6月15日の誕生花「ヤマボウシ」

「ヤマボウシ」

基本情報

  • ミズキ科ミズキ属の落葉高木
  • 学名:Cornus kousa
  • 原産地:日本、朝鮮半島、中国
  • 開花時期:5月~7月頃
  • 樹高:5~15m程度
  • 山地や雑木林に自生する
  • 名前の由来は、白い総苞片(花びらのように見える部分)が僧兵(山法師)の頭巾姿に似ていることから
  • 秋には赤い果実を実らせ、紅葉も楽しめる

ヤマボウシについて

特徴

  • 白や淡いピンクの総苞片が十字形に広がり、美しい花姿を見せる
  • 実際の花は中央に集まる小さな緑色の部分
  • 花が咲く期間が比較的長い
  • 初夏の爽やかな景観を演出する庭木として人気が高い
  • 病害虫に強く、育てやすい
  • 秋にはイチゴのような赤い実をつける
  • 春の花、夏の緑葉、秋の実と紅葉、冬の樹形と、一年を通して観賞価値が高い
  • 自然樹形が美しく、シンボルツリーとしても利用される


花言葉:「友情」

花言葉「友情」の由来

  • 四方へ均等に広がる白い総苞片の姿が、人と人が支え合う関係を連想させるため
  • 一本の木に数多くの花が調和して咲く様子が、仲間との結びつきや協調性を象徴すると考えられたため
  • 山野で群生する姿が、人々の助け合いや絆を思わせることに由来する
  • 長い年月をかけて大きく育つ樹木であることから、時間を重ねて育まれる友情のイメージと結び付けられたため
  • 四季を通じて人々を楽しませる姿が、「変わらず寄り添う友人」の存在を連想させることに由来する

