8月14日の誕生花「センニチコウ」

「センニチコウ」

基本情報

  • 和名:センニチコウ(千日紅)
  • 英名:Globe Amaranth
  • 学名Gomphrena
  • 科名:ヒユ科
  • 原産地:熱帯アメリカ(特にペルー、グアテマラ)
  • 開花期:6〜11月
  • 花色:赤、紫、ピンク、白など
  • 別名:センニチソウ、千日草
  • 花の構造:実際に色づいている部分は花びらではなく苞(ほう)で、その間に小さな花が咲く

センニチコウについて

特徴

  1. 非常に花もちが良い
    • 「千日紅」という名のとおり、咲いてから色あせにくく、長く鑑賞できる。
    • 切り花やドライフラワーにしても鮮やかな色を保つ。
  2. 耐暑性・耐乾性に優れる
    • 強い日差しや高温でも元気に咲き続けるため、夏の花壇や鉢植えに最適。
  3. 丸く愛らしい花姿
    • 球状に咲く花は小ぶりで可愛らしく、寄せ植えや花束にアクセントを添える。
  4. 虫や病気に強い
    • 初心者でも育てやすい丈夫な植物。

花言葉:「変わらぬ恋」

色あせない美しさ

  • 千日紅は花期が長く、咲き進んでも色がほとんど褪せない。
  • ドライフラワーにしても発色を保つことから、「時を経ても変わらない愛情」の象徴となった。

長く寄り添う姿

  • 夏から秋まで、途切れることなく咲き続ける姿が、長い年月を共に歩む恋人や夫婦の姿に重ねられた。

“千日”という名のイメージ

  • 「千日」という長い期間を意味する名前そのものが、「永遠」や「不変」を連想させる。

「千日の赤」

古びた木の引き出しの奥から、小さなガラス瓶が出てきた。中には、鮮やかな赤い花が数輪――けれど、それは生花ではなく、乾いて軽くなった千日紅だった。
 祖母が亡くなって三日目。遺品整理の手を止めて、私はその瓶をそっと持ち上げる。

 「まだ色が残ってる……」

 呟いた私の耳に、母が懐かしそうな声で言った。
 「それね、おばあちゃんが若い頃にもらった花なのよ。おじいちゃんから。」

 祖父は、私が生まれる前に亡くなっている。写真の中でしか知らない人だ。
 母は瓶を手に取り、ゆっくりと蓋を開けた。ふわりと乾いた香りが広がる。
 「二人が結婚する前、初めての誕生日に贈られたんだって。千日紅はね、色あせないでずっと残るから、“変わらぬ恋”って意味があるのよ。」

 私は花を一本取り出して光にかざした。
 驚くほど赤が鮮やかで、時間を閉じ込めたみたいだった。五十年以上経っているはずなのに、少しも褪せていない。

 母の話では、祖父は口数の少ない人で、花なんて似合わなかったらしい。それでも、若かった祖母に「長く一緒にいたい」という思いを伝えたくて、花屋でこの小さな赤い花を選んだという。
 祖母はその花をずっと部屋に飾り、色あせてきた頃にドライにして瓶に詰めた。瓶の口を閉じた日から、もう一度も開けなかったそうだ。

 私は瓶を見つめながら思った。
 ――祖母にとって、この赤は祖父そのものだったのだろう。
 夏から秋まで、途切れず咲き続ける千日紅のように、二人の時間は静かに積み重なっていったのだ。

 葬儀の朝、私は祖母の枕元に瓶を置いた。
 花は声を発しない。それでもきっと、祖父の言葉を代わりに届けてくれる。
 「ありがとう。変わらず愛しているよ。」
 そんな声が、心の中で確かに聞こえた気がした。

 火葬の煙が空へと溶けていく。私は瓶から一輪を取り出し、そっとポケットにしまった。
 色あせない赤は、きっとこれからも私にとっての“変わらぬ恋”の証になるだろう。

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