「ブバルディア」

基本情報
- 分類:アカネ科ブバルディア属
- 原産地:メキシコ、中央アメリカ(熱帯アメリカ)
- 学名:Bouvardia ternifolia など
- 英名:Bouvardia
- 開花期:10月下旬~4月(切り花は周年流通)
- 花色:赤、ピンク、白、オレンジなど
- 花の形:筒状の花が星形に開く
- 別名:ブバリア
ブバルディアについて

特徴
- 星形の花が房状に集まって咲く、明るく華やかな印象の花。
- 細い筒状の花が多数集まり、香りもあり上品な雰囲気を持つ。
- 一年草として扱われることが多いが、温暖地では多年草として越冬可能。
- 切り花やブーケで人気が高く、花持ちが良いのも特徴。
- 名前は、17世紀フランス王ルイ13世の侍医 シャルル・ブバル(Charles Bouvard) にちなんで名付けられた。
花言葉:「幸福な愛」

由来
- 星のような花形が、愛と希望の象徴とされる「星」に通じることから、幸せな未来を照らす愛を表す。
- 小さな花が寄り添うように咲く姿が、支え合う恋人たちを連想させる。
- 咲き姿が明るく温かい印象を与えるため、愛の喜びや幸福感を表す花言葉が生まれた。
- 結婚式のブーケや贈り物にもよく用いられ、「幸せを呼ぶ花」として親しまれている。
「星の灯る花束」

披露宴の準備室で、花嫁の美香は鏡の前に立っていた。白いドレスの胸元に抱えたブーケは、淡いピンクのブバルディアが中心にあしらわれている。
――幸福な愛。
花言葉を知ったのは、ブーケを作ってくれた花屋の紗耶に教わったときだった。
「星みたいな形、でしょ?」
紗耶はそう言いながら、一本ずつ丁寧に花を束ねていた。
「この花、星のように光る“希望”の象徴なんですって。支え合う恋人たちみたいに寄り添って咲くから、“幸福な愛”って呼ばれるんですよ」
そのときの紗耶の声が、まだ耳に残っている。

美香は指先でそっとブーケの花弁に触れた。小さくて、儚くて、それでもしっかりと咲いている。
――私たちも、こんなふうに生きていけるだろうか。
彼と出会ったのは、五年前の夜だった。仕事で失敗して落ち込んでいた美香が、帰り道で偶然立ち寄った小さなバー。彼はそこに一人でいて、ぎこちなく笑いながら「よかったら話します?」と言ってくれた。
あの時、暗闇の中に差し込んだ一筋の光のようだった。
いつの間にか、彼と過ごす時間が美香の心を明るくしていた。

しかし、二人の道のりは平坦ではなかった。転勤、遠距離、そして一度の別れ。
それでも、時間を経て再び出会ったとき、彼が差し出した小さな花束の中にブバルディアが混じっていた。
「これ、君に似てると思って」
その一言で、涙がこぼれた。
控え室の扉がノックされ、スタッフが顔を出す。
「そろそろお時間です」
美香は深呼吸をして立ち上がった。ブーケを胸に抱き、扉の向こうの光の中へと歩み出す。
バージンロードの先には、彼が立っていた。
優しい笑顔。その背後のステンドグラスから射し込む光が、まるで星のように輝いている。
――この人となら、どんな夜も照らしていける。

祭壇の前でブーケを見下ろす。ブバルディアの小さな花々が、寄り添いながらそっと揺れていた。
その姿が、まるで「大丈夫」と囁いているように見えた。
神父の声が響き、誓いの言葉が交わされる。
その瞬間、美香の胸の奥で、静かに何かが灯った。
それはきっと、長い旅の果てに見つけた「幸福な愛」という名の光。
式が終わり、夕暮れの空には一番星が瞬いていた。
彼が笑いながら言う。
「見て、星も祝ってくれてる」
美香は微笑み、ブーケをそっと見つめた。
星のような花形。寄り添うように咲く姿。
その全てが、これからの二人を象徴しているようだった。
――幸福な愛。
それは、眩しく輝く星のように、静かに二人の未来を照らしていた。