ヤマボウシに関連する花言葉

  • 「友情」
  • 「永続性」
  • 「返礼」
  • 「私の想いを受けてください」


「ヤマボウシの下で交わした約束」

 六月の終わりだった。

 青空を切り取るように、白いヤマボウシの花が広がっている。

 公園の中央に立つその木は、まるで大きな傘のように枝を伸ばし、訪れる人々を優しく迎えていた。

 陽介はその木の下で立ち止まり、懐かしい景色を見上げた。

 四枚の白い花びらに見える総苞片が風に揺れている。

 子どもの頃から変わらない風景だった。

 そして、この木を見るたびに思い出す人がいる。

 親友の大輔だった。

 ――初めて会ったのは小学四年生の春だった。

 転校してきた陽介は、教室の隅でひとり座っていた。

 誰に話しかければいいのかわからない。

 周囲の笑い声が遠く聞こえる。

 その時だった。

 「なあ、一緒にサッカーやらない?」

 突然声をかけてきたのが大輔だった。

 日焼けした顔。

 人懐っこい笑顔。

 断る理由も見つからず、陽介は校庭へ出た。

 それが始まりだった。

 それから二人はいつも一緒だった。

 放課後は川で魚を追いかけた。

 山へ秘密基地を作った。

 宿題を忘れて先生に怒られたこともある。

 喧嘩もした。

 くだらないことで口をきかなくなったこともある。

 それでも翌日には自然と仲直りしていた。

 理由なんてなかった。

 一緒にいるのが当たり前だったからだ。

 ある夏の日。

 二人はこの公園へやって来た。

 ヤマボウシの木の下だった。

 大輔が空を見上げながら言った。

 「この木、なんかすごいよな」

 「なにが?」

 「ほら、枝が四方に広がってるだろ」

 陽介も見上げる。

 確かにそうだった。

 白い花がどの方向にも均等に咲いている。

 まるで誰かを仲間外れにしないように。

 そんな姿だった。

 「みんなで支え合ってるみたいだな」

 大輔が笑った。

 その言葉に、陽介も頷いた。

 その頃はまだ知らなかった。

 ヤマボウシの花言葉が「友情」だということを。

 けれど、あの木は確かに友情そのものに見えた。

 互いを支えながら広がる枝。

 数え切れないほどの花。

 どれひとつ欠けても同じ景色にはならない。

 それはまるで、自分たちのようだった。

 中学へ進学し、高校へ進み、二人は少しずつ違う道を歩き始めた。

 大輔は地元に残った。

 陽介は都会の大学へ進学した。

 会う回数は減った。

 それでも連絡は続いた。

 誕生日にはメッセージを送り合った。

 帰省すれば飲みに行った。

 昔話をして笑った。

 距離は離れても、友情は変わらなかった。

 しかし二十代の終わり頃。

 大輔が病気になった。

 突然だった。

 入院したという連絡を受け、陽介は慌てて病院へ向かった。

 病室で再会した親友は、少し痩せていた。

 それでも笑顔は昔のままだった。

 「そんな顔するなよ」

 大輔は笑った。

 「死ぬわけじゃないんだから」

 陽介は言葉を失った。

 何を言えばいいのかわからなかった。

 だが大輔は穏やかだった。

 「なあ、覚えてるか?」

 「何を?」

 「ヤマボウシの木」

 その名前を聞いて、陽介は思わず笑った。

 「ああ、覚えてる」

 「俺さ、あの木好きだったんだよ」

 窓の外を見ながら大輔は続けた。

 「毎年花が咲いて、毎年実がなってさ」

 「うん」

 「ずっと変わらないんだよな」

 しばらく沈黙が流れた。

 そして大輔は静かに言った。

 「友情って、ああいうことなのかもな」

 陽介は返事ができなかった。

 胸の奥が熱くなった。

 大輔は続けた。

 「毎日会わなくてもいい」

 「……」

 「隣にいなくてもいい」

 「うん」

 「でも、根っこではつながってる」

 窓から差し込む夕陽が病室を染める。

 その光の中で、大輔は少し照れくさそうに笑った。

 「だから大丈夫だ」

 それから一年後。

 大輔は静かに旅立った。

 葬儀の日。

 陽介は涙が止まらなかった。

 親友を失った現実を受け入れられなかった。

 もう会えない。

 もう笑い合えない。

 その事実だけが胸を締め付けた。

 そして季節は巡った。

 初夏。

 陽介は久しぶりにあの公園を訪れた。

 ヤマボウシの木は変わらず立っていた。

 白い花が枝いっぱいに咲いている。

 風が吹いた。

 花が揺れる。

 まるで誰かが手を振っているようだった。

 陽介は木の下に腰を下ろした。

 見上げると、無数の花が空へ向かって広がっている。

 どの花も支え合うように咲いている。

 その姿を見ているうちに、ふと思った。

 友情とは、いつも一緒にいることではないのだろう。

 離れていても。

 会えなくなっても。

 心のどこかで相手を支え続けること。

 長い年月をかけて育ち、大きな枝を広げるヤマボウシのように。

 季節が変わっても変わらない絆のことなのだ。

 ヤマボウシには「永続性」という花言葉もある。

 きっとそれは、こういう意味なのだろう。

 時を超えて残る想い。

 失われることのない絆。

 そして「返礼」。

 陽介は静かに微笑んだ。

 自分はたくさんのものを大輔から受け取っていた。

 勇気も。

 優しさも。

 笑顔も。

 それらは今も自分の中に生きている。

 だからこそ、これからは自分が誰かに返していけばいい。

 それが親友への返礼なのかもしれない。

 風が吹いた。

 白い花が陽の光を受けて輝く。

 陽介は空を見上げる。

 青空の向こうに、大輔の笑顔が浮かんだ気がした。

 ――ありがとう。

 心の中でそう呟く。

 するとヤマボウシの枝が揺れた。

 まるで返事をするように。

 友情は終わらない。

 それは季節を超え、時を超え、人の心の中で咲き続ける。

 ヤマボウシの白い花のように。

 静かに、優しく、そしていつまでも。

3月28日、5月18日、30日、6月12日の誕生花「ライラック」

「ライラック」

基本情報

  • 和名:ライラック(またはリラ)
  • 学名Syringa vulgaris
  • 英名:Lilac
  • 科名/属名:モクセイ科/ハシドイ属(Syringa)
  • 原産地:ヨーロッパ南東部
  • 開花時期:4月~6月(地域により異なる)
  • 花の色:紫、白、ピンク、青など
  • 香り:甘く爽やかな香り(香水にも使用される)

ライラックについて

特徴

  • 落葉性の低木または小高木で、庭木や街路樹として人気があります。
  • 穂状の房状に小花が密集して咲く姿が特徴で、遠くからでも存在感があります。
  • 耐寒性が強く、寒冷地でもよく育ちます。
  • 花だけでなく、芳香のある花の香りも大きな魅力。
  • 園芸品種が非常に多く、世界中で観賞用に栽培されています。

