12月18日の誕生花「セージ」

「セージ」

基本情報

  • 学名:Salvia officinalis
  • 科名/属名:シソ科/サルビア属
  • 分類:多年草(常緑性の小低木)
  • 原産地:地中海沿岸
  • 開花時期:5〜6月頃(品種による)
  • 花色:紫、青紫、淡いピンクなど
  • 利用:ハーブ(料理・ハーブティー)、薬用、観賞用

セージについて

特徴

  • 銀白色がかった細かな毛のある葉で、香りが強い
  • 乾燥に強く、日当たりと水はけの良い環境を好む
  • 抗菌・防腐作用があるとされ、古くから保存や薬草に用いられてきた
  • 葉は肉料理やバター、ソーセージとの相性が良い
  • 花は穂状に立ち上がり、落ち着いた気品がある

花言葉:「家族愛」

由来

  • 「知恵」:学名 Salvia がラテン語の「救う・癒す(salvare)」に由来し、賢明な薬草として重宝された歴史から
  • 「尊敬」:古代ローマや中世ヨーロッパで神聖な植物とされ、収穫時に儀式が行われたことに由来
  • 「家庭の徳」:長寿や健康を守るハーブとして家庭菜園で大切に育てられてきた背景から

「セージの庭で、知恵は静かに香る」

祖母の家の裏庭には、季節を問わず灰緑色の葉をたたえたセージが植えられていた。花の盛りでもなく、実りを誇るわけでもない。ただ、風が吹くたびに、乾いた土の匂いと混じって、少し苦く、澄んだ香りを放つ。その香りを嗅ぐたび、私は理由もなく背筋を伸ばしたくなるのだった。

 「この葉はね、昔から“知恵の草”って呼ばれてきたのよ」
 祖母はそう言って、一枚の葉を指でつまんだ。銀色の産毛が陽にきらりと光る。
 「学名はサルビア。救う、癒す、って意味の言葉から来ているの。人を治すだけじゃなく、迷った心も、ね」

 私はその言葉を半分も理解していなかった。けれど、祖母が病に伏した父のために、毎朝セージの葉を乾かし、湯を注いでいた姿だけは、はっきり覚えている。特別な祈りの言葉はなかった。ただ静かに、丁寧に。まるで葉そのものを尊んでいるようだった。

 祖母はよく、古い話もしてくれた。古代ローマでは、セージを摘む前に身を清め、感謝の儀式を行ったこと。人は自然の力に敬意を払わなければ、その恵みを受け取る資格はないのだと。
 「尊敬ってね、相手を見上げることじゃないの。同じ場所に立って、大切に扱うことよ」
 その言葉は、私の胸に小さな石のように沈んだ。

 時が流れ、祖母は庭を残していった。私は都会での暮らしに疲れ、久しぶりにその家へ戻った。雑草に囲まれながらも、セージだけは変わらずそこにあった。誰に世話をされるでもなく、それでも枯れず、香りを保っている。

 葉を一枚摘み、湯を沸かす。カップから立ちのぼる香りに、胸の奥がゆっくりほどけていくのを感じた。健康であること、日々を続けること、誰かを想って手を動かすこと。そのすべてが、特別ではなく、家庭という小さな世界の中で育まれてきた徳なのだと、ようやく分かった気がした。

 セージは何も語らない。ただそこにあり、必要なときに力を貸す。その静かな在り方こそが、知恵であり、尊敬であり、家庭を支える徳なのだろう。
 私は庭に立ち、祖母と同じように背筋を伸ばした。風が吹き、セージが応えるように香った。

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