10月20日の誕生花「エキザカム」

「エキザカム」

基本情報

  • 科名/属名:リンドウ科 ベニヒメリンドウ属(エキザカム属)
  • 学名: Exacum affine(主に栽培されている種)
  • 和名:紅姫竜胆(べにひめりんどう)
  • 英名:Persian Violet(ペルシャン・バイオレット)
  • 原産地:インド洋ソコトラ島(エキザカム属は熱帯アジア、熱帯アフリカ)
  • 草丈・樹高:おおよそ20〜50 cm程度。
  • 開花時期:6月~10月あたり(日本の気候・栽培条件による)
  • 性質:本来は多年草ですが、寒さに弱いため日本では一年草扱いされることが多いです。

エキザカムについて

特徴

外観・花の様子

  • 花は直径1〜2 cmほどの小花が株いっぱいに咲き、青紫色が代表的ですが、白やピンクのものもあります。
  • 花びらが丸みを帯びており、中央部に黄色い雄ずい/雌ずい(花芯)があり、青紫の花弁とのコントラストが美しいです。
  • 葉はやや多肉質っぽく、ツヤがあり、株がこんもりとまとまるので、鉢植えやプランター、寄せ植えなどでも扱いやすい形状。

性質・育てやすさ

  • 日当たりがよく、風通しの良い場所を好みます。真夏の直射日光が強すぎる場合は半日陰にするなど工夫が必要です。
  • 寒さに弱く、10 ℃を下回ると生育が厳しくなるため、冬場は室内管理・保温が望ましいです。
  • 用土としては、市販の草花用培養土で十分で、水はけの良い環境が向いています。過湿にならないよう注意が必要。
  • 種まき・挿し木での増殖が可能。種まきの場合は発芽温度が高め(約25 ℃前後)なので、適期を守ることが大切です。

用途・魅力

  • 花が小さくて密に咲くため、鉢花や花壇の前景、プランターの寄せ植えなどに適しています。初心者でも取り組みやすい草花のひとつです。
  • 青紫の花色と黄色の花芯のコントラストが鮮やかで、清涼感・さわやかさを演出できます。
  • 品種改良も進んでおり、八重咲き品種や斑入り葉品種などバリエーションがあります。

花言葉:「あなたを愛します」

由来

花言葉

主な花言葉として以下が挙げられています:

  • 「あなたを愛します」
  • 「あなたの夢は美しい」

由来・背景

  • 「あなたを愛します」という花言葉の由来として、多くの記事で「愛を告白する少女のような可憐な花姿」からつけられたと説明されています。たとえば、株いっぱいに小花が咲き、その姿が「告白」「想い」「やさしさ」の象徴のように映るから、というものです。
  • また、属名「Exacum(エキザカム)」の由来として、ギリシア語の「ex(外へ)」と「ago(出す)」から「(毒などを)外へ出す」という意味があるとされ、この植物にかつて解毒作用があると考えられていたため、そう名付けられた、という説もあります。
  • つまり、「愛を告げるような可憐さ」と「名前に含まれる“外へ出す/清める”イメージ」が花言葉の雰囲気を支えているようです。

「青のひとひら」

六月の光はやわらかく、けれど少し眩しい。
 真帆はベランダの鉢植えを見つめていた。小さな青紫の花が、群れをなして咲いている。エキザカム。昨年の誕生日に、優人がくれた花だ。

 「あなたを愛します」――花言葉を、彼が照れくさそうに口にした日のことを思い出す。
 あのとき、彼の手は少し震えていた。
 「冗談みたいだけど、本気なんだ」と言って、笑った。

 彼は春に遠くの街へ引っ越した。
 「仕事が落ち着いたら、必ず迎えに行く」
 そんな言葉を残して。
 けれど季節が変わっても、手紙も、電話も少なくなっていった。

 エキザカムの花期は長い。夏の間じゅう、青い小花を絶やさずに咲かせる。
 それでも、冬の寒さには弱い。
 真帆は去年の冬、必死に部屋の中で育てた。霜に当たらぬよう、温かい毛布を鉢にかけ、窓辺に置いた。
 ――春になったら、また咲くからね。
 そう語りかけるように。

 けれど、今年の春。花は咲かなかった。
 枯れてしまったわけではない。けれど、青も白も、どんな蕾もつけない。

 「もう、終わっちゃったのかな」
 真帆は小さく呟いた。

 その夜、久しぶりにメールが届いた。差出人は優人だった。
 “ごめん、連絡できなくて。こっちで新しい仕事が始まって、気持ちの整理がつかなくて”
 “エキザカム、まだ咲いてる?”

 画面を見つめながら、胸の奥が締めつけられる。
 「咲いてないよ。でも、まだ枯れてない」
 返信を打ちかけて、手を止めた。

 ベランダに出て、花の鉢を見つめる。
 月の光の下で、葉の表面がほんのり光っている。
 その姿が、まるで息をひそめて何かを待っているようだった。

 エキザカムの学名――Exacum affine。
 その属名には「ex(外へ)」と「ago(出す)」の意味があるという。
 毒や悪いものを外に出す。
 つまり、癒やす植物。清める花。

 「外へ出す」――それはきっと、心も同じだ。
 言えなかった想い、届かなかった言葉。
 それを、外に出すことができたなら。

 翌朝、真帆は花の根元をほぐして、新しい土を足した。
 そして、そっと指先で葉を撫でた。
 「大丈夫。また咲けるよ」

 数週間後、鉢の真ん中に小さな蕾がついた。
 青紫の花弁が少しずつ開いていく。
 その中心には、金色の花芯が輝いていた。

 真帆は携帯を手に取り、優人に写真を送った。
 “咲いたよ。あなたを愛します、って。あの時の花が”

 返信はなかった。けれど、不思議と涙は出なかった。
 風が吹き、花が揺れる。
 その一輪は、まるで告白をする少女のように、小さく、まっすぐに咲いていた。

 真帆は微笑み、そっと呟いた。
 「ありがとう。もう大丈夫だよ」

 青い花びらが陽を受けて、淡く光った。
 その輝きは、まるで愛の言葉を外へ放つように――
 静かに、空へと溶けていった。