2月15日の誕生花「ミツマタ」

「ミツマタ」

ミツマタ(三叉、学名:Edgeworthia chrysantha)は、ジンチョウゲ科の落葉低木で、春に黄色や赤みがかった花を咲かせる植物です。枝が必ず三つに分かれることが名前の由来で、和紙の原料としても有名です。

ミツマタについて

科名:ジンチョウゲ科ミツマタ属
原産地:中国中南部・ヒマラヤ地方

ミツマタの特徴

  • :小さな筒状の花が集まって丸い形を作り、甘い香りを放ちます。
  • :夏に細長い葉を茂らせ、秋には落葉します。
  • 樹皮:強靭で、和紙や紙幣の原料として使用されます。特に「越前和紙」や「土佐和紙」に利用されることで知られています。
  • 生育環境:日陰や湿った土壌を好み、日本の山間部にも自生しています。

花言葉:「肉親の絆」

ミツマタの花言葉「肉親の絆」は、その枝が必ず三つに分かれる特徴に由来すると考えられています。この枝分かれが「親・子・孫」など家族のつながりを象徴しているとも言われます。

また、ミツマタの繊維が強く、和紙を作る際にしっかりと絡み合うことも「人と人の絆」を連想させるため、この花言葉がつけられたとも考えられます。

春の訪れを告げるミツマタの花は、家族のつながりや温かさを思い出させてくれる存在ですね。


「ミツマタの絆」

春の山奥、雪解けの水が静かに流れる谷のほとりに、ミツマタの木が一本立っていた。その枝は三つに分かれ、小さな黄金色の花を咲かせている。

この山のふもとに住む少女、美咲は幼いころからこのミツマタの木を「家族の木」と呼んでいた。母が言っていたのだ。

「この枝のようにね、人はつながっているのよ。おじいちゃん、お母さん、そして美咲。三つの枝みたいにね」

美咲の母は和紙職人だった。毎年春になると、母と一緒にミツマタの皮を剥ぎ、手作業で丁寧に紙を漉いた。その紙には、どこか母の温もりが宿っているように思えた。

だが、去年の冬、母は病に倒れた。そしてもう帰らぬ人となった。

春が来ても、美咲は山へ行く気になれなかった。家の中には母の作った和紙が残っている。それに触れるたび、母の声が聞こえてくるような気がしていた。

「今年は一人で行かなきゃ……」

美咲はそう決意し、山へ向かった。母と訪れたあの場所に行くと、ミツマタは変わらず花を咲かせていた。黄金色の花が陽の光に揺れている。

美咲はそっと枝に触れた。すると、そよ風が吹き、花が優しく揺れた。その瞬間、母の声が聞こえたような気がした。

「大丈夫。ちゃんとつながっているわ」

涙がこぼれた。だけど、それは悲しみだけではなかった。美咲はミツマタの枝を見上げ、小さく微笑んだ。

「そうだね。私たちはずっと、つながっているんだね」

その春、美咲は母と同じように和紙を漉いた。そして、最初にできた一枚を、大切にそっと胸に抱いた。