花言葉:「友情」

イラックにはいくつかの花言葉がありますが、「友情」という花言葉は主に紫のライラックに結びついています。

● 由来の背景

  • ライラックは、春の訪れと共に咲くため、新しい出会いや人間関係の始まりを象徴します。
  • 一つひとつの花は小さいですが、集まって咲くことで強い絆やつながりを感じさせるため、友情や親しみの象徴とされています。
  • ヨーロッパでは、古くから友人との再会や別れの際の贈り物としてライラックが使われてきました。

● 他の花言葉と関係

  • 紫のライラック:「友情」「思い出」「初恋」
  • 白いライラック:「無邪気」「青春の喜び」

「春、紫にほどける」

駅前のロータリーにある古い公園には、一本のライラックの木がある。
私と千紘が初めて出会ったのも、その木の下だった。

四月の始まり、大学の入学式の帰り道。人混みに疲れて、私はベンチに腰を下ろした。花の香りに気づいて見上げると、小さな紫の花がこぼれるように咲いていて、その隣に同じように座っていたのが千紘だった。

「ライラック、好きなんだよね。紫は友情の色なんだって」

初対面なのに、そんなことを自然に言える人だった。
それがきっかけで、私たちはすぐに仲良くなった。

一緒に授業を受け、レポートを書き、カフェで何時間も話した。笑ったり泣いたり、特別なことがあったわけじゃない。でも、いつも一緒にいた。

春になるたび、あのライラックの木の下で待ち合わせていた。咲き始めた紫の花を見上げながら、変わっていく自分たちを少しだけ誇らしく思った。

だけど、大学四年の春。
就職を機に、千紘は遠くの街へ行くことになった。

「最後に、ライラック見て帰ろっか」
彼女はそう言って、いつものように駅前の公園に誘ってくれた。

ライラックは、ちょうど満開だった。風が吹くたびに、花の香りがふわっと鼻先をかすめた。

「これ、あげる」
千紘が差し出したのは、小さな紫のライラックの花束だった。

「花言葉、覚えてる? 友情。ずっと、ありがとう」
「……うん。私こそ」

別れ際、千紘は笑って言った。
「友達ってさ、離れても続くんだよ。花が咲く季節になったら、思い出すでしょう?」

それから数年。
毎年春が来るたびに、私はあの公園へ足を運ぶ。
今ではスマホ越しに「咲いたよ」と送り合うだけだけれど、それでも十分だ。

今年もライラックは変わらず、優しい紫にほどけていた。
それを見上げながら、私はそっと微笑んだ。

「また、会おうね。あの頃みたいに」

そして、香りとともに、春が胸に満ちていった。

3月24日の誕生花「コブシ」

「コブシ」

基本情報

  • 和名:コブシ(辛夷)
  • 学名:Magnolia kobus(Magnolia praecocissima)
  • 科名/属名:モクレン科/モクレン属
  • 分類:落葉高木
  • 原産地:日本・韓国(済州島)
  • 開花時期:3〜4月
  • 花色:白(外側が淡いピンクを帯びることもある)
  • 別名:タウチザクラ(田打桜)

コブシについて

特徴

  • 早春、葉が出る前に白い大きな花を咲かせる
  • 花びらは6枚前後で、やや厚みがあり上向きに開く
  • つぼみや若葉に独特の香りがある
  • 成長すると高さ10〜20mほどになる高木
  • 自然林や公園、庭木として広く親しまれている
  • 開花が農作業(田打ち)の目安とされてきた


花言葉:「友情」

由来

  • まだ寒さの残る早春に、他の花に先がけて咲く姿が、人の心に寄り添う存在として重ねられたことから
  • 派手さはないが、毎年変わらず花を咲かせる安定した姿が、長く続く信頼関係=友情を象徴すると考えられたため
  • 山野に自然に根付き、人の暮らしのそばで静かに咲き続けてきたことが、飾らない真心のつながりを連想させたため

「白い花の約束」

 春にはまだ遠い、冷たい風の残る朝だった。空はどこか鈍く、光もやわらかさを取り戻しきれていない。そんな中で、一本の木だけが、まるで季節を少し先取りしたかのように白い花を咲かせていた。

