6月30日の誕生花「ブーゲンビレア」

「ブーゲンビレア」

Peter FrankeによるPixabayからの画像

基本情報

  • 学名Bougainvillea
  • 科名/属名:オシロイバナ科/ブーゲンビレア属
  • 原産地:南アメリカ(主にブラジル)
  • 和名:イカダカズラ(筏葛)
  • 開花時期:4月~5月、10月~11月 (育成方法により大きく異なります)
  • 花の色:ピンク、紫、白、赤、オレンジなど
  • 分類:常緑性つる性低木

ブーゲンビレアについて

hartono subagioによるPixabayからの画像

特徴

  • 花のように見えるのは「苞(ほう)」
     実際の花は小さく、中心に目立たず咲いていますが、その周囲を彩る3枚の苞(葉が変化したもの)が華やかで、花のように見えます。
  • つる性で成長が早い
     フェンスや壁に絡ませて育てることが多く、南国のリゾート地などでよく見かけます。日当たりと風通しの良い環境を好み、乾燥にも強いです。
  • 生命力が強く、剪定にも耐える
     こまめに剪定することで、より多くの花(苞)を咲かせることができます。ガーデニングにも人気です。

花言葉:「あなたしか見えない」

Mari LoliによるPixabayからの画像

この花言葉は、ブーゲンビレアの咲き方と姿に由来しています。

  • 一点集中の美しさ
     ブーゲンビレアは、つる全体に広がって咲くのではなく、一部の枝先にまとまって花(苞)を咲かせます。そのため、咲いている部分に視線が集中しやすく、他を見せず“そこだけに目を引く”ような印象を与えます。
  • 苞が花を守るように包み込む姿
     中心の小さな白い花を、色鮮やかな苞が包み込む様子は、まるで「他の誰でもなく、ただひとりを大切に守っている」ような姿にも見えます。
  • 南国の強い日差しの中でも咲き誇る
     情熱的で濃い色合いの苞が、人目を引くことから、“他が目に入らないほどの強い魅力”というイメージに繋がり、「あなたしか見えない」という花言葉が生まれたと考えられています。

「ただ、君だけを」

hartono subagioによるPixabayからの画像

沖縄の離島。空も海も透き通るように青く、季節は夏の真っ盛りだった。
 その島の海辺に、ひっそりと佇む小さなカフェがある。潮風に吹かれて揺れる、濃いマゼンタのブーゲンビレアが、軒先を彩っていた。

 島に来たのは、失恋がきっかけだった。東京の喧騒から逃げるようにして、私はこの地に降り立った。特に目的もなかった。ただ、心の中のざわめきを少しでも鎮めたかった。

 そのカフェで、彼に出会った。
 無口でぶっきらぼう。なのに、目の奥だけは妙に優しい青年だった。

 「この花、ブーゲンビレアって言うんだよ」
 ふとした拍子に、彼がそう言った。

 「花、なの? 葉っぱみたい」
 私がそう言うと、彼は少し笑った。

 「花は中心の白い部分。周りの色が濃いのは“苞”っていって、葉っぱが変化したもの。でも、花を守るために、ずっとこうして寄り添ってる」

 その説明に、私は不意に心を奪われた。
 “守るために寄り添ってる”
 まるで、誰かがそばにいてくれるだけで、人は救われることがあると知っているかのような言い方だった。

 カフェには毎日通った。彼のことをもっと知りたくなっていた。

 ある日、彼はブーゲンビレアの前で立ち止まり、ぽつりと話し出した。

HansによるPixabayからの画像

 「昔、好きだった人がいた。この島に、毎年花が咲く頃だけ帰ってきてた。……でも、最後に来た年、“もう来ない”って言って、東京に戻って行ったよ」
 言葉少なにそう語る彼の横顔は、どこか遠くを見つめていた。

 「それでも、毎年咲くこの花を見ると、彼女を思い出す。だから、カフェを続けてるのかもしれない」
 彼の声は静かだった。でも、胸の奥に強く残った。

 私は何も言えなかった。けれど、わかった気がした。彼の中にまだある“あなたしか見えない”という想いが。

 それから数日が経ち、私は東京へ戻る日を迎えた。
 最後の朝、ブーゲンビレアの下で、彼が待っていた。

 「……また、来てくれる?」
 彼がそう聞いた。

 私は頷いた。
 「来年、またこの花が咲く頃に」

 彼は小さく笑い、指先で一輪の苞をそっと触れた。
 「この花の花言葉、知ってる? “あなたしか見えない”って言うんだ」
 「……うん、今ならその意味が、少しだけわかる気がする」

 そして私は振り返らずに歩き出した。
 ブーゲンビレアの咲くカフェ。その記憶だけを胸に抱いて。

 誰かを想うということは、きっと、視界に無数の人がいたとしても、その中でただ一人だけを見つめ続けるということなのだ。
 花に包まれたその小さな白い蕾のように、変わらずに、そっと。

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