7月18日、9月2日、11月29日の誕生花「マリーゴールド」

「マリーゴールド」

ThomasによるPixabayからの画像

基本情報

  • 学名Tagetes
  • 科名:キク科
  • 属名:マンジュギク属(タゲテス属)
  • 原産地:メキシコ・中央アメリカ
  • 開花時期:4月〜12月(長期間咲く)
  • 花色:黄色、橙色、赤褐色、混色など
  • 草丈:20〜100cm(種類による)

マリーゴールドについて

Dieter StaabによるPixabayからの画像

特徴

  • 一年草で育てやすく、園芸初心者にも人気。
  • 鮮やかな色彩と、丸くふっくらとした花形が印象的。
  • 花壇やプランター、寄せ植えなどで広く利用される。
  • 独特の香りを持つ(特にフレンチ・マリーゴールド)。
  • 虫除け効果があることから「コンパニオンプランツ」としても知られる。
    • 根から分泌される物質が、害虫やセンチュウ(寄生性線虫)を抑制する。

花言葉:「変わらぬ愛」

Wolke8によるPixabayからの画像

マリーゴールドには複数の花言葉がありますが、**「変わらぬ愛」**はその中でも特に心に残るもののひとつです。

この言葉の由来には、以下のような理由が考えられます:

1. 長く咲き続ける性質

  • マリーゴールドは春から秋まで非常に長い期間、絶えず花を咲かせる植物です。
  • その「咲き続ける姿」が、変わらぬ気持ち・愛情を象徴するとされます。

2. 鮮やかな花色が色あせにくい

  • 太陽のように明るい橙色や黄色の花は、時間が経っても色褪せない印象を与えます。
  • これが「色褪せぬ愛」「いつまでも変わらない思い」を象徴するものとされました。

3. 守り続ける強さと愛情

  • 害虫を遠ざける働きを持つことから、「大切な人を守る」というイメージとも結びつきます。
  • こうした守護的な性質が「深く、変わらぬ愛情」と解釈されることもあります。

「マリーゴールドの手紙」

Petra GöschelによるPixabayからの画像

山のふもとの町で暮らす祖母の庭には、毎年春になるとマリーゴールドが咲く。橙色の光を宿したその花は、夏の暑さにも負けず、秋の風にも揺れながら、いつまでもそこに咲き続けていた。

 その花が好きだったのは、祖父だった。

 私が小学三年の夏、祖父は病で床に伏せていた。もう長くはないと、医師に告げられた日、祖母は何も言わずに庭のマリーゴールドを一輪摘んで、枕元のコップにそっと挿した。

 「変わらないのよ、この子。どんなに暑くても、どんなに風に吹かれても、ちゃんと咲くの」

 祖母はそう言って微笑んだ。祖父は目を閉じたまま、うっすらと頷いた気がした。

 祖父が亡くなった翌日、祖母は私にマリーゴールドの種をくれた。

 「この花にはね、『変わらぬ愛』って花言葉があるのよ。咲き続けること、守り続けること――それが、愛なの」

 その時はよく分からなかった。ただ、祖母の手からこぼれ落ちそうなほど小さな種を、大切にポケットへしまった。

 それから十年以上の月日が経ち、私は都会で一人暮らしを始めた。仕事に追われ、恋人とのすれ違いに疲れ、気づけば笑うことさえ減っていた。そんなある日、祖母が倒れたと連絡が入った。

 急いで駆けつけた病室。祖母は目を閉じて眠っていた。痩せたその顔には、あの日と同じ優しさが残っていて、私は胸の奥がじんと熱くなるのを感じた。

Christina ZetterbergによるPixabayからの画像

 ベッドの傍らに、古びた封筒が置かれていた。私の名前が、祖母の筆跡で書かれている。

 「もし私が目を覚まさなかったら、この手紙を読んでください」

 そう書かれていた。手紙の中には、淡い色の便箋と、乾いたマリーゴールドの押し花が挟まれていた。

 あの年、あなたがポケットにしまった種、今でも覚えていますか?
 あれは、私とおじいちゃんからの贈り物です。
 変わらぬ愛とは、派手な言葉じゃなく、ただそこに咲き続けること。
 風に吹かれても、季節が変わっても、誰かのために静かに咲く――それが愛なのです。
 いつかあなたが、迷って、立ち止まりそうになったら、この花を思い出してください。

 私は、涙をこぼしながら微笑んだ。

 祖母は目を覚まさなかった。でも、その言葉と花は、確かに私の中で生きている。

 数ヶ月後、私は都会を離れて、祖母の家に戻った。あの庭に、もう一度マリーゴールドを咲かせたかった。

 種をまき、水をやり、季節が巡る。

 そして今日、庭の真ん中に、橙色の光がふわりと咲いた。

 風に揺れるその姿は、まるで誰かが笑っているようだった。

 私はその花に、そっと語りかける。

 「ただ、ここに咲き続けてくれて、ありがとう」

10月9日、11月29日の誕生花「ホトトギス」

「ホトトギス」

基本情報

  • 和名:ホトトギス(杜鵑草)
  • 英名:Toad lily(ヒキガエルリリー)
  • 学名Tricyrtis hirta
  • 科名:ユリ科(またはホトトギス科に分類されることも)
  • 属名:ホトトギス属(Tricyrtis)
  • 原産地:日本(本州~四国・九州)
  • 開花期:8月~9月(秋の花)
  • 花色:白、薄紫、淡紅紫など(斑点模様が特徴)