 コブシの花だった。

 駅へ向かう坂道の途中、その木は昔から変わらずそこに立っている。背の高い幹、空に向かって広がる枝。そして、葉もないまま咲く白い花々。どこか控えめで、けれど確かにそこにある存在。

 遥は足を止め、しばらくその花を見上げていた。

 「今年も、ちゃんと咲いたね」

 そう呟いた声は、思ったよりも小さく、空気に溶けていった。

 この場所には、もう一人の記憶がある。

 高校の帰り道、いつもここで立ち止まっていたあの人。友達というには少し距離があって、でも他人というには近すぎた存在――結衣。

 「この花、好きなんだよね」

 ある日、結衣はそう言って、コブシの花を見上げていた。まだ肌寒い夕方で、二人ともコートの襟を立てながら、並んで立っていた。

 「なんで?」
 遥がそう尋ねると、結衣は少し考えてから、ふっと笑った。

 「一番に咲くから。まだ寒いのに、ちゃんと咲くでしょ。なんか……待っててくれる感じがするんだよね」

 その言葉の意味を、あのときの遥は深く考えなかった。ただ、白い花が風に揺れているのを眺めていた。

 それから二人は、それぞれ別の道へ進んだ。

 大きな喧嘩をしたわけでもない。特別な出来事があったわけでもない。ただ、進学や環境の変化に流されるように、少しずつ会わなくなった。連絡も途切れ、気づけば名前を思い出すことさえ、どこか遠いものになっていた。

 それでも、この季節になると、なぜかここへ足が向く。

 今日もまた、そうだった。

 白い花は、去年と同じように咲いている。いや、もしかしたら一昨年とも、その前とも変わらないのかもしれない。

 変わっていないのは、花のほうだ。

 遥はゆっくりと近づき、落ちていた一枚の花びらを拾い上げた。指先に伝わる、わずかな厚みと冷たさ。

 「……ねえ、覚えてるかな」

 誰に向けたのかわからないまま、言葉がこぼれる。

 結衣は、この花を見て何を思っていたのだろう。あのときの「待っててくれる感じ」という言葉は、ただの印象だったのか、それとも何かを託していたのか。

 答えはもう、どこにもない。

 けれど――

 風が吹き、枝がわずかに揺れる。白い花が、かすかに触れ合う音がした。

 それはまるで、言葉にならなかった会話の続きを、今もどこかで交わしているようだった。

 コブシの花は、毎年同じように咲く。誰かに見られても、見られなくても。褒められても、気づかれなくても。ただ、そこにあるべき時に、そこにある。

 派手ではない。目立つわけでもない。

 けれど、その変わらなさが、どれほどの安心を与えるのかを、遥は今になって知った。

 「……そういうことだったのかな」

 ぽつりと呟く。

 特別な約束を交わしたわけではない。永遠を誓ったわけでもない。それでも、あの時間は確かにそこにあった。そして、その記憶は消えずに、こうして今もここへ自分を連れてきている。

 それだけで、十分なのかもしれない。

 友情とは、強く握りしめるものではなく、ただそこに在り続けるものなのだと。

 遠く離れても、言葉を交わさなくなっても、ふとした瞬間に思い出せるなら、それはまだ途切れていないのだと。

 遥は花びらをそっと元の場所へ戻した。

 見上げた空は、さっきよりも少しだけ明るくなっている。冬の色の中に、ほんのわずかな春の気配が混じり始めていた。

 「……また来るね」

 今度ははっきりとした声でそう言って、遥は歩き出した。

 返事はない。それでも構わなかった。

 コブシの花は、きっとまた来年もここで咲く。

 何も変わらない顔で、けれど確かにそこに在るものとして。

 そしてそのとき、もしまたここへ来ることがあれば――

 きっと同じように、そっと心に触れてくるのだろう。

 まだ寒さの残る朝に、誰かの記憶と重なりながら。

 白い花は、今日も静かに咲いている。

 それは、言葉にしなくても続いていく関係のように。

 目には見えなくても、確かにそこにある「友情」のかたちとして。

3月7日の誕生花「ニリンソウ」

「ニリンソウ」

基本情報

  • 和名:ニリンソウ(二輪草)
  • 学名Anemone flaccida
  • 科名:キンポウゲ科
  • 属名:イチリンソウ属
  • 原産地:日本、中国、朝鮮半島
  • 開花時期:4月~5月(春)
  • 草丈:15~30cmほど
  • 生育環境:山地の林床、湿り気のある半日陰

