「ジニア」

基本情報
- 和名:百日草(ヒャクニチソウ)
- 学名:Zinnia
- 科名/属名:キク科/ジニア属(ヒャクニチソウ属)
- 原産地:メキシコを中心に南北アメリカ
- 開花時期:5月~11月上旬
- 草丈:20cm〜1m(品種による)
- 花色:赤、ピンク、オレンジ、黄、白、紫、複色など
- 形状:一年草(日本では)
- 別名:百日草(ヒャクニチソウ)、ジーニア、花のダリア(見た目の類似から)
- 利用:花壇・切り花・鉢植え向き
ジニアについて

特徴
- 長期間咲き続ける花
名前のとおり、「百日」=「長い期間」咲くのが最大の魅力。夏の間ずっと花壇を彩ってくれる。 - 暑さに強く丈夫
乾燥や日差しにも強く、夏の炎天下でも元気に咲く。初心者にも育てやすい。 - 花色・花形のバリエーションが豊富
一重咲き・八重咲き・ポンポン咲きなど、品種によってさまざまな姿を楽しめる。 - 花もちがよく切り花にも最適
茎がしっかりしており、切っても比較的長く花を楽しめるため、フラワーアレンジメントにも使われる。
花言葉:「不在の友を思う」

由来の背景:ジニアの「長く咲き続ける性質」
ジニアは、暑い夏から秋まで、非常に長く咲き続ける花です。この「途切れず咲く姿」は、離れていても変わらぬ友情や、会えなくても忘れない気持ちを象徴しています。
色褪せず咲き続ける姿=「想いを絶やさない心」
会えない時間が長くても、花はずっとそこにある――まるで、「今はいないけれど、大切な友を忘れずに思い続ける心」を重ねることができます。
夏から秋へ、季節をまたいで咲く=「時を越えてつながる思い」
季節の移ろいの中でも変わらず咲き続ける姿が、「時間や距離を超えて、変わらぬ友情」を象徴すると考えられています。
「百日の手紙」

駅前のフラワーショップで、小さな鉢植えを買った。
「ジニアです。夏から秋まで、ずっと咲きますよ」
店員の女性が微笑みながら言った。
その名前を聞いた瞬間、胸の奥に何かが触れた気がした。
——そうだ、あの子が最後にくれた花も、ジニアだった。
* * *
高校の卒業式の日、沙織は一鉢の花を私に手渡してきた。
「これ、ジニアっていうの。百日草って呼ばれるんだよ」
ピンクとオレンジが混ざった、賑やかな色合いの花だった。

「夏の間ずっと咲くんだって。だから……元気でいてね」
それが彼女の最後の言葉だった。
進学先が別々になった私たちは、そのまま会うことなく、月日だけが過ぎた。
最初は手紙のやり取りをしていたけれど、彼女が突然、引っ越すことになって、それきり音信不通になった。新しい住所も知らされないまま。
* * *
帰宅して、買ったばかりのジニアをベランダに置いた。
窓を開けると、まだ夏の名残が漂っていて、空気が少しだけ熱を含んでいた。
花は、まっすぐに空を向いていた。
たった一輪なのに、強く咲いている。それはまるで、何年も会えない友をずっと思い続ける心のように——

「不在の友を思う」
ふと、花言葉が頭をよぎった。
そういえば、あの鉢植えも、引っ越しの前の日までベランダにあった。
水をやるたび、私は彼女のことを思い出していた。
会えない日が続いても、ジニアは枯れなかった。
——あの頃も、今も、私の中ではずっと一緒に咲いていたのかもしれない。
* * *
その夜、私は机の引き出しを開けた。
一番奥に、彼女からの最後の手紙がしまってある。
「咲き続ける花のように、変わらずに思っています」
震える文字で、そう書いてあった。

私たちは、きっと互いに忘れたわけじゃなかった。
ただ、会えなかっただけ。
窓の外に目をやると、ジニアが月明かりの中に浮かんで見えた。
あの時よりも少し背が高くなったように感じた。
* * *
翌日、私は便箋を取り出し、新しい手紙を書いた。
宛名はまだ書けないけれど、いつかまた会えるその日まで、書き続けよう。
会えなくても、言葉だけでも届くように。
咲き続けるこの花のように、心だけは色褪せないように——
私は、百日の花に見守られながら、静かにペンを走らせた。