10月10日の誕生花「ブバルディア」

「ブバルディア」

Beverly BuckleyによるPixabayからの画像

基本情報

  • 分類:アカネ科ブバルディア属
  • 原産地:メキシコ、中央アメリカ(熱帯アメリカ)
  • 学名Bouvardia ternifolia など
  • 英名:Bouvardia
  • 開花期:10月下旬~4月(切り花は周年流通)
  • 花色:赤、ピンク、白、オレンジなど
  • 花の形:筒状の花が星形に開く
  • 別名:ブバリア

ブバルディアについて

特徴

  • 星形の花が房状に集まって咲く、明るく華やかな印象の花。
  • 細い筒状の花が多数集まり、香りもあり上品な雰囲気を持つ。
  • 一年草として扱われることが多いが、温暖地では多年草として越冬可能。
  • 切り花やブーケで人気が高く、花持ちが良いのも特徴。
  • 名前は、17世紀フランス王ルイ13世の侍医 シャルル・ブバル(Charles Bouvard) にちなんで名付けられた。

花言葉:「幸福な愛」

由来

  • 星のような花形が、愛と希望の象徴とされる「星」に通じることから、幸せな未来を照らす愛を表す。
  • 小さな花が寄り添うように咲く姿が、支え合う恋人たちを連想させる。
  • 咲き姿が明るく温かい印象を与えるため、愛の喜びや幸福感を表す花言葉が生まれた。
  • 結婚式のブーケや贈り物にもよく用いられ、「幸せを呼ぶ花」として親しまれている。

「星の灯る花束」

披露宴の準備室で、花嫁の美香は鏡の前に立っていた。白いドレスの胸元に抱えたブーケは、淡いピンクのブバルディアが中心にあしらわれている。
 ――幸福な愛。
 花言葉を知ったのは、ブーケを作ってくれた花屋の紗耶に教わったときだった。

 「星みたいな形、でしょ?」
 紗耶はそう言いながら、一本ずつ丁寧に花を束ねていた。
 「この花、星のように光る“希望”の象徴なんですって。支え合う恋人たちみたいに寄り添って咲くから、“幸福な愛”って呼ばれるんですよ」
 そのときの紗耶の声が、まだ耳に残っている。

 美香は指先でそっとブーケの花弁に触れた。小さくて、儚くて、それでもしっかりと咲いている。
 ――私たちも、こんなふうに生きていけるだろうか。

 彼と出会ったのは、五年前の夜だった。仕事で失敗して落ち込んでいた美香が、帰り道で偶然立ち寄った小さなバー。彼はそこに一人でいて、ぎこちなく笑いながら「よかったら話します?」と言ってくれた。
 あの時、暗闇の中に差し込んだ一筋の光のようだった。
 いつの間にか、彼と過ごす時間が美香の心を明るくしていた。

 しかし、二人の道のりは平坦ではなかった。転勤、遠距離、そして一度の別れ。
 それでも、時間を経て再び出会ったとき、彼が差し出した小さな花束の中にブバルディアが混じっていた。
 「これ、君に似てると思って」
 その一言で、涙がこぼれた。

 控え室の扉がノックされ、スタッフが顔を出す。
 「そろそろお時間です」
 美香は深呼吸をして立ち上がった。ブーケを胸に抱き、扉の向こうの光の中へと歩み出す。

 バージンロードの先には、彼が立っていた。
 優しい笑顔。その背後のステンドグラスから射し込む光が、まるで星のように輝いている。
 ――この人となら、どんな夜も照らしていける。

 祭壇の前でブーケを見下ろす。ブバルディアの小さな花々が、寄り添いながらそっと揺れていた。
 その姿が、まるで「大丈夫」と囁いているように見えた。

 神父の声が響き、誓いの言葉が交わされる。
 その瞬間、美香の胸の奥で、静かに何かが灯った。
 それはきっと、長い旅の果てに見つけた「幸福な愛」という名の光。

 式が終わり、夕暮れの空には一番星が瞬いていた。
 彼が笑いながら言う。
 「見て、星も祝ってくれてる」
 美香は微笑み、ブーケをそっと見つめた。

 星のような花形。寄り添うように咲く姿。
 その全てが、これからの二人を象徴しているようだった。

 ――幸福な愛。
 それは、眩しく輝く星のように、静かに二人の未来を照らしていた。