ホトトギスについて

特徴

  1. 斑点模様が特徴的な花
    • 花びらに紫色の斑点が散る独特な模様を持ちます。
    • この斑点が、鳥の「ホトトギス(不如帰)」の胸の斑点に似ていることから名づけられました。
  2. 控えめで上品な佇まい
    • 花はあまり大きくなく、下向きや横向きに咲くため、派手さはありません。
    • 山野の木陰など、柔らかな光の中で静かに咲く姿が印象的です。
  3. 丈夫で日陰にも強い
    • 強い直射日光よりも半日陰を好みます。
    • 落葉樹の下や庭の隅など、ひっそりとした場所でよく育ちます。

花言葉:「秘めた思い」

由来

花言葉「秘めた思い」は、ホトトギスの咲き方と姿に深く関係しています。

🔹 1. ひっそりと咲く姿

ホトトギスは派手に咲き誇る花ではなく、森の木陰や人目の少ない場所で静かに咲きます。
その控えめで奥ゆかしい姿が、**「心に秘めた想い」「人に言えない恋心」**を象徴しています。

🔹 2. 複雑で繊細な模様

花びらに散る斑点模様は、まるで心の奥に隠された感情のよう。
表には出さずとも、内には深い想いが宿っている——そんな印象から「秘めた思い」という花言葉が生まれました。

🔹 3. 秋に咲く静かな花

多くの花が終わる秋の終わり頃に咲くことも、
「時を待ち、静かに想いを温める」イメージと重なります。
短い季節にひっそりと咲くその姿が、忍ぶ恋や内に秘めた感情を連想させるのです。


木陰に咲く想い — ホトトギスの花言葉「秘めた思い」より

夏の名残を引きずる風が、校庭の端を渡っていった。木立の影に隠れるように、紗耶はしゃがみ込んでいた。手のひらには、まだ蕾を残した小さな花。薄紫の花びらには、細やかな斑点が散っている。

 「ホトトギス……」
 そう呟くと、となりで風間が微笑んだ。
 「よく知ってるね。山の花なのに」
 「去年、おばあちゃんに教わったの。木陰でひっそり咲く花だって」

 風間はうなずき、そっとその花に指先を伸ばした。だが、すぐに引っ込める。まるで触れることをためらうように。

 放課後の園芸部。二人だけが残った温室には、夕方の光が淡く射し込んでいた。
 テニス部の声も、校舎のざわめきも遠い。聞こえるのは、ホトトギスの葉を揺らす微かな音だけ。

 「風間くん、進路決まったって聞いた」
 「うん。県外の大学。……まだ親にもちゃんと言ってないけど」
 彼の声はどこか迷いを含んでいた。

 紗耶は花を見つめたまま、胸の奥に押し込めていた言葉を思い出していた。
 伝えたい気持ち。けれど、伝えたら何かが変わってしまう気がして、ずっと飲み込んでいた。

 「ホトトギスってね」
 小さな声で紗耶は言った。
 「人の目にあまり触れない場所で咲くんだって。派手じゃないし、気づかれないことも多い。でも、それでもちゃんと季節を感じて、咲くの」
 「……秘めた思い、ってやつ?」
 「うん。花言葉」

 風間が静かに笑った。
 「なんか、紗耶みたいだな」
 「え?」
 「クラスでも目立たないけど、ちゃんと自分の世界を持ってるとこ」

 その言葉に、紗耶の指先が小さく震えた。
 言葉を返そうとしたが、喉の奥で止まった。胸の奥が熱く、そして少し痛い。

 「ねえ、紗耶」
 「……なに?」
 「もし、俺がいなくなっても、この花みたいに咲いててほしい」
 「どういう意味?」
 「今、言ったら……きっと、後悔するから」

 それだけ言って、彼は立ち上がった。
 温室の扉が開くと、風が花を揺らした。小さな花びらがわずかに光を反射する。

 紗耶はそっとその花を見つめた。
 薄紫の花びらに散る斑点が、まるで涙の跡のように見えた。

 ――表には出さずとも、内には深い想いが宿っている。

 おばあちゃんが言っていた言葉を思い出す。
 「人に見せなくても、咲くことに意味があるのよ」

 その晩、ノートの隅に小さくホトトギスの絵を描いた。
 「秘めた思い」と添えて。

 誰にも見せないままページを閉じたとき、心の奥に静かなあたたかさが広がった。
 それは、言葉にできなかった想いが、確かに咲いた瞬間だった。

10月18日、11月12日、29日の誕生花「ベゴニア」

「ベゴニア」

基本情報

  • 科名・属名:シュウカイドウ科(Begoniaceae)ベゴニア属
  • 学名Begonia
  • 原産地:熱帯・亜熱帯地域(南アメリカ、アフリカ、アジアなど)
  • 開花期:春〜秋(種類によっては周年開花)
  • 花色:赤、ピンク、白、オレンジ、黄色など多彩
  • 種類:世界に約1500種以上
    → 鑑賞用としては「根茎性ベゴニア」「球根性ベゴニア」「木立性ベゴニア」などが代表的。

