「ブルースター」

基本情報
- 和名:ブルースター(ルリトウワタ)
- 学名:Tweedia caerulea(旧 Oxypetalum caeruleum)
- 科名:キョウチクトウ科(旧ガガイモ科)
- 原産地:南アメリカ(ブラジル、ウルグアイなど)
- 開花時期:5月~10月
- 花色:淡い青、水色、白
- 草丈:40~100cmほど
- 用途:花壇、鉢植え、切り花、ブーケ
ブルースターについて

特徴
- 星形の淡い青い花が特徴で、爽やかで優しい印象を持つ
- 花びらはやや厚みがあり、マットで柔らかな質感をしている
- 切り口から白い乳液(樹液)が出る植物として知られる
- 花持ちがよく、ウェディングブーケやフラワーアレンジメントによく使われる
- 優しい水色は、空や希望を連想させるため幸福の花として人気
花言葉:「信じあう心」

由来
- 澄んだ青色の花が、誠実さや純粋さを感じさせたため
- 星のように整った花姿が、揺るがない信頼や真っ直ぐな気持ちを象徴すると考えられたため
- 優しく穏やかな色合いが、互いを思いやる温かな関係を連想させたため
- 結婚式のブーケなどに使われることが多く、新しい人生を共に歩む信頼の象徴とされたため
- 控えめで清らかな花姿が、疑いのない純粋な心=信じあう関係を表す花として親しまれたため
「空の色を約束に」

六月の空は、どこまでも高かった。
雲はゆっくりと流れ、青は透き通るように広がっている。まるで、空そのものが深く息をしているようだった。
美咲は花屋の前で足を止めた。
店先には色とりどりの花が並んでいる。赤いバラ、淡いピンクのカーネーション、白いユリ。どれも華やかで、通りを歩く人の目を引く。
その中に、ひっそりと置かれている花があった。
水色の、小さな星。
ブルースターだった。
花びらは五枚。整った形で、やわらかな空色をしている。強く主張するわけでもなく、ただ静かに咲いている。
美咲はその花を手に取った。
「きれいですよね、それ」
花屋の店主が微笑んだ。
「ブルースターっていうんです。花言葉は“信じあう心”」
信じあう心。
その言葉が、美咲の胸の奥に静かに落ちた。
結婚式は、来月だった。
式場も決まり、ドレスも決まり、準備はほとんど整っている。忙しい日々だったが、不思議と不安はなかった。

けれど、ふとした瞬間に考えることがある。
これからの人生のことを。
悠人とは、大学で出会った。
同じ講義で隣の席になったのがきっかけだった。最初はただの知り合いだったが、少しずつ話すようになり、気づけば一緒にいる時間が増えていた。
彼は、派手な人ではなかった。
どちらかといえば静かで、落ち着いている。目立つことを好まない人だった。
けれど、言葉はいつも真っ直ぐだった。
「大丈夫だよ」
彼がそう言うと、本当に大丈夫な気がした。
付き合い始めてから、喧嘩をしたこともある。
仕事が忙しくてすれ違った日もあった。互いの考えが合わないこともあった。
それでも、最後には必ず話をした。
怒ったまま終わることはなかった。
どちらかが言葉を探し、どちらかがそれを聞いた。
そうやって少しずつ、二人の時間は重なっていった。
「結婚ってさ」
ある夜、悠人が言った。
「特別なことっていうより、同じ方向を向くことなのかもしれない」
その言葉を、美咲はよく覚えている。
同じ場所に立つことではなく、同じ方向を見ること。
たとえ違う景色を見ていたとしても、歩く先が同じなら、それでいい。
ブルースターの花を、もう一度見つめる。
星の形をした花びらは、きれいに整っている。
青は、空の色に似ていた。

深く澄んでいて、どこまでも続いていくような色。
「ブーケに使う方も多いんですよ」
花屋の店主が言った。
「信頼とか、誠実な気持ちを表す花なんです」
美咲は小さくうなずいた。
誠実。
それは派手な言葉ではない。
けれど、きっと一番大切なものだ。
結婚は、きっと特別な日だけでできているわけではない。
華やかな式も、祝福の言葉も、ほんの一瞬の出来事だ。
本当に続いていくのは、その後の毎日だ。
朝起きて、仕事へ行き、夕食を作り、他愛のない話をする。
時には疲れて、時には笑う。
そんな日々の中で、互いを信じ続けること。
それが、きっと結婚なのだ。
美咲はブルースターをそっと戻した。
その青い花は、他の花に比べれば目立たない。
けれど、不思議と目を離せない。
控えめで、静かな花。
それでも、その色は空のように広がっている。
店を出ると、空が見えた。
澄んだ青。
雲がゆっくりと流れている。
その色は、さっき見たブルースターと同じだった。
スマートフォンが震えた。

悠人からのメッセージだった。
「仕事終わった。今日は早く帰れそう」
美咲は少し笑った。
そして返信を打つ。
「じゃあ、帰りに寄り道しようか」
送信ボタンを押す。
それだけのやり取りなのに、胸の奥が温かくなる。
信じあうということは、特別な誓いではないのかもしれない。
疑わないことでも、完璧でいることでもない。
ただ、相手の言葉を受け取ること。
そして、自分の言葉を渡すこと。
その繰り返し。
空は、変わらず広がっている。
どこまでも続く青。
その下で、人はそれぞれの道を歩いている。
けれど、もし同じ空を見上げているのなら。
同じ青を信じているのなら。
それだけで、きっと十分なのだ。
ブルースターの花は、星の形をしている。
小さく、静かな星。
けれど、その青は、確かな約束の色だった。