ニリンソウについて

特徴

  • 一本の茎から二輪の花を咲かせることが多いことが名前の由来
  • 白い5枚前後の花弁のように見える萼(がく)を持つ可憐で清楚な花
  • 春の山林の地面を覆うように群生して咲くことが多い
  • 葉は深く切れ込みが入り、柔らかく繊細な印象を与える
  • 早春に咲き、木々が葉を広げる前のやわらかな光の中で花を開く


花言葉:「友情」

由来

  • 一本の茎から二輪並んで咲く姿が、寄り添う二人を思わせたため
  • 同じ方向を向いて咲く様子が、互いに支え合う関係を連想させたため
  • 野山で群れて咲く姿が、仲間とともに過ごす穏やかな時間と重ねられたため
  • 派手さはないが、春の林に静かな彩りを添える花として、温かい人間関係の象徴とされたため
  • 互いに離れすぎず、近すぎず並ぶ花姿が、自然体で続く友情の形を表していると考えられたため


「並んで咲く、ということ」

 春の山道は、まだ少しだけ冬の気配を残している。
空気は澄んでいるが、頬に触れる風にはやわらかな温度が混じり始めていた。

木々の枝には新しい芽が膨らみ、足元の土は湿り気を帯びている。枯れ葉の間から、少しずつ春の色が顔を出していた。

その日、由香は久しぶりにこの山道を歩いていた。

小学生の頃、よく通った道だ。学校帰りに友達と寄り道をしながら、名前も知らない草花を眺めたり、石を拾ったりしていた場所。

社会人になってからは、ほとんど来ることがなかった。忙しさに追われる日々の中で、この場所のことを思い出す余裕すらなかったのかもしれない。

けれど今日は、なぜかここへ来たくなった。

理由は、はっきりしているようで、はっきりしない。
ただ一つ確かなのは、誰かの顔が、心の奥に浮かんでいたことだった。

道の途中、少し開けた場所に出た。

そこは、小さな林の隙間で、やわらかな光が地面に落ちている。子どもの頃、よく立ち止まっていた場所だ。

由香はふと足を止めた。

白い花が、咲いていた。

地面のあちこちに、小さな白が散らばっている。近づいてよく見ると、それは一輪ではなかった。

一本の茎から、二つの花が咲いている。

ニリンソウだった。

二つの花は、並ぶようにして咲いている。
どちらが主役というわけでもなく、同じ高さで、同じ方向を向いている。

由香はしゃがみ込み、しばらくその花を眺めた。

思い出したのは、小学生の頃のことだった。

「見て、二つ咲いてる」

そう言って、花を指差したのは美咲だった。

放課後、ランドセルを背負ったままこの場所に来て、二人で花を探していた。

「なんで二つなんだろうね」

「友達だからじゃない?」

美咲はそう言って笑った。

子どもの言葉だったけれど、そのときの由香は、妙に納得したのを覚えている。

それから二人は、ニリンソウを見つけるたびに「友達の花」と呼ぶようになった。

中学に上がるころまでは、よく一緒に遊んでいた。

けれど、少しずつ生活は変わっていった。

部活が違い、通う高校も違った。連絡は取っていたものの、会う機会は次第に減っていった。

大人になれば、なおさらだった。

どちらかが遠くへ引っ越したわけでもない。仲が悪くなったわけでもない。

ただ、時間が過ぎただけだった。

それでも、完全に途切れたわけではない。

年に一度くらい、ふと思い出して連絡をする。短いメッセージを送り合うだけのことも多い。

それでも、不思議と気まずさはない。

由香は目の前のニリンソウを見つめた。

二つの花は、寄り添うように咲いている。

けれど、触れ合うほど近くはない。
離れてしまうほど遠くもない。

ちょうどいい距離だった。

春の林には、ニリンソウがたくさん咲いている。
あちらにも、こちらにも。

一つの茎に、二つの花。
同じ形で、同じように並んでいる。

けれど、どの花も少しずつ違っている。

大きさも、向きも、開き方も。

それでも、どれも自然に並んでいた。

無理に寄り添っているようには見えない。
けれど、確かに一緒に咲いている。

由香はふっと笑った。

友情とは、こういうものなのかもしれない。

ずっと隣にいなくてもいい。
毎日連絡を取り合わなくてもいい。

