「スイトピー」

スイートピー(Sweet Pea)は、春から初夏にかけて咲く可憐な花で、甘い香りと蝶のようなひらひらした花びらが特徴です。学名はLathyrus odoratusで、マメ科の植物に属します。イギリスやフランスで特に人気があり、ブーケやガーデニングによく用いられます。
スイトピーについて

スイートピーの特徴
🌸 花の特徴
- 花の形:蝶が羽を広げたような形の花を咲かせる。
- 花の色:ピンク、紫、白、赤、青、オレンジなどさまざまなカラーバリエーションがある。
- 開花時期:3月〜6月(春から初夏)
- 香り:甘く爽やかな香りがあり、一部の品種は香水の原料にもなる。
🌱 植物としての特徴
- 分類:マメ科・レンリソウ属(学名:Lathyrus odoratus)
- 原産地:イタリア・シチリア島周辺
- 草丈:30cm〜2mほど(つる性品種は高く伸びる)
- 葉と茎:細長い葉を持ち、つるを伸ばして周囲に絡みつく性質がある。
🌿 育てやすさ
- 耐寒性:比較的寒さに強いが、霜には注意が必要。
- 日当たり:日当たりの良い場所を好む。
- 土壌:水はけの良い土が適している。
- 支柱が必要:つる性の品種は支柱やフェンスに絡ませると美しく育つ。
🎀 スイートピーの魅力
- 香りの良さで花束やアロマに使われる。
- 華やかで可憐な花姿が、ブーケやガーデニングにぴったり。
- 春の訪れを告げる花として、卒業・入学シーズンにもよく使われる。
- 「門出」や「旅立ち」の象徴として、別れや新しいスタートの場面で贈られることが多い。
スイートピーは、見た目の美しさだけでなく、香りや花言葉にも魅力が詰まった花ですね!🌿💐
花言葉:「私を覚えていて」

スイートピーにはさまざまな花言葉がありますが、代表的なものに**「私を覚えていて(Remember me)」**があります。これは、スイートピーが別れの際に贈られることが多かったことに由来すると言われています。
その他にも、色ごとに異なる花言葉があると言われています:
- ピンク:「優しい思い出」
- 白:「ほのかな喜び」
- 紫:「永遠の喜び」
「私を覚えていて」

春の風が、スイートピーの花弁を優しく揺らした。
駅のホームに立つ沙耶(さや)は、小さな花束を握りしめていた。淡いピンクと白のスイートピー。彼女の胸の内にある感情と同じように、か弱く、けれどもどこか温かみのある花だった。
「やっぱり来たんだね」
声をかけられて振り向くと、そこには和也(かずや)が立っていた。大学の卒業を控え、彼はこの春、遠く離れた町へと旅立つ。大手企業に内定をもらい、夢だった仕事に就くのだ。
「うん……見送りに来た」

沙耶は笑顔を作った。嬉しいはずだった。和也が夢を叶え、未来へ向かって羽ばたいていくことは、彼女にとっても誇らしいことだった。でも、それと同時に寂しさが胸を締めつける。
「ありがとう、沙耶」
和也は優しく微笑み、彼女の手元の花束に気づいた。
「スイートピー?」
「うん。花言葉、知ってる?」
和也は少し考えてから、首を横に振る。
「『私を覚えていて』って意味があるんだって」

彼女はそっと花束を差し出した。和也は驚いたように受け取り、花をじっと見つめる。
「そっか……なんだか、お別れみたいだな」
「お別れなんて言わないで。遠くに行っても、ずっと友達でしょ?」
沙耶はそう言いながらも、自分の言葉がどこか空々しく聞こえた。友達。そう、彼とは長い間、親友だった。何をするにも一緒で、誰よりも気が合った。でも、それ以上の想いを抱いてしまったのは、沙耶だけだったのかもしれない。
「そうだな。これからも、ずっと友達だ」
和也の言葉に、沙耶はぎゅっと唇を噛んだ。その時、電車の到着を知らせるアナウンスが響く。
「行かなきゃ」

和也がスーツケースを引き寄せる。沙耶は、最後の勇気を振り絞って言葉を紡いだ。
「私……和也のこと……」
でも、言葉は続かなかった。彼が困った顔をするのが怖かった。何か言いかけた沙耶の気持ちを察したのか、和也は優しく微笑み、スイートピーを胸に抱いた。
「この花、大切にするよ」

そのまま、彼は改札をくぐり、電車へと乗り込んでいった。
沙耶はホームで立ち尽くしながら、ゆっくりと遠ざかる電車を見送る。
「……私を覚えていて」
小さく呟いた言葉は、春風に乗ってどこかへ消えていった。
彼女の手には、スイートピーの甘い香りだけが残っていた。