ベゴニアについて

特徴

  1. 左右非対称の葉
    • ベゴニアの葉は、片側が大きくもう片側が小さいという“非対称”な形が特徴です。
    • これは他の植物にはあまり見られない独特の姿で、ベゴニアの個性を際立たせています。
  2. 光沢のある美しい葉
    • 花だけでなく葉の模様や質感も美しく、「葉を楽しむ植物」としても人気があります。
    • 斑入りやベルベット調の葉など、観葉植物としても高く評価されています。
  3. 湿度と明るさを好む
    • 強い日差しや乾燥を嫌い、明るい半日陰でよく育ちます。
    • 高温多湿な日本の気候にも比較的よく適応します。
  4. 花の構造
    • 雄花と雌花が同じ株に咲く「雌雄同株」の植物。
    • 花弁が重なり合うように咲く姿が愛らしく、長い期間咲き続けるのも魅力です。

花言葉:「片思い」

由来

ベゴニアの花言葉はいくつかありますが、
その中でも「片思い(片想い)」という言葉は、とても象徴的です。

由来①:左右非対称の葉

ベゴニアの葉は、どれも左右が不均等で、完全な対称にはなりません。
この「どちらかが少し欠けているような形」が、
“一方だけが想う気持ち”=片思い を連想させることから、この花言葉が生まれました。

― 「心のバランスが少し傾いている」
― 「相手に届かない想い」

そんな繊細な感情を映し出すような葉の形です。

由来②:静かに咲く姿

ベゴニアは派手に自己主張せず、
半日陰や木漏れ日の下で静かに咲く花。
その控えめで慎ましい姿が、
「想いを胸に秘める恋心」を象徴しているとも言われます。


「ベゴニアの葉が傾くとき」

放課後の教室に、夕日が斜めに差し込んでいた。
 窓際の机の上、小さな鉢植えのベゴニアが光を受けて、静かに揺れている。

 それを持ってきたのは、春の始まりの日だった。
 理科準備室の隅でしおれかけていた鉢を見つけたとき、咲良は思わず手を伸ばしていた。
 「もう少しだけ、咲かせてみたいな」
 そんな小さな気まぐれから始まった。

 隣の席の佐久間くんは、いつも静かで、でも誰よりも丁寧にノートを取る人だった。
 授業が終わると、彼は決まって窓の外を見ながらペンを指先で回す。
 咲良はその姿を横目で見るたび、胸の奥が少しだけざわついた。

 ベゴニアは、すぐに新しい葉を伸ばした。
 ただ、その葉はいつも少し傾いていた。
 左が小さく、右が大きい。
 どれほど陽を浴びても、完全な形にはならない。

 「不思議だよね」
 ある日、咲良がつぶやくと、佐久間くんが目を上げた。
 「何が?」
 「この葉。いつも左右で違うの。まるで……心のバランスが、ちょっと傾いてるみたい」
 彼は笑った。
 「人間もそうじゃない? 完璧に真っ直ぐな人なんていないよ」
 その言葉に、咲良はうつむいた。
 ――ああ、そうだね。
 でも、その傾きが、いつも同じ方向を向いているのは、私のほうなんだ。

 次の週、ベゴニアに花が咲いた。
 淡いピンクの花弁が、光に透けるように開いていた。
 誰にも気づかれず、誰にも見せびらかさない。
 それでも確かにそこに咲いていた。

 放課後、佐久間くんが鉢を覗き込んで「きれいだね」と言った。
 咲良の胸が跳ねた。
 「世話してたの、君だったんだ」
 「うん……でも、ただ水をあげてただけ」
 「それでも十分だよ。きっと、君のことがわかるんだと思う」

 その言葉を聞いた瞬間、咲良は何かを言いかけて、やめた。
 もし口にしたら、すべてが壊れてしまいそうで。

 窓から差し込む光の中、ベゴニアの葉が小さく揺れた。
 左右で少し傾いた葉。
 それはまるで、想いの天秤がどちらか一方に傾いているようだった。
 「届かなくても、いいのかもしれない」
 咲良はつぶやいた。
 「それでも、想っている時間があるなら」

 その日、佐久間くんは最後に振り向いて笑った。
 「花、枯らさないようにね」
 彼の姿が教室のドアの向こうに消える。
 残された夕日が、鉢を赤く染めた。

 ベゴニアの葉が、また少し傾いた。
 けれど咲良には、それがまるで心の形のように見えた。
 不完全だからこそ、美しい。
 届かない想いでも、確かにここにある。

 静かに咲く花のように――。