12月16日の誕生花「クリスマスホーリー」

「クリスマスホーリー」

基本情報

  • 和名:セイヨウヒイラギ(西洋柊)
  • 英名:クリスマスホーリー(Christmas Holly)
  • 学名Ilex aquifolium
  • 科名:モチノキ科
  • 原産地:ヨーロッパ、西アジア、北アフリカ
  • 開花時期:4〜5月(花は目立たない)
  • 実がなる時期:秋〜冬
  • 常緑樹:一年中、緑の葉を保つ
  • 雌雄異株:実をつけるには雄株と雌株が必要

クリスマスホーリーについて

特徴

  • 光沢のある濃緑の葉と、鮮やかな赤い実のコントラスト
    ┗ 冬の景色の中で特に映える。
  • 葉の縁に鋭いトゲがある
    ┗ ヒイラギに似た形で、魔除け・守護の象徴とされた。
  • 冬でも色あせない常緑性
    ┗ 厳しい寒さの中でも命を保ち続ける強さを持つ。
  • クリスマス装飾の定番植物
    ┗ リースやガーランドに使われ、宗教的・象徴的意味が深い。
  • 実は観賞用で食用不可
    ┗ 毒性があり、人は食べられない。

花言葉:「神を信じます」

由来

  • キリスト教文化と深く結びついている植物であることから。
  • 赤い実はキリストの流した血
    とげのある葉は茨の冠を象徴するとされる。
  • 冬の厳しさの中でも枯れず、実を結ぶ姿が、
    揺るがぬ信仰心・神への信頼を連想させた。
  • クリスマスに教会や家庭を飾る植物として使われ、
    信仰を告白する象徴的存在となったことが由来。

「冬に残る祈り」

その教会は、町外れの小さな丘の上にあった。
 石造りの壁は冬の空気に冷えきり、尖塔の先には白い雲がゆっくりと流れている。
 エマはコートの襟を立て、重たい木の扉を押した。

 きい、と低い音がして、内部の静けさが迎え入れる。
 礼拝堂には誰もいなかった。
 祭壇の前には、まだ灯りの入っていないキャンドルが並び、その脇に、深い緑の葉と赤い実をつけた枝が飾られている。

 ――クリスマスホーリー。

 祖母がよく口にしていた名前だった。

 エマはその枝に近づき、そっと目を細める。
 光沢のある葉は、指で触れれば痛みを覚えるほど鋭い。
 その間に点る赤い実は、静かな炎のようにも見えた。

 「赤い実は、キリストの血。
  葉のとげは、茨の冠なのよ」

 幼いころ、祖母は暖炉の前でそう教えてくれた。
 エマは当時、なぜそんな痛ましい話をクリスマスにするのか、不思議でならなかった。

 「苦しみの中でも、信じることをやめなかったから、今もこうして語られているの」

 祖母は穏やかに微笑みながら、ホーリーの枝をリースに編み込んでいた。
 その指は年老いていたが、動きは確かで、迷いがなかった。

 ――信じるって、どういうことだろう。

 エマはその答えを、ずっと見つけられずにいた。

 大切な人を失った冬から、祈りは言葉だけのものになった。
 神がいるなら、なぜこんなに簡単に命は奪われるのか。
 信仰は、弱い心を慰めるための幻想ではないのか。

 それでも今日、エマはここへ来た。
 祖母の形見のホーリーの枝を、教会に届けるためだった。

 祭壇の前に立ち、枝をそっと置く。
 赤い実が、白い布の上でひときわ鮮やかに映えた。

 ふと、ステンドグラスから差し込む冬の日差しが、葉の縁を照らす。
 とげの影が床に落ち、細く長く伸びていく。

 ――痛みは、消えない。
 ――でも、枯れもしない。

 ホーリーは冬の厳しさの中でも葉を落とさず、実を結ぶ。
 凍える夜が続いても、沈黙の季節が続いても、そこに「生きている証」を残す。

 エマは気づく。
 信仰とは、答えを与えてくれるものではない。
 ただ、問いを抱えたままでも立ち続けるための、支えなのだと。

 「神を、信じます」

 声に出した言葉は、思ったよりも静かだった。
 だが、嘘ではなかった。
 確信でもなかったが、祈りとしては十分だった。

 祖母も、きっとそうだったのだろう。
 迷いながら、それでも信じることを選び続けた。
 だからこそ、毎年ホーリーを飾り、痛みと希望を同時に語ったのだ。

 エマはゆっくりと跪き、目を閉じる。
 教会の中は変わらず静かで、奇跡が起こる気配もない。
 それでも、胸の奥に小さな安らぎが芽生えていた。

 外に出ると、空気はさらに冷えていた。
 だが、教会の窓から見えるホーリーの赤は、凍えた世界の中で確かに灯っている。

 ――信じることは、揺るがないことじゃない。
 ――揺れながらも、手放さないことだ。

 エマはそう思い、丘を下りていった。
 冬はまだ長い。
 それでも、赤い実のように、信仰は静かに、確かにそこにあった。

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