「ライラック」

基本情報
- 和名:ライラック(またはリラ)
- 学名:Syringa vulgaris
- 英名:Lilac
- 科名/属名:モクセイ科/ハシドイ属(Syringa)
- 原産地:ヨーロッパ南東部
- 開花時期:4月~6月(地域により異なる)
- 花の色:紫、白、ピンク、青など
- 香り:甘く爽やかな香り(香水にも使用される)
ライラックについて

特徴
- 落葉性の低木または小高木で、庭木や街路樹として人気があります。
- 穂状の房状に小花が密集して咲く姿が特徴で、遠くからでも存在感があります。
- 耐寒性が強く、寒冷地でもよく育ちます。
- 花だけでなく、芳香のある花の香りも大きな魅力。
- 園芸品種が非常に多く、世界中で観賞用に栽培されています。
花言葉:「友情」

イラックにはいくつかの花言葉がありますが、「友情」という花言葉は主に紫のライラックに結びついています。
● 由来の背景
- ライラックは、春の訪れと共に咲くため、新しい出会いや人間関係の始まりを象徴します。
- 一つひとつの花は小さいですが、集まって咲くことで強い絆やつながりを感じさせるため、友情や親しみの象徴とされています。
- ヨーロッパでは、古くから友人との再会や別れの際の贈り物としてライラックが使われてきました。
● 他の花言葉と関係
- 紫のライラック:「友情」「思い出」「初恋」
- 白いライラック:「無邪気」「青春の喜び」
「春、紫にほどける」

PeggychoucairによるPixabayからの画像
駅前のロータリーにある古い公園には、一本のライラックの木がある。
私と千紘が初めて出会ったのも、その木の下だった。
四月の始まり、大学の入学式の帰り道。人混みに疲れて、私はベンチに腰を下ろした。花の香りに気づいて見上げると、小さな紫の花がこぼれるように咲いていて、その隣に同じように座っていたのが千紘だった。

「ライラック、好きなんだよね。紫は友情の色なんだって」
初対面なのに、そんなことを自然に言える人だった。
それがきっかけで、私たちはすぐに仲良くなった。
一緒に授業を受け、レポートを書き、カフェで何時間も話した。笑ったり泣いたり、特別なことがあったわけじゃない。でも、いつも一緒にいた。
春になるたび、あのライラックの木の下で待ち合わせていた。咲き始めた紫の花を見上げながら、変わっていく自分たちを少しだけ誇らしく思った。
だけど、大学四年の春。
就職を機に、千紘は遠くの街へ行くことになった。

「最後に、ライラック見て帰ろっか」
彼女はそう言って、いつものように駅前の公園に誘ってくれた。
ライラックは、ちょうど満開だった。風が吹くたびに、花の香りがふわっと鼻先をかすめた。
「これ、あげる」
千紘が差し出したのは、小さな紫のライラックの花束だった。
「花言葉、覚えてる? 友情。ずっと、ありがとう」
「……うん。私こそ」

別れ際、千紘は笑って言った。
「友達ってさ、離れても続くんだよ。花が咲く季節になったら、思い出すでしょう?」
それから数年。
毎年春が来るたびに、私はあの公園へ足を運ぶ。
今ではスマホ越しに「咲いたよ」と送り合うだけだけれど、それでも十分だ。
今年もライラックは変わらず、優しい紫にほどけていた。
それを見上げながら、私はそっと微笑んだ。
「また、会おうね。あの頃みたいに」
そして、香りとともに、春が胸に満ちていった。