「ブラキカム」
春から秋にかけて1、2センチ程度の花を株いっぱいに咲かせます。日本には明治時代の終わり頃に渡来したとされ、主にガーデニング用に利用されてきました。
花言葉:野性美
「庭の片隅で咲くもの」
ある小さな村に、年老いた庭師のアキラが住んでいた。彼の庭は広く、美しい花々で彩られていたが、庭の片隅にひっそりと咲いている小さな花にだけ、彼は特別な愛情を注いでいた。それはブラキカムという名の、控えめで愛らしい花だった。
アキラは毎朝その花を眺めながら語りかける。
「お前は目立たないけど、ほかのどんな花よりも美しい。自然のままの姿が一番だって教えてくれる。」
ブラキカムは風に揺れ、小さく咲き誇るだけで答えているようだった。
ある日、都会から若い画家のミユがこの村を訪れた。ミユは自然の美しさを描くためにやってきたのだが、村の華やかな花畑や見事な庭を見ても、なぜか満足する絵が描けずにいた。
「何かが足りない……。でも、それが何かがわからないの。」
そんなとき、アキラの庭に迷い込んだ彼女は、庭の片隅で風に揺れるブラキカムを見つけた。
「これは……?」ミユがしゃがみ込み、小さな花をじっと見つめる。
アキラは笑顔で語りかけた。「それがブラキカムだよ。控えめで目立たないが、自然と調和する美しさを持っている。自分を飾らず、ただそこにいるだけで十分なんだ。」
その言葉にハッとしたミユは、スケッチブックを取り出し、ブラキカムを描き始めた。描いているうちに、彼女の心が穏やかになり、今まで見落としていた自然の静かな美しさに気付くことができた。
数日後、ミユが完成させた絵は、華やかな花畑ではなく、ブラキカムを中心に描かれた控えめな庭だった。その絵は村人たちの心を打ち、「自然のままの美しさ」を再認識させた。
庭の片隅に咲くブラキカムは、目立たないけれど、確かに人々の心に静かな感動を与えていた。その姿は、これからも静かに風に揺れながら、自然の美しさを語り続けるだろう。