7月4日の誕生花「ストケシア」

「ストケシア」

基本情報

  • 和名:ルリギク(瑠璃菊)
  • 学名Stokesia laevis
  • 英名:Stokes’ Aster(ストークスアスター)
  • 科名/属名:キク科/ストケシア属
  • 原産地:北アメリカ南東部(主にアメリカ・ジョージア州など)
  • 開花時期:6月~10月(初夏〜夏)
  • 花色:青紫、白、ピンク、薄黄色など

ストケシアについて

特徴

  • 花の姿:キクに似た形で、中心から細かく裂けた花びらが放射状に広がる。涼やかで透明感のある花色が特徴的。
  • 草丈:30〜60cmほどと、比較的コンパクト。
  • 性質:多年草で育てやすく、暑さにも比較的強い。
  • 葉の形:細長くやや光沢のある葉で、株元から広がるように生える。
  • 用途:花壇、鉢植え、切り花などに適している。

花言葉:「清楚な娘」

ストケシアの代表的な花言葉のひとつが「清楚な娘(せいそなむすめ)」です。この言葉には、以下のような由来が考えられます:

1. 透明感のある花色

 ストケシアの花は青紫や淡い白など、どれもどこか涼しげで落ち着いた印象を与えます。派手さはないものの、気品を感じさせるたたずまいが、まるで清楚で控えめな少女のよう。

2. 端正で整った花姿

 花びらが放射状にきれいに並び、乱れがなく整った形をしているため、その品のある美しさから「育ちのよい娘」のような印象を与えることが、花言葉の背景にあります。

3. 静かに咲く佇まい

 初夏から夏の花壇で静かに、しかし確かな存在感を放って咲くその様子が、目立たずとも凛とした品格を感じさせ、まさに「清楚な娘」という表現にぴったりです。


「清楚な娘」

朝露に濡れた花壇の中で、瑠璃色の花がそっと揺れていた。ストケシア――この小さな花を、私は幼い頃からずっと「清楚な娘」と呼んでいる。

 その名を教えてくれたのは、祖母だった。

 私が小学生のころ、両親が仕事で家を空けることが多く、私は夏休みのほとんどを祖母の家で過ごしていた。町はずれの小さな庭付き一軒家。そこには祖母が丹精込めて育てた季節の花が、いつも色とりどりに咲いていた。

 「この花の名前はストケシア。涼しげな色でしょ? でもね、派手じゃないのに、すごく気品があるの」

 祖母は水やりの手を止めて、小さく微笑んだ。

 「まるで、“清楚な娘”みたいだって言われる花なのよ」

 私はその言葉の意味を、当時はよく分かっていなかった。ただ、薄紫に透けるような花びらを見つめながら、なんだか大事にしなければいけないもののような気がして、そっと指先で触れた記憶がある。

 それから十数年が過ぎ、祖母は去年、静かに息を引き取った。
 独り身だった祖母の家を私が引き継ぎ、今は週末ごとにそこへ通いながら、庭の手入れをしている。

 不思議なものだ。あれほど忙しい仕事の合間でも、この庭に来ると、心が落ち着く。静かで、何も語らないはずの草花たちが、まるで祖母の代わりに何かを語りかけてくれているような気がするのだ。

 そして、今年もストケシアが咲いた。

 濃すぎず、淡すぎず、ちょうどいい透明感のある青紫。花びらは放射状に整い、乱れひとつなく咲いている。暑さのなかでも、その姿だけはどこか涼やかで、気高い。

 庭の片隅で、誰にも媚びることなく、ただ真っすぐに咲くその佇まい。

 ――ああ、本当に、あの言葉どおりだ。

 「清楚な娘」という花言葉は、ただの装飾的な言葉ではない。
 その花の持つ雰囲気、生き方すら言い当てているのだと、今ならわかる。

 私は祖母の小さな花ばさみを手に取り、一本だけストケシアを切った。そして、仏間に向かい、遺影の前にそっと供える。

 「おばあちゃん、今年もきれいに咲いたよ」

 言葉にした瞬間、ふっと胸の奥に優しい風が吹いた気がした。

 あの頃は理解できなかった「清楚さ」という美しさ。
 静かに、けれど確かに誰かの心に残る、そういう生き方を、私も少しずつできているだろうか。

 遺影の中の祖母は、昔と変わらぬ笑顔で、私を見守っていた。