「ユキノシタ」

ユキノシタ(雪の下)は、ユキノシタ科の多年草で、日本や東アジアに広く分布しています。名前の由来は、冬でも葉が枯れず、雪の下でも緑を保つことからきています。
ユキノシタについて

科名:ユキノシタ科(Saxifragaceae)/ユキノシタ属(Saxifraga)
原産地:日本や中国などの湿った半日陰に自生
生育環境:湿った半日陰の場所を好み、庭や山間の岩場などに自生しています。
葉:ハート型で縁に細かいギザギザがあり、やや厚みがあります。
花:5枚の花びらを持ち、上3枚は小さく淡いピンクや白、下2枚は長く伸びて目立つ形をしています。
開花期:5月〜7月頃
ユキノシタの利用
- 薬草:葉は民間療法で、火傷や腫れの治療に使われることがあります。
- 食用:天ぷらや和え物にして食べることもできます。少し酸味があるのが特徴です。
日本の風土に根付いた植物で、観賞用としても、実用的な草花としても親しまれています!
花言葉:「好感がもてる」

「好感がもてる」のほかに、「深い愛情」「切実な愛」などの意味もあります。
可憐な花姿と丈夫な性質から、人に好かれやすい印象を持つことが由来かもしれませんね。
「ユキノシタの約束」

梅雨入り前のある日、山あいの小さな村に住む少女、凛は祖母の家の庭でユキノシタの花を見つめていた。白く小さな花びらが風に揺れ、どこか儚げだが、しっかりと根を張り生きている。
「ユキノシタの花言葉は『好感がもてる』なのよ。人に優しく寄り添う花なの」
そう教えてくれたのは、祖母だった。

幼いころから凛は、村の外れに住む少年、蒼とよく遊んでいた。蒼は無口で、人と話すのが苦手だったが、不思議と凛には心を開いてくれた。二人は森の中を探検し、小川で遊び、草花を摘んでは笑い合った。
「ねえ、蒼。この花、可愛いでしょう?」
ある日、凛がユキノシタの花を摘んで蒼に見せた。
「……好き」
ぽつりと呟いたその声が、やけに耳に残った。

それから数年が経ち、凛が都会の高校へ進学する日が迫っていた。蒼は相変わらず無口だったが、どこか寂しげな表情を浮かべていた。
「行っちゃうの?」
「うん。でも、また帰ってくるよ」
別れの日、凛は祖母の庭でユキノシタを一輪摘み、それを蒼に手渡した。

「ユキノシタの花言葉にはね、『深い愛情』や『切実な愛』って意味もあるんだって。だから、私たちはずっと友達だよ」
蒼はその花をじっと見つめ、やがて小さく頷いた。
それから数年後、久しぶりに村へ戻った凛は、祖母の庭でユキノシタの花が咲き誇るのを見た。そして、ふと気配を感じて振り向くと、そこには成長した蒼が立っていた。

「……おかえり」
彼の手には、一輪のユキノシタの花が握られていた。
凛は微笑み、そっとその花を受け取った。
雨上がりの風が、優しく二人を包み込んでいた。