイラルディア」

基本情報

  • 和名:テンニンギク(天人菊)
  • 英名:Blanket flower(ブランケットフラワー)
  • 学名Gaillardia
  • 科名/属名:キク科/テンニンギク属
  • 原産地:アメリカ
  • 開花期:5月〜10月頃
  • 花色:赤、黄、オレンジ、複色(赤×黄のグラデーションが代表的)
  • 草丈:30〜70cm程度
  • 多年草または一年草(品種による)

ガイラルディアについて

特徴

  • 花びらの外側が黄色、内側が赤色など、燃えるような色合いが特徴的。
  • 長期間咲き続ける丈夫な花で、夏の暑さにも強い。
  • 花形はヒマワリやガーベラに似た放射状
  • 乾燥や日差しに強く、痩せた土地でもよく育つ
  • 北アメリカの大地に群生する様子から、「大地を覆う花」として英名の“Blanket flower”がついた。

花言葉:「団結」

由来

  • ガイラルディアは群れ咲きする性質があり、広い地面を一面に覆うように咲く。
     → その姿が「力を合わせてひとつになる」イメージに重なる。
  • 一つ一つの花は小さくても、集まることで鮮やかな景色を作り出すことから、
     「団結」「協力」「チームワーク」の象徴とされた。
  • 強い日差しにも負けず共に咲き続ける姿勢が、仲間との絆や結束の象徴とされている。

「ひとつの色になる日」

照りつける夏の陽射しの中、校庭の端にある花壇で、瑠奈はスコップを握っていた。
 炎天下に立ち尽くす彼女の背中を、蝉の声が包む。

 「なあ、もうやめようぜ。文化祭、花壇展示なんて誰も見ねぇって」
 隣でため息をついたのは、クラスメイトの海斗だった。

 「でも……決まったことだし」
 瑠奈は手を止めず、土をならしながら答えた。
 「せっかくだから、きれいに咲かせたいの」

 それは、誰に向けた言葉だったのか。
 去年、クラスは文化祭の企画で意見が割れ、結局なにもできなかった。
 “まとまらない”——それが、いつのまにかこのクラスの代名詞になっていた。

 そんな中、担任が提案したのが「花壇展示」。
 クラス全員でひとつの花壇を作るという、単純な企画だった。

 けれど、実際に残ったのは数人。
 そして今も、花壇の前には瑠奈と海斗だけが立っている。

 「ガイラルディア、だっけ?」
 海斗が袋のラベルを覗き込む。
 「……派手な花だな。赤と黄色、混ざってんのか」
 「うん。咲くと、まるで炎みたいなんだって」

 瑠奈は微笑んだ。
 「先生が言ってた。“この花はね、群れて咲くの。みんなで地面を覆うようにして”って」

 その声には、どこか祈りのような響きがあった。

 ——ひとりじゃ、きれいに咲けない花。

 その言葉が、瑠奈の心の中で何度も繰り返された。

***

 数週間後、校庭の花壇は見違えるほど明るくなっていた。
 黄色と赤の花びらが風に揺れ、まるで陽炎のように揺らめいている。

 「……ほんとに咲いたな」
 海斗がつぶやく。
 「うん。頑張ったね」
 瑠奈が笑った。手にはまだ土の匂いが残っていた。

 そのとき、後ろから声がした。
 「すげぇ、これクラスのみんなでやったの?」
 振り返ると、クラスメイトたちが立っていた。
 あの日、手伝いに来なかった子たち。部活帰りの姿もあれば、スマホを片手にしたままの姿もあった。

 「なにこれ、めっちゃきれいじゃん!」
 「赤と黄色のバランス、いい感じだね!」
 「なあ、看板つけようぜ。“3年A組花壇”って!」

 口々に言いながら、彼らは花壇の周りに集まっていく。
 いつのまにか笑い声が広がり、誰かが写真を撮り始めた。

 海斗が瑠奈の方を見て、少し照れくさそうに言った。
 「……ほら、団結したじゃん。結果的に」

 瑠奈は花壇に目をやった。
 陽の光を浴びたガイラルディアが、まるでクラス全員の笑顔を映したように輝いている。

 赤も、黄色も、どちらかが主張するわけじゃない。
 互いの色を引き立てあって、ひとつの炎のように揺れている。

 「うん……。みんなで咲けたね」

 風が吹き抜け、花びらが一斉に揺れた。
 まるで“ありがとう”と囁くように。

 その瞬間、瑠奈は確かに感じた。
 ——バラバラだった心が、いま確かにひとつの色になったことを。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です