「ルコウソウ」

基本情報
- 和名:ルコウソウ(縷紅草)
- 英名:Cypress Vine / Star Glory
- 学名:Ipomoea quamoclit
- 分類:ヒルガオ科サツマイモ属(またはルコウソウ属とされる場合も)
- 原産地:熱帯アメリカ
- 草丈:2〜5m(つる性)
- 花期:7月中旬~10月中旬
- 花色:赤、ピンク、白など
- 形態:一年草のつる植物。フェンスや支柱に絡みついて成長する。
ルコウソウについて

特徴
- 糸のように細い葉
- 葉が羽のように細く裂けており、軽やかで繊細な印象を与える。
- 風が吹くとやわらかく揺れる姿が涼しげ。
- 星形の小花
- 直径2〜3cm程度の星型の花を咲かせる。
- 鮮やかな赤や白の花色が、細い葉との対比で一層目立つ。
- つる性で旺盛な生長
- 夏の間にぐんぐん伸び、緑のカーテンとしても利用される。
- 開花は日中に行われ、夕方には花がしぼむ一日花。
- アサガオの仲間
- 同じヒルガオ科で、花の形や性質はアサガオに近いが、葉の形が独特。
花言葉:「繊細な愛」

「繊細な愛」という花言葉は、ルコウソウの
- 糸のように細く、壊れそうな葉の形
- 小さく可憐な星形の花
この二つの特徴に由来します。
つまり、力強くつるを伸ばしながらも、その外見は非常に華奢で、近くでよく見ると細部まで美しい――まるで、大切に守りたいような“か弱く見える愛”を象徴しているのです。
また、風にそよぐ姿は、感情の機微や揺れ動く恋心をも連想させ、「繊細」という言葉が重ねられたと考えられます。
「風に揺れる、赤い星」

七月の昼下がり、古い家の縁側から庭を見ていると、フェンスいっぱいに赤い小花が揺れていた。
ルコウソウ――糸のように細く、壊れそうな葉の形。小さく可憐な星形の花。
その二つの特徴が、「繊細な愛」という花言葉を持つ理由だと、去年の夏、彼女が教えてくれた。
「つるは力強く伸びるけど、見た目は華奢でしょう? だからね、大切に守りたい愛を表してるんだって」

彼女はそう言って、まだ咲き始めた花を指先でそっと撫でた。
風にそよぐ姿は、感情の機微や揺れ動く恋心を思わせた。
あのとき、僕はただうなずくだけで、自分の気持ちを言葉にできなかった。
今年は、彼女はいない。
転勤で遠い街へ行ってしまい、連絡も途絶えがちになった。
それでも、春の終わりに僕は迷わずルコウソウの種を撒いた。
彼女がいなくても、あの赤い星が風に揺れる姿を、どうしてもこの庭に咲かせたかったからだ。

芽はすぐに出て、つるはフェンスを探すように伸びた。
雨の日も、猛暑の日も、細い葉を揺らしながら生長を続け、やがて花が咲き始めた。
その姿を見た瞬間、胸の奥に小さな痛みと温かさが同時に広がった。
――あぁ、あの人もこの景色を覚えているだろうか。
ある日、郵便受けに手紙が届いた。
差出人の名前を見たとき、手がわずかに震えた。
封を切ると、そこには短い文章が綴られていた。
「こちらのベランダにも、ルコウソウが咲きました。
風に揺れて、まるで笑っているみたいです。」

読みながら、目の前の花に視線を移す。
確かに、揺れている。
同じ風は届かなくても、同じ花が揺れていると思うと、不思議な距離の近さを感じた。
夕暮れ、赤い星形の花はしずかにしぼみはじめる。
それでも、明日になればまた開く。
繊細で儚く見えるのに、その営みは決して途切れない。
彼女が教えてくれた「繊細な愛」は、壊れやすいだけのものじゃない。
守ろうとする心と、時を越えて咲き続ける強さを持っている――そう思えた。
風が吹き、葉と花が小さく音を立てる。
そのささやきが、遠くの彼女にも届くような気がした。