同じ場所にいなくても、同じ時間を過ごしていなくても。

それでも、どこかで同じ方向を向いている。

必要なときには、思い出せる。

そんな関係。

風が吹いた。

ニリンソウが、揺れる。

二つの花は、同じように揺れていた。

どちらかが引っ張るわけでもなく、どちらかが支えるわけでもない。

ただ、同じ風を受けている。

由香はポケットからスマートフォンを取り出した。

少し迷ってから、メッセージを打つ。

「久しぶり。今日、ニリンソウを見つけたよ」

送信ボタンを押すと、画面が静かに暗くなる。

返事がすぐ来るとは思っていない。
来なくても、きっとそれはそれでいい。

春の林は、静かだった。

鳥の声が遠くで響き、風が木々の間を抜けていく。

足元には、ニリンソウが咲いている。

二輪の花は、同じ方向を向いている。

寄り添いすぎず、離れすぎず。

自然な形で並びながら、春の光の中で静かに咲いていた。

友情とは、きっとこういうものなのだ。

特別な言葉がなくてもいい。
いつも一緒にいなくてもいい。

ただ、同じ季節のどこかで、同じ光を受けている。

それだけで、十分なのだと思える関係。

由香は立ち上がった。

もう少し歩いてみようと思った。

林の奥には、まだたくさんのニリンソウが咲いているはずだ。

春の光の下で、静かに並びながら。

2月14日、17日の誕生花「ミモザアカシア」

「ミモザアカシア」

ミモザアカシア(Acacia dealbata)**は、マメ科アカシア属の常緑高木で、鮮やかな黄色い花が特徴的な植物です。ミモザと呼ばれることが多いですが、正式には「ミモザアカシア」や「銀葉アカシア」とも呼ばれます。

ミモザアカシアについて

科名:マメ科アカシア属
原産地:オーストラリア

🌼特徴

  • 花期:2月~4月ごろ
  • 花色:鮮やかな黄色
  • :銀灰色がかった細かい葉が特徴的
  • 樹高:5~10mほど成長する

💛 ミモザの日(国際女性デー)

3月8日は「国際女性デー」とされ、イタリアでは「ミモザの日」として女性にミモザの花を贈る習慣があります。感謝や敬意を込めて贈られることが多いです。

🌱 育て方

  • 日当たり:日当たりの良い場所が◎
  • :水はけのよい土を好む
  • 耐寒性:比較的強いが、寒冷地では冬の防寒対策が必要
  • 剪定:花後に剪定すると樹形を整えやすい

春の訪れを告げるミモザは、庭木やドライフラワーとしても人気があります!


花言葉:「友情」

ミモザアカシアの花言葉は「友情」 です。
この花言葉には、「大切な友人への思いやり」や「絆を大切にする心」が込められています。

特に 3月8日の「ミモザの日」(国際女性デー) には、イタリアをはじめとする国々で、感謝や友情の気持ちを込めてミモザの花を贈る習慣があります。

やさしく明るい黄色い花が、友情の象徴としてふさわしいですね!


「ミモザの約束」

春の訪れを告げるように、ミモザの花が風に揺れていた。鮮やかな黄色い小さな花が、太陽の光を浴びて輝いている。

「今年も咲いたね。」

優奈は、幼なじみの莉子と並んでミモザの木を見上げた。

「うん。ミモザの花言葉って知ってる?」

莉子が問いかける。優奈は微笑んで、そっと呟いた。

「友情、でしょ?」

「そう。だから、毎年この花が咲くたびに、私たちがずっと友達でいられるようにって思うんだ。」

莉子の言葉に、優奈の胸がじんわりと温かくなった。

二人が初めて出会ったのは、小学校の春だった。転校してきた優奈に、最初に話しかけてくれたのが莉子だった。おそるおそる差し出した手を、莉子は何のためらいもなく握り返してくれた。あの日から、二人はずっと一緒だった。

しかし、高校卒業が近づくにつれ、進路の違いから少しずつすれ違いが増えた。お互い忙しくなり、以前のように頻繁に会うこともなくなった。それでも、3月8日だけは特別な日だった。

「ねえ、来年もまたここでミモザを見ようね。」

莉子がそう言うと、優奈は力強く頷いた。

「もちろん。約束だよ。」

手を重ねた瞬間、ミモザの花がはらはらと舞い落ちた。それはまるで、二人の友情をそっと祝福してくれているようだった。