「アストランティア」

基本情報
- 学名:Astrantia major(代表種)
- 科名:セリ科(Apiaceae)
- 属名:アストランティア属(Astrantia)
- 原産地:ヨーロッパ中〜南部
- 開花時期:5月中旬~7月中旬(秋にも咲くことがある)
- 花色:白、ピンク、赤、グリーン系など
- 草丈:30〜70cm程度
- 耐寒性:強い(寒冷地にも向く)
- 耐暑性:やや弱い(夏の高温多湿に注意)
アストランティアについて

特徴
- 星型の花のように見える、繊細で個性的な見た目が特徴。
- 実際の花は中心の小さな花群で、花びらに見える部分は「総苞片(そうほうへん)」と呼ばれる葉の変形。
- 切り花やドライフラワーにも人気で、ブーケやフラワーアレンジメントによく使われる。
- 半日陰でも育つため、ナチュラルガーデンや山野草風の庭に適している。
花言葉:「星に願いを」

アストランティアの花言葉のひとつに「星に願いを(Wish upon a star)」があります。これは以下のような理由に由来しています:
- アストランティアの花は、放射状に広がる細かい総苞片が星のような形をしていることから、「星」を連想させます。
- その幻想的で繊細な姿が夜空に浮かぶ星のようにロマンチックで、見る人に夢や希望、願いを思い起こさせることから、「星に願いを」という詩的な花言葉が生まれました。
- 「星に願いを」は英語で “Wish upon a star” とも表現され、希望・祈り・未来への憧れを象徴します。
「星に願いを、花に想いを」

小さな村のはずれに、「星花園(せいかえん)」と呼ばれる庭園があった。手入れされた草花の中に、一際目を引く花が咲いていた。淡いピンクの花弁――けれどそれは正確には「花びら」ではなく、放射状に広がる総苞片。アストランティア。星のようなその花は、夜空とよく似ていた。
この庭園をひとりで守っているのは、70歳になる女性・澄子(すみこ)だった。
澄子はもう何年もここで暮らしている。かつては夫と共にこの庭園を作ったが、彼は十年前に病でこの世を去った。以来、彼女はひとりで星花園を守り続けてきた。
「この花はね、『星に願いを』っていう花言葉があるのよ」

澄子は、村の子どもたちにそう語りながら、アストランティアの手入れをしていた。
「星に願いを、って……ほんとに願いが叶うの?」
小さな女の子が問いかける。
「ええ。叶うかどうかはわからないけれど、願いを込めることで心が少し軽くなるの。それだけでも素敵でしょう?」
少女は頷いたあと、小さな手でアストランティアに触れた。「わたし、お母さんの病気が治りますようにってお願いする」
澄子は微笑みながら、その手を優しく包んだ。「その気持ちが、きっとお母さんに届くわ」
夜。庭に一人佇む澄子は、空を見上げていた。

満天の星。その下で、アストランティアは静かに咲いている。風に揺れるその姿は、まるで夜空からこぼれ落ちた小さな星。
「あなた、今も見ているかしら」
澄子は、心の中で夫に話しかける。二人で星花園を始めた日のことを思い出していた。まだ若く、夢と希望だけで未来を描いていたあの頃。彼が好きだった花が、このアストランティアだった。
「星みたいだね」と、彼は言った。「いつか、ここを訪れる人が願いを込めて花を見上げられるような場所にしよう」
その願いは、きっともう叶っている。
翌朝。少女が再びやってきた。手には小さな折り紙の星。
「これ、花にあげるの。願いが届きますようにって」
澄子は涙ぐみながら微笑んだ。「ありがとう。この花も、きっと喜んでいるわ」

彼女はそっとアストランティアの根元に星を飾った。まるで、花が地上に咲いた星と星空の間をつなぐ橋のようだった。
数ヶ月後。少女の母の容体は奇跡的に回復した。医師さえも首をかしげる中、少女は言った。
「アストランティアのおかげかも!」
村では噂が広がり、星花園は少しずつ人々の憩いの場になっていった。願いを込めて訪れる者、花に話しかける者、ただ静かに星のような花を眺める者。
澄子はそのすべてを、静かに見守っていた。
夜空に咲いたようなアストランティア。その一輪一輪が、誰かの願いを抱いて揺れている。
そして澄子は、今日もそっと心の中で願う。
――どうか、あなたの夢が叶いますように。