「ローダンセ」

基本情報
- 学名:Rhodanthe manglesii(主にこの品種が観賞用として流通)
- 別名:ヒロハノハナカンザシ(広葉の花簪)
- 科名/属名:キク科/ローダンセ属(あるいはヘリクリサム属とされることも)
- 原産地:オーストラリア
- 開花時期:(4月~7月)頃
- 草丈:20~50cmほどの一年草
ローダンセについて

特徴
- 紙のような花びら
花びらはカサカサとした質感で、まるで紙細工のような見た目をしています。この乾いた手触りがドライフラワーにも向いており、長く色や形を保ちます。 - 明るい色彩
ピンク、白、黄色など、色鮮やかで光沢感のある花を咲かせます。中心部は黄色でコントラストが美しい。 - 乾燥に強い性質
乾いた環境でも育ちやすく、ガーデニング初心者にも人気。日本では切り花や鉢花、ドライフラワー用途が一般的です。 - 花が閉じない
ローダンセの花は開いた状態のまま咲き、しぼみにくいため、いつまでも「咲いているように見える」という特性もあります。
花言葉:「変わらぬ思い」

花言葉「変わらぬ思い(unchanging affection)」は、主に以下の特徴に由来しています:
- 長く色褪せない美しさ
ローダンセはドライフラワーにしても色や形がほとんど変わらず、長期間そのままの姿を保ちます。その「変わらない美しさ」から、永続する感情を象徴するとされます。 - 可憐なのに強い
見た目は繊細で可愛らしいのに、実際は乾燥や環境の変化に強いというギャップが、「一途で変わらぬ愛情」や「強い想い」をイメージさせます。 - 枯れても咲いているような姿
生花がしおれても、まるで咲き続けているように見えるその姿は、「時間が経っても薄れない気持ち」や「想いの持続性」を象徴しています。
「変わらぬ花」

小さな雑貨店の片隅に、ずっと売れずに残っている一輪のローダンセのドライフラワーがあった。花瓶に挿されたそれは、まるで時間の外にあるように、色褪せることなく、いつも変わらぬ笑顔で店を見守っていた。
「この花、ずっとあるよね」
放課後、店に立ち寄った高校生の紗良がそう言うと、レジに座っていた老店主の悠一が笑った。
「ああ、もう十年くらいになるかな。そのローダンセだけは、どんなに日が経っても色が抜けないんだ。不思議だろう?」
「うん。……でも、ちょっと寂しくない? こんなに綺麗なのに、誰にも選ばれないなんて」
紗良の言葉に、悠一はふと目を細めた。

「それは違うよ。選ばれたんだ、もうずっと前に」
「え?」
店主はローダンセに目を向けながら語り始めた。
「むかし、この店によく来てた女の子がいてね。病気であまり外に出られなかったんだけど、晴れた日だけ母親と一緒に、決まってここに来てくれてた。小柄で、大きな瞳の子だった」
その子は、ローダンセが好きだったのだという。
「毎回、同じ花を眺めては『これ、いつまでも咲いてるね』って。買うことはなかったけど、花の前でずっと立ち止まってた。ある日、その子が母親と来て、『もう、ここには来られないの』って言ったんだ」

そしてその少女は、帰り際、レジに500円玉を置いていった。
「『お小遣いで買えるの、これだけだから、花はそのままでいい。でも、私のものにしていい?』ってね」
それ以来、そのローダンセは売り物ではなくなった。店主は毎朝埃を払って、陽の当たる場所に置いてやる。それが彼女との「約束」だった。
「変わらず咲き続けているあの子の気持ちが、この花に宿ってるんじゃないかって思ってる。花は枯れても、想いは枯れない……そんな気がするんだよ」

紗良は、ローダンセに目をやった。カサカサとした花びらは、それでもどこかあたたかさを持って、まるで誰かの心を守っているようだった。
「じゃあ、これは……その子の“変わらぬ思い”なんだね」
「そう。花言葉の通りだよ」
その日、紗良は手帳にローダンセの名前を書いた。「いつか自分も、誰かの心に残るような想いを持てたら」と、小さく願いながら。
数年後。大学進学で街を離れる前、紗良はもう一度店を訪れた。ローダンセは、変わらずそこにあった。
「この花、やっぱり変わらないね」
「うん。けど、想いは少しずつ広がってる気がするよ」
悠一の言葉に、紗良は頷いた。
そして静かに店を出ると、彼女は振り返って微笑んだ。
「ありがとう、変わらぬ花」