7月10日の誕生花「グロキシニア」

「グロキシニア」

hartono subagioによるPixabayからの画像

基本情報

  • 学名Sinningia speciosa
  • 科名:イワタバコ科(Gesneriaceae)
  • 属名:シンニンギア属(Sinningia)
  • 原産地:ブラジルなど南アメリカ熱帯地域
  • 分類:多年草(球根植物)
  • 開花時期:4月下旬~7月上旬、9月~11月上旬(切り戻しした場合)
  • 草丈:20〜30cm程度

グロキシニアについて

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特徴

◎ ベルのような花形

  • グロキシニアの最大の魅力は、ベル形(鐘形)でビロードのような質感の花
  • 花の色は赤、紫、ピンク、白、青、複色など多彩。

◎ 光沢ある大きな葉

  • 葉は楕円形で、深緑色に細かい毛が生えた柔らかな質感。
  • 葉脈がはっきりしており、観葉植物としても見ごたえあり。

◎ 球根で休眠する

  • 冬には地上部が枯れて球根だけが残り、春にまた芽吹く。
  • 球根を休眠期に掘り上げて管理することで、翌年も開花可能。

◎ 日当たりと湿度を好む

  • 明るい日陰または間接光を好み、直射日光は苦手
  • 多湿に強いが、過湿や水のかけすぎには注意(特に葉や花に水がかかると傷む)。

◎ 室内栽培向き

  • 高温多湿を好む性質から、室内や温室栽培に適している
  • 温度は15〜25℃が適温で、寒さには弱い。

花言葉:「華やかな日々」

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由来

◎ ビロードのような豪華な花姿

グロキシニアの花は、濃厚な色彩光沢のあるベル型の花びらが特徴的です。
見た目の印象はまさに「華やか」。咲いているだけで空間がパッと明るくなります。
この豪華で豊かな雰囲気が、まるで特別な日々を彩るような華やかさを感じさせます。

◎ 多彩な色と長く咲く性質

赤、紫、青、白、ピンクなど多彩な色のバリエーションに加えて、手入れ次第では1〜2か月も咲き続けることもあります。
毎日違うように感じられるその美しさから、日々が彩られ、幸福感に満ちていく様子が連想され、「華やかな日々」という意味につながったと考えられます。

◎ 室内で楽しめる花=暮らしの中の小さな祝祭

温室や室内でも育てやすく、贈り物や観賞用としても親しまれてきた花です。
特にヨーロッパでは「テーブルを飾る贅沢」として人気があり、日常の中に小さな非日常=華やかさをもたらしてくれる花として愛されてきました。


「華やかな日々」

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祖母の家には、年に一度だけ咲く不思議な花があった。
 初夏になると、窓辺のテーブルに置かれた鉢の中から、深い紅色の花が静かに開く。ビロードのような光沢を放ちながら、まるで誰かの記憶を呼び覚ますように。

 「グロキシニアっていうのよ」

 まだ幼かった私に、祖母はそう言ってその花を撫でた。
 指先が触れるだけで花びらが壊れてしまいそうなのに、どこか力強い美しさがそこにはあった。

 「華やかな日々、っていう花言葉があるの。素敵でしょう?」

 ――華やかな日々。
 当時はよく意味がわからなかった。ただ、祖母がこの花を大切にしていることだけは、子どもながらに強く感じていた。

 高校生になって、私は祖母の家に寄りつかなくなった。
 部活に恋愛にバイトにと、日々の忙しさに追われ、あの花のことなどすっかり忘れていた。

 祖母が倒れたのは、そんなある年の初夏だった。
 病院のベッドで静かに目を閉じる祖母を前にして、私はようやく、何か大切なものを置き去りにしてきたことに気づいた。

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 その年、祖母の家に戻った私は、誰もいない居間の窓辺で、あの花が咲いているのを見つけた。
 深い赤、紫、そしてほのかなピンク――。複数の鉢に植えられたグロキシニアたちが、光を浴びて静かに揺れていた。

 思わず息をのんだ。
 まるで祖母の代わりに、そこにいるようだった。
 あのとき祖母が語った言葉が、ふいに胸の中で蘇る。

 「咲いているだけで空間が明るくなるのよ。毎日がね、特別みたいに感じられるの」

 花の姿は、まさにそれだった。
 濃厚な色彩と、柔らかなベル型の花びら。目を奪うほどの華やかさがあるのに、どこか静かで、優しい。

 私はその日から、毎朝グロキシニアに水をやるようになった。
 花は驚くほど長く咲き続け、色を変えながらも日々の風景に溶け込んでいく。

 気づけば、私は笑うことが増えていた。
 夕暮れに部屋を満たすやわらかな光、湯気の立つカップ、少し疲れた身体を包む毛布――何気ない日々が、まるで花のように尊く思えた。

 それが、祖母の言っていた「華やかな日々」なのだと、ようやくわかった気がした。

 季節が巡り、今年もまたグロキシニアの蕾が膨らみ始めた。
 私はひとつ鉢を選び、友人への贈り物にした。ちょっとしたお礼に、と思って選んだのに、包装しながら胸が温かくなる。

 「咲いたらね、きっと特別な気持ちになれるから」

 そう言って渡した帰り道、私はふと空を見上げた。
 夕焼けの光が差し込む窓の向こう、あの花がまた静かに揺れていた。

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