11月24日の誕生花「セントポーレア」

「セントポーレア」

Jiří KouřílekによるPixabayからの画像

基本情報

  • 学名:Saintpaulia(※近年は Streptocarpus sect. Saintpaulia に分類されることも)
  • 和名:アフリカスミレ
  • 英名:African Violet
  • 科名:イワタバコ科
  • 原産地:タンザニア、ケニアなどの東アフリカ高地
  • 開花期:9月~6月一年を通して咲きやすい(室内栽培向き)
  • 花色:紫・青・ピンク・白・複色など多様
  • 草丈:10~15cmほどの小型多年草

セントポーレアについて

Gini GeorgeによるPixabayからの画像

特徴

  • コンパクトな株姿で、室内でも育てやすい人気の鉢花。
  • 肉厚で柔らかな葉に細かな毛が生えており、円形にロゼット状で広がる。
  • 花は小ぶりだが種類が豊富で、八重咲き・フリル咲き・覆輪など多彩な品種がある。
  • 半日陰を好み、直射日光に弱いため、窓辺や室内の明るい日陰で育つ。
  • 多湿は苦手だが、**適度な湿度と一定の温度(20〜25℃)**が保たれると長期間開花する。
  • 葉挿しで簡単に増やすことができ、初心者でも挑戦しやすい。

花言葉:「小さな愛」

PeggychoucairによるPixabayからの画像

由来

  • セントポーレアは、手のひらにおさまるほど小さな株から、可憐な花を次々と咲かせる。
    → その控えめで愛らしい姿が「小さな愛情」「そっと寄り添う思い」を連想させた。
  • 目立たないのに、近くで見ると驚くほど繊細で美しい花を咲かせることから、
    → **“大きくはないけれど、確かにそこにある愛”**という意味を象徴している。
  • 東アフリカの過酷な環境でも、小さな花を一生懸命咲かせていた植物であることから、
    ひかえめながらも健気に続く愛情を象徴すると考えられた。
  • そのため、
    「小さな愛」「可憐な愛情」「ほほえみ」
    などの花言葉がつけられたとされる。

「小さな花が照らす場所で」

HansによるPixabayからの画像

放課後の図書室は、窓から差し込む柔らかな陽光で満ちていた。
 その光を受けて、小さな鉢植えが静かにたたずんでいる。紫がかった小さな花が、まるで囁くように揺れた。

 ――セントポーレア。

 瑠衣(るい)はその花の前に立ち止まった。
 図書委員の仕事で机を拭いているとき、ふと視界の端で光ったのだ。

 「……まだ咲いてるんだ」

 小ぶりな株から生まれる、控えめで可憐な花。
 手のひらにそっと乗りそうなくらい小さいのに、近くで見るとびっくりするほど繊細で、精密な細工のように美しい。

 瑠衣は、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。

 「それ、好きなの?」

 突然声がして振り返ると、クラスメイトの遥斗(はると)が本を抱えて立っていた。
 彼は図書室によく来るが、こうして話しかけてくるのは珍しい。

 「うん。なんか……かわいいよね」

 瑠衣が答えると、遥斗は少し笑った。

 「この花、強いんだよ。東アフリカの山の中で生きてて、過酷な場所でも少しずつ花を咲かせる。小さいけど、ちゃんと咲いてる」

 瑠衣は目を瞬いた。

 「そうなんだ……全然知らなかった」

 「なんか、瑠衣みたいだなって」

 思わぬ言葉に、瑠衣は手を止めた。

 「わ、私……?」

 遥斗は少し照れくさそうに視線をそらした。

 「目立つタイプじゃないけど、誰かのために静かに頑張ってる。小さくても、ちゃんと誰かを支えてる。……そういうとこ、すごいと思う」

 胸が小さく震えた。
 自分でも気づかなかった気持ちが、そっと台の上に置かれたようだった。

 瑠衣は、机の上のセントポーレアに目を落とした。

 「この花の花言葉、知ってる?」

 遥斗が問いかける。

 瑠衣は小さく首を振った。

 「“小さな愛”、っていうらしい」

 図書室の空気が、ひときわ静かに感じられた。
 まるで、この場所だけ時間がゆっくり流れているようだった。

 「大きく目立つわけじゃない。でも、確かにそこにあって……そっと寄り添ってくれるような愛情。そういう意味なんだって」

 遥斗は、机に置かれた小さな花をそっと見つめた。

 「俺、ああいうの……すごくいいと思う。派手じゃないけど、嘘じゃない。ちゃんと誰かのそばで灯ってるみたいな愛」

 瑠衣は息を呑んだ。

 セントポーレアの花びらが、夕方の光を受けてわずかに輝いた。
 その小さな花は、まるで本当にふたりに寄り添っているように見えた。

 「……ねえ、遥斗」

 「ん?」

 「私も、そういう愛が好き。大きくなくても、確かにそこにある気持ち……」

 言葉が喉の奥で少し震える。
 けれど、今なら言える気がした。

 「あなたの言葉、嬉しかったよ」

 遥斗はゆっくりと微笑んだ。

 「ならよかった。……これからも、話していい?」

 「もちろん」

 小さく、でも確かに花開くように瑠衣は笑った。

 図書室の静寂の中で、セントポーレアはふたりを包むように咲いていた。
 まるで“ほほえみ”そのものを形にしたように――
 控えめで、けれど確かな愛を灯しながら。

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