3月8日の誕生花「ブルースター」

「ブルースター」

基本情報

  • 和名:ブルースター(ルリトウワタ)
  • 学名Tweedia caerulea(旧 Oxypetalum caeruleum
  • 科名:キョウチクトウ科(旧ガガイモ科)
  • 原産地:南アメリカ(ブラジル、ウルグアイなど)
  • 開花時期:5月~10月
  • 花色:淡い青、水色、白
  • 草丈:40~100cmほど
  • 用途:花壇、鉢植え、切り花、ブーケ

ブルースターについて

特徴

  • 星形の淡い青い花が特徴で、爽やかで優しい印象を持つ
  • 花びらはやや厚みがあり、マットで柔らかな質感をしている
  • 切り口から白い乳液(樹液)が出る植物として知られる
  • 花持ちがよく、ウェディングブーケやフラワーアレンジメントによく使われる
  • 優しい水色は、空や希望を連想させるため幸福の花として人気


花言葉:「信じあう心」

由来

  • 澄んだ青色の花が、誠実さや純粋さを感じさせたため
  • 星のように整った花姿が、揺るがない信頼や真っ直ぐな気持ちを象徴すると考えられたため
  • 優しく穏やかな色合いが、互いを思いやる温かな関係を連想させたため
  • 結婚式のブーケなどに使われることが多く、新しい人生を共に歩む信頼の象徴とされたため
  • 控えめで清らかな花姿が、疑いのない純粋な心=信じあう関係を表す花として親しまれたため

「空の色を約束に」

 六月の空は、どこまでも高かった。

雲はゆっくりと流れ、青は透き通るように広がっている。まるで、空そのものが深く息をしているようだった。

美咲は花屋の前で足を止めた。

店先には色とりどりの花が並んでいる。赤いバラ、淡いピンクのカーネーション、白いユリ。どれも華やかで、通りを歩く人の目を引く。

その中に、ひっそりと置かれている花があった。

水色の、小さな星。

ブルースターだった。

花びらは五枚。整った形で、やわらかな空色をしている。強く主張するわけでもなく、ただ静かに咲いている。

美咲はその花を手に取った。

「きれいですよね、それ」

花屋の店主が微笑んだ。

「ブルースターっていうんです。花言葉は“信じあう心”」

信じあう心。

その言葉が、美咲の胸の奥に静かに落ちた。

結婚式は、来月だった。

式場も決まり、ドレスも決まり、準備はほとんど整っている。忙しい日々だったが、不思議と不安はなかった。

けれど、ふとした瞬間に考えることがある。

これからの人生のことを。

悠人とは、大学で出会った。

同じ講義で隣の席になったのがきっかけだった。最初はただの知り合いだったが、少しずつ話すようになり、気づけば一緒にいる時間が増えていた。

彼は、派手な人ではなかった。

どちらかといえば静かで、落ち着いている。目立つことを好まない人だった。

けれど、言葉はいつも真っ直ぐだった。

「大丈夫だよ」

彼がそう言うと、本当に大丈夫な気がした。

付き合い始めてから、喧嘩をしたこともある。

仕事が忙しくてすれ違った日もあった。互いの考えが合わないこともあった。

それでも、最後には必ず話をした。

怒ったまま終わることはなかった。

どちらかが言葉を探し、どちらかがそれを聞いた。

そうやって少しずつ、二人の時間は重なっていった。

「結婚ってさ」

ある夜、悠人が言った。

「特別なことっていうより、同じ方向を向くことなのかもしれない」

その言葉を、美咲はよく覚えている。

同じ場所に立つことではなく、同じ方向を見ること。

たとえ違う景色を見ていたとしても、歩く先が同じなら、それでいい。

ブルースターの花を、もう一度見つめる。

星の形をした花びらは、きれいに整っている。

青は、空の色に似ていた。

深く澄んでいて、どこまでも続いていくような色。

「ブーケに使う方も多いんですよ」

花屋の店主が言った。

「信頼とか、誠実な気持ちを表す花なんです」

美咲は小さくうなずいた。

誠実。

それは派手な言葉ではない。

けれど、きっと一番大切なものだ。

結婚は、きっと特別な日だけでできているわけではない。

華やかな式も、祝福の言葉も、ほんの一瞬の出来事だ。

本当に続いていくのは、その後の毎日だ。

朝起きて、仕事へ行き、夕食を作り、他愛のない話をする。

時には疲れて、時には笑う。

そんな日々の中で、互いを信じ続けること。

それが、きっと結婚なのだ。

美咲はブルースターをそっと戻した。

その青い花は、他の花に比べれば目立たない。

けれど、不思議と目を離せない。

控えめで、静かな花。

それでも、その色は空のように広がっている。

店を出ると、空が見えた。

澄んだ青。

雲がゆっくりと流れている。

その色は、さっき見たブルースターと同じだった。

スマートフォンが震えた。

悠人からのメッセージだった。

「仕事終わった。今日は早く帰れそう」

美咲は少し笑った。

そして返信を打つ。

「じゃあ、帰りに寄り道しようか」

送信ボタンを押す。

それだけのやり取りなのに、胸の奥が温かくなる。

信じあうということは、特別な誓いではないのかもしれない。

疑わないことでも、完璧でいることでもない。

ただ、相手の言葉を受け取ること。

そして、自分の言葉を渡すこと。

その繰り返し。

空は、変わらず広がっている。

どこまでも続く青。

その下で、人はそれぞれの道を歩いている。

けれど、もし同じ空を見上げているのなら。

同じ青を信じているのなら。

それだけで、きっと十分なのだ。

ブルースターの花は、星の形をしている。

小さく、静かな星。

けれど、その青は、確かな約束の色だった。