「カンガルーポー」
カンガルーポー(Kangaroo Paw)は、オーストラリア原産のユニークな形をした花です。細長くてふわふわした花びらが、カンガルーの前足(paw)に似ていることからこの名前がつけられました。
カンガルーポーについて
科名:ハエモドルム科(Haemodoraceae) / Anigozanthos(アニゴザントス属)
原産地:オーストラリア
- 開花時期:春~夏
- 花色:赤、黄、オレンジ、ピンク、緑 など
カンガルーポーの楽しみ方
- 庭植え・鉢植え:乾燥に強く育てやすいので、ガーデニングに向いています。
- 切り花・ドライフラワー:長持ちしやすいため、フラワーアレンジメントにも人気。
- 花束・プレゼント:「不思議」という花言葉を添えて、個性的な贈り物としても◎。
ユニークな見た目と鮮やかな色が魅力のカンガルーポーは、観賞用としても楽しめる美しい花ですね! 🌿✨
花言葉:「不思議」
カンガルーポーの花言葉の一つは「不思議」です。その理由は、ほかの花にはない独特な形状や質感にあると言われています。まるで動物の足のような形をしており、近くで見るとビロードのような細かい毛が生えています。そのユニークさから「神秘的」「不思議」といった印象を与えるのでしょう。
また、ほかの花言葉として 「陽気」「分かち合う」「可能性」 などもあります。
「不思議の庭のカンガルーポー」
小さな町のはずれに、一軒の古びた庭園があった。そこは何十年も手入れされておらず、荒れ果てたまま放置されていたが、それでも庭の奥には色鮮やかな花々が咲き続けていた。とりわけ、門の近くに群生していたカンガルーポーは異質な存在感を放ち、赤や黄色の奇妙な花が不気味に風に揺れていた。
町の子どもたちは、誰もその庭に近づこうとしなかった。「あそこには魔女が住んでいる」 そんな噂がささやかれていたからだ。しかし、ある日、一人の少女が庭の前で足を止めた。
彼女の名前は ルナ。好奇心が人一倍強く、いつも町の大人たちが語る「不思議なこと」に心を奪われていた。彼女はゆっくりと門を押し開き、庭の中へと足を踏み入れた。
「これは……本当に花なの?」
ルナはカンガルーポーの花をじっと見つめた。まるで動物の手のように伸びた花びら。その表面には、ビロードのような細かい毛が生えていた。そっと指で触れてみると、ふわりと温かい感触がした。まるで生き物のように。
「面白いわね」
すると、不意に背後から声がした。
「その花に魅入られたのは、あなたが初めてじゃないわ」
振り返ると、そこには年老いた女性が立っていた。長い灰色の髪を後ろで束ね、優しい目をした女性。町の人々が「魔女」と呼ぶ人物だった。
「あなたは……?」
「私はただの庭の管理人よ。でもね、このカンガルーポーには秘密があるの」
女性は静かに語り始めた。
「この花はね、触れた者の“想い”を映し出すのよ」
「想い?」
ルナはもう一度カンガルーポーに触れた。すると、ふわりと風が吹き、花が優しく光を放った。彼女の心に浮かんだのは、幼い頃の思い出。亡くなった祖母と一緒に遊んだ庭の景色だった。
「おばあちゃん……?」
「あなたの大切な記憶が、花を通して形になったのよ」
女性は微笑んだ。
「この庭に咲く花は、みんな何かしらの想いを秘めているの。だからこそ、不思議な魅力を持っているのよ」
ルナはしばらく花を見つめていたが、やがて顔を上げて言った。
「もっと、この庭のことを知りたいわ」
「ふふ、それは素敵ね。じゃあ、まずは花の世話を手伝ってくれる?」
こうしてルナは「