7月5日の誕生花「ロベリア」

「ロベリア」

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基本情報

  • 学名Lobelia erinus(代表種)
  • 科名:キキョウ科(またはロベリア科に分類されることも)
  • 原産地:熱帯~温帯
  • 開花時期:3月下旬~11月上旬
  • 草丈:10~30cm程度の一年草または多年草(園芸では一年草扱いが多い)
  • 花色:青、紫、白、ピンクなど(特に青紫系が有名)

ロベリアについて

Сергей ШабановによるPixabayからの画像

特徴

  • 小花が密に咲く
     細かく分かれた茎に小さな花をたくさん咲かせ、ふんわりと広がる姿が特徴的です。寄せ植えやハンギングバスケットにも向いています。
  • 涼しげな印象
     特に青紫色のロベリアは、涼感のある色合いで夏の花壇をさわやかに演出してくれます。
  • 耐暑性はやや弱い
     日本の高温多湿にはあまり強くなく、夏場は花が少なくなることもあります。そのため春~初夏が最も見ごろとされています。
  • 多年草タイプもあり
     多年草タイプのロベリア(例:ロベリア・シファリティカ)は、背が高く、宿根草として育てることも可能です。

花言葉:「謙遜」

ThomasによるPixabayからの画像

ロベリアの代表的な花言葉のひとつが「謙遜(modesty / humility)」です。

この由来には、以下のような植物の姿が関係していると考えられます。

◎ 控えめで可憐な佇まい

ロベリアは非常に小さな花を咲かせ、あまり目立つ存在ではありません。主役というよりは、寄せ植えなどで他の花を引き立てるような「控えめな存在感」を持っています。

◎ 群れて咲くことで美しさが際立つ

一輪一輪は小さくとも、集まって咲くことで全体としての美しさが表れる姿は、「自分をひけらかさず、周囲と調和する謙虚な心」を象徴しているとされます。

◎ 色合いのやさしさ

特に青紫色のロベリアは落ち着いた印象を与え、「静かに佇む美しさ=謙遜」のイメージと重なります。


「ロベリアの手紙」

Greg WolgastによるPixabayからの画像

六月の朝、庭に咲くロベリアが風に揺れていた。まだ陽は高くない。濡れた花びらがきらきらと朝露を弾いて、小さな青い光の粒がいくつもそこに宿っているようだった。

 佳乃はゆっくりとしゃがみこみ、その花にそっと手を伸ばす。

 「……やっぱり、あなたは静かに咲いてるのが似合うね」

 小さな声でそう言って笑うと、胸元から一通の手紙を取り出した。それは三年前に亡くなった祖母からのものだった。遺品の整理をしているときに、庭の植木鉢の裏から見つかった封筒。その表には、達筆な字で「佳乃へ」とだけ書かれていた。

 “あなたはすぐに前へ出ようとしない子でした。誰かを引き立てようとして、自分の気持ちはいつも後回し。私はそんなあなたが、まるでロベリアのように思えてなりませんでした。”

 祖母の字が、たどたどしく続いていた。

 “ロベリアはね、小さくて、静かで、決して目立たない花。でも、寄せ植えの中でそっと咲いて、全体を優しく整えるの。そういう花があるからこそ、他の花が引き立つのよ。謙遜、という花言葉は、そんなロベリアの性格そのもの。

 でもね、忘れないで。控えめでいることが、美しくないということじゃないの。自分の美しさを、ちゃんと信じなさい。

Ingrid BischlerによるPixabayからの画像

 あなたの中にあるやさしさと静けさは、いつかきっと誰かの心を救うわ。”

 最後の行には、「私の大好きなロベリアの種を、同封しておきます」と記されていた。封筒の中には、乾いた小さな種が五つ入っていた。それを植えたのが、いま佳乃の目の前に咲いているこの青い花だった。

 この庭は祖母が大切にしていた場所だ。佳乃が幼いころ、花の名前や水やりのコツを優しく教えてくれたのも祖母だった。だが、成長するにつれ、佳乃は「もっと自分を出さなきゃ」と周囲に言われるようになった。大人になるほどに、控えめでいることが劣っているかのような気がして、戸惑い、自分を否定しそうになることもあった。

 けれど――。

 この花は、それでも変わらずに咲いている。

 声高に咲くことはない。でも、誰かの足元に、さりげなく寄り添うように咲く。目立つ色ではないけれど、青紫の花びらは見つけた人の心に、すっと染みるような落ち着きを与えてくれる。

 まるで祖母の言葉のようだ。

 佳乃は立ち上がり、ロベリアを見下ろした。風が吹き、花たちがやわらかく揺れた。

 「ありがとう。私、少しずつでいいから、自分のままで歩いてみるね」

 そう呟いて、佳乃は家の奥へと戻っていった。花のそばには、折りたたまれた祖母の手紙と、小さなロベリアの名札がそっと置かれていた。

 そこには、祖母の筆跡で、こう書かれていた。

 ――謙遜は、静けさの中にある誇り。