11月23日の誕生花「ストレリチア」

「ストレリチア」

基本情報

  • 学名:Strelitzia
  • 和名:極楽鳥花(ゴクラクチョウカ)
  • 英名:Bird of Paradise(バード・オブ・パラダイス)
  • 科名:ゴクラクチョウカ科
  • 属名:ゴクラクチョウカ属(ストレリチア属)
  • 原産地:南アフリカ
  • 開花期:主に冬~春 5月~10月(温室・暖地では周年咲きも)
  • 花色:オレンジ+青紫の鮮やかな配色
  • 草丈:1〜2m前後(種類により異なる)

ストレリチアについて

特徴

  • 鳥のくちばしと羽のような形の独特の花姿で、観賞価値が非常に高い。
  • 名前の「極楽鳥花」は、花の形が極楽鳥(Bird of Paradise)に似ていることに由来する。
  • 葉は大きく、バナナの葉に似た形状をしている。
  • 花持ちがよく、切り花として長く楽しめるため、フラワーアレンジメントでも人気。
  • 強健で乾燥に比較的強い一方、寒さには弱い
  • 花は、花苞(かほう)と呼ばれる硬い舟形の構造から次々と飛び出すように咲く。

花言葉:「気取った恋」

由来

  • ストレリチアは、派手でエキゾチックな姿をしており、他の花とは一線を画すほど個性的。
  • 鮮やかなオレンジと青紫の色彩、鳥のように見える花形から、
    → **「どこか気取って見える」「人目を惹く美しさ」**という印象を与える。
  • また、咲き方が横からスッと伸び、まるで誇らしげに立っているように見えることから、
    → **「気取った恋」「恋する気持ちを見せつけるような華やかさ」**を象徴した。
  • 全体的に、
    自信に満ちた恋心、堂々とした愛情表現
    というイメージからこの花言葉が生まれたとされる。

「極楽鳥花の立つ場所で」

放課後の温室は、夕陽を吸い込むように静かだった。
 ガラス越しの光がオレンジ色に傾き、植物たちの影を長く伸ばしていく。その中でひときわ鮮やかに浮かび上がっている花があった。

 ストレリチア。
 極楽鳥花――その名のとおり、鳥が羽を広げたような姿をしている。

 千尋は、そっとその花に手を伸ばした。触れれば壊れてしまいそうなほど繊細で、けれど自信に満ちた線を描いて咲いている。

 「……本当に、気取ってるみたい」

 思わずつぶやくと、背後から気配がした。

 「気取ってるんじゃなくて、誇らしげなんだよ。あの花は」

 振り返ると、同じ園芸部の遼が立っていた。
 夕陽が彼の輪郭を照らし、どこか大人びて見える。

 遼はストレリチアの前に歩み寄り、花を覗き込んだ。

 「鮮やかなオレンジに、青紫のアクセント。普通じゃないだろ? 他の花とは全然違っててさ。まるで“僕を見て”って言ってるみたいだ」

 千尋は小さく笑った。

 「たしかに。存在感、すごいよね」

 「うん。横からスッと伸びて、堂々としてる。……気持ちを隠そうとしない、そんな感じ」

 遼はそこで言葉を切り、少し照れたように口元を押さえた。
 それは、千尋が今まで見た中で一番不器用な表情だった。

 「千尋はさ、どうしてこの花を好きなんだ?」

 突然の問いに、心臓が跳ねる。
 この花が好きな理由。ずっと曖昧なまま、自分でも整理できずにいた気がする。

 けれど――今なら言えるかもしれない。

 「……自信があるから、じゃないよ」

 千尋はストレリチアに視線を戻した。
 硬い舟形の花苞から鮮やかな花が飛び出すように咲いている。その姿が、胸に刺さる。

 「この花って、強く見えるけど、本当は繊細なんだよね。温度にも湿度にも敏感で、ちょっとした変化で咲かなくなる。それでも、一生懸命咲こうとしてる」

 夕陽が花弁を照らし、光を跳ね返す。
 千尋は息を吸い込むようにその光景を見つめた。

 「気取って見えるのは……きっと、弱さを隠したいからなんだと思う。それでも真っすぐ咲いて、誰かに見てほしいって思ってる。――そんな気持ちが、少しだけ自分に似てるから」

 遼は驚いたように目を瞬いた。

 そして、ほんの少し笑った。

 「千尋、知ってる? ストレリチアの花言葉」

 「……“気取った恋”、でしょ?」

 「うん。でも本当は、“堂々とした恋心”って意味に近いんだってさ。自分の想いをごまかさないで、ちゃんと立っている恋」

 言葉の色が変わった気がした。
 胸の奥がきゅっと締め付けられる。

 遼はゆっくり千尋の方に向き直った。

 「俺、千尋のそういうところ……好きだよ。弱さがあっても、ちゃんと前を向こうとするところ」

 ストレリチアの影が、二人の足元で揺れた。
 夕陽が落ちる直前の温室は、どこか世界から切り離されたように静かだった。

 千尋は胸の鼓動を感じながら、小さく息を吐いた。

 そして、ほんの少しだけ勇気を出した。

 「……遼。私も、あなたが好きだよ」

 ストレリチアは風もないのに、羽を広げるように光を浴びていた。

 その姿は、まるで二人の恋を祝福するように――
 誇らしげに、気取ったように、鮮やかに咲いていた。

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