9月14日の誕生花「シュウメイギク」

「シュウメイギク」

基本情報

  • 和名:シュウメイギク(秋明菊)
  • 学名Anemone hupehensis ほか(Hybridも含む)
  • 科名:キンポウゲ科
  • 属名:イチリンソウ属(アネモネ属)
  • 原産地:中国、台湾
  • 開花期:8月下旬〜11月頃
  • 花色:白、ピンク、紅紫など
  • 別名:キブネギク(貴船菊)
    • 京都・貴船地方でよく見られることに由来。

シュウメイギクについて

特徴

  1. 秋を彩るアネモネの仲間
    名前に「菊」とありますが、実際はアネモネの仲間。菊との関係はありません。花姿が菊に似ていることからこの名が付きました。
  2. 可憐で気品ある姿
    細長い茎の先に花を咲かせ、風に揺れる姿が優雅。花弁のように見える部分は実は萼片です。
  3. 丈夫で広がりやすい
    地下茎で増える性質が強く、一度根づくと群生しやすい植物。庭では秋の風情を演出する花として親しまれます。
  4. 和の景観に調和
    日本の寺社や庭園でよく見られ、苔むした石や竹林とともに植えられると特に映える。

花言葉:「忍耐」

由来

シュウメイギクに「忍耐」という花言葉が与えられた背景には、次のような点が関係しています。

  1. 秋の終わりまで咲き続ける姿
    夏の暑さが過ぎ、他の花が少なくなる晩秋まで、ひっそりと長く咲き続ける姿は「耐え忍ぶ力」を思わせる。
  2. 細い茎でも風雪に負けない強さ
    繊細に見える茎は意外と強く、風にしなやかに揺れながらも折れずに立つ。その姿が「忍耐心」を象徴。
  3. 厳しい環境でも根づく繁殖力
    半日陰ややせ地でもよく育ち、群生するほどの生命力を持つ。表面の儚さとは裏腹に、根の強さが「耐えて生き抜く」イメージと重なった。

忍耐の花 ―シュウメイギクの庭で―

山あいの小さな寺の庭には、秋になると白や薄紅の花が揺れていた。参道を囲む苔むした石垣の間からすっと茎を伸ばし、風に揺れながらも折れずに立つその花。人々はそれを「秋明菊」と呼んだ。

 寺に仕える若い僧、智真は、毎朝その花に水をやりながら、ふと自分の心を映すように感じていた。

 彼は数年前にこの寺へ入ったが、修行の道は険しかった。座禅では眠気に襲われ、経の朗誦では声が震え、師からは「心が揺れている」と叱責される。自ら選んだ道でありながら、心の奥では何度も「逃げ出したい」と思った。

 ある日の夕暮れ、庭の隅に立ち尽くしていると、師の老僧が近づいてきた。

 「智真、なぜ花を見つめておるのだ」

 彼は正直に打ち明けた。
 「私の心は弱く、修行に耐えられそうにありません。ですが、この花が風に揺れても折れない姿を見ると、なぜか胸が締めつけられるのです」

 老僧は静かに頷き、花を見やった。
 「秋明菊には『忍耐』という花言葉がある。その理由を知っているか」

 智真は首を横に振る。

 「この花は夏が過ぎ、他の花が散ってしまったあとも、晩秋までひっそりと咲き続ける。誰に称えられるでもなく、ただ黙って季節を耐え忍ぶのだ」

 老僧は花の細い茎を指さした。
 「見た目は儚いが、風に吹かれても雪に打たれても折れぬ強さを秘めている。しなやかに揺れるからこそ、倒れずにいられるのだ」

 そして苔の間から顔を出す新芽に目を向けた。
 「さらにこの花は、半日陰でも、やせた土でも根を張り、やがて群れとなる。外からは弱そうに見えても、根は深く強い。それが忍耐の証なのだ」

 智真は目を見開いた。自分が弱いと思っていたこと、迷いを恥じていたこと――それは折れることではなく、まだ揺れながら耐えている証かもしれない。

 その日から彼は、座禅で眠気に襲われても、ただひたすらに呼吸を数え続けた。声が震えても経を唱え続けた。揺れながらも折れない秋明菊のように。

 数年が過ぎ、智真はいつしか人々に頼られる僧となった。秋、庭の花が再び咲き揺れるころ、彼は訪れた旅人にこう語った。

 「この花は、忍耐を教えてくれます。見た目はか弱くとも、根を張り続ければ、必ず生き抜けるのです」

 旅人は深く頷き、しばらく花の群れを眺めていた。

 夕陽が庭を黄金に染める。秋明菊は風に揺れながらも、ひっそりと、けれど確かに咲き続けていた。