「カリフォルニアポピー」

🌼 カリフォルニアポピーの基本情報
- 和名:花菱草(ハナビシソウ)
- 学名:Eschscholzia californica
- 科名:ケシ科
- 属名:ハナビシソウ属
- 原産地:アメリカ・カリフォルニア州周辺
- 開花時期:春~初夏(5月~7月頃)
- 草丈:20~60cm程度
- 花色:オレンジ、黄色、クリーム色など
カリフォルニアポピーについて

🌿 特徴
- 耐暑性・耐乾性が高く、育てやすい:乾燥地でもよく育ち、ガーデニング初心者にも人気。
- 日光が好き:晴れた日には花が開き、曇りや夜には閉じる性質があります。
- 葉は細かく繊細:羽のような細かい切れ込みのある葉が特徴的。
- こぼれ種で増える:自然に種を落とし、毎年咲いてくれることもあります。
花言葉:「私を拒絶しないで」

この花言葉は、カリフォルニアポピーの儚く閉じたり開いたりする様子に由来しており、相手に自分の気持ちをそっと伝えるような、控えめな愛の表現です。
その他の花言葉:
- 「希望」
- 「慰め」
- 「眠り」
「風に咲く日」

春の終わり、風の強い午後だった。駅前のフラワーショップで、小さな鉢に咲いたオレンジの花を見つけた。
「カリフォルニアポピー……」
花の名を口にしたとき、茜はふいに高校時代のある記憶に引き戻された。
教室の窓際の席で、風に揺れる髪をかき上げながら、彼はいつも外を見ていた。
「なんでそんなに遠くばかり見てるの?」
ある日、思い切ってそう聞いた。彼――柊(しゅう)は、少し驚いたようにこちらを見たあと、笑った。
「遠くを見てるんじゃない。今ここにいるのが怖いだけ。」
その言葉が、ずっと胸に引っかかっていた。

放課後の帰り道。夕暮れの並木道を歩きながら、茜は彼に思いを伝えたことがあった。
「……私、柊のこと、好きだと思う。」
沈黙。春風に髪が揺れ、彼は目を伏せたまま言った。
「ごめん。今、誰かを好きになる資格なんて、俺にはない気がするんだ。」
優しい拒絶。それでも、彼は最後にこう言った。
「でも、ありがとう。茜のこと、忘れない。」
それから十年。大学、就職、転勤――時間はどんどん過ぎていった。恋もいくつかあった。でも、ふとした瞬間に浮かぶのは、あの日の春風と、彼の横顔だった。

花屋の店先で見たカリフォルニアポピー。その花言葉は、「私を拒絶しないで」。
あの日の自分の気持ちと、彼の迷いが、まるでこの花の開いたり閉じたりする姿のように思えた。
「これ、ひとつください。」
茜は小さな鉢を両手で包むように持って、マンションへ戻った。窓辺に置いて、水をあげながらふと思う。
あれから彼は、どうしているだろう。
そして次の週末。ふとした偶然で、高校の同窓会の案内が届いた。
その日、彼はそこにいた。髪は少し短くなっていたけど、風に揺れるような雰囲気は変わっていなかった。

「あのとき、ちゃんと伝えられなかったけど……」
彼は、視線を逸らしながら言った。
「俺も、茜のこと、好きだった。でも、自分のことでいっぱいいっぱいで……」
「うん。わかってたよ。でも、こうしてまた会えた。」
茜は微笑む。彼の瞳に、ほっとしたような光が差す。
帰り道、茜はスマホのメモにこう書き残した。
「風に咲く花のように、誰かの想いは、時を越えてまた開くことがある。」
カリフォルニアポピーの花が、ゆっくりと夕日に照らされながら咲いている――
まるで「私を拒絶しないで」という言葉が、やっと誰かに届いたように。