12月21日の誕生花「白いツバキ」

「白いツバキ」

基本情報

  • 和名:ツバキ(椿)
  • 別名:白椿
  • 学名Camellia japonica
  • 科名/属名:ツバキ科/ツバキ属
  • 原産地:本州、四国、九州、沖縄、台湾、朝鮮半島南部、中国(山東、浙江)
  • 開花時期:11月~12月、2月~4月
  • 花色:白
  • 樹形:常緑高木(庭木・生け垣として利用される)

白いツバキについて

特徴

  • 凛とした白い花
    赤やピンクの椿と比べ、白椿は装飾性よりも静けさや清廉さが際立ちます。雪の中でも映える、澄んだ存在感があります。
  • 花が丸ごと落ちる性質
    ツバキは花弁が散らず、花全体がぽとりと落ちるのが特徴です。この姿は、潔さや覚悟を連想させ、日本文化の中で特別な意味を持ってきました。
  • 光沢のある常緑の葉
    厚く濃緑色の葉は一年中美しく、花の白さをいっそう引き立てます。花のない季節でも品格を保つ樹木です。
  • 日本文化との深い結びつき
    茶花、庭木、和歌や絵画の題材として古くから親しまれ、特に白椿は「控えめな美」の象徴とされてきました。

花言葉:「誇り」

由来

白いツバキの花言葉「誇り」は、次のような理由から生まれたと考えられています。

  • 飾らず、媚びない美しさ
    白椿は華やかに主張することなく、静かにそこに咲きます。その姿は、自分を誇示しない“内に秘めた誇り”を思わせます。
  • 花の散り方が象徴する潔さ
    花びらがばらばらに散らず、咲いた姿のまま落ちる様子は、信念を曲げずに終わりを迎える姿と重ねられました。
    これは「誇り高く生きる」「最後まで自分を保つ」という意味合いにつながっています。
  • 冬に咲く強さと気高さ
    厳しい寒さの中でも淡々と咲く白椿は、困難な状況でも品位を失わない精神の象徴とされ、「誇り」という言葉がふさわしい花とされました。

「白のまま、立つ」

境内の奥に、その白椿はあった。
 誰に見せるでもなく、誰を待つでもなく、古い石灯籠の影に身を置いたまま、冬の終わりを受け入れるように咲いていた。

 由依は毎朝、その前を通った。参拝客の多くは朱色の鳥居や梅の枝に目を奪われ、白椿の存在に気づくことはほとんどない。それでも由依は、足を止め、必ず一度だけ視線を向ける。
 理由は、うまく言葉にできなかった。

 仕事では、要領の良い人間が評価される。声の大きな意見が通り、慎重な考えは後回しにされる。由依は自分の誠実さが、いつの間にか弱さとして扱われていることに気づいていた。合わせれば楽だと分かっているのに、それができない。だから、少しずつ疲れていた。

 ある朝、白椿の根元に、落ちた花があった。
 花びらは散らばらず、咲いたときの形をそのまま残して、静かに地面に横たわっている。

 由依は思わず膝をついた。
 きれいだ、と思ったのではない。
 ただ、「こういう終わり方があるのか」と、胸の奥がわずかに揺れた。

 咲いている間、白椿は目立たない。香りも強くないし、色も控えめだ。だが、だからこそ、自分を飾る必要がない。
 そして、終わるときも同じだ。ばらばらになって風に任せることもなく、最後まで自分の形を守る。

 「誇り、か……」

 誰に聞かせるでもなく、由依はつぶやいた。
 誇りとは、胸を張ることではない。勝ち取ることでも、認めさせることでもない。
 たぶんそれは、自分を裏切らないことだ。状況が厳しくても、寒さが続いても、淡々と、白のままで立ち続けること。

 その日、由依は職場で初めて、自分の意見を言った。声は震えたし、空気が少しだけ重くなった。それでも、引き下がらなかった。
 結果がどうなるかは分からない。だが、不思議と後悔はなかった。

 帰り道、境内に立ち寄ると、白椿はまだ枝に残っていた。
 冬の光を受け、静かに、変わらぬ姿で。

 由依は小さく息を吸い、胸の内でそっと言った。
 ――私は、私のままでいい。

 白椿は何も答えなかった。
 それでも、その沈黙は、十分すぎるほどの肯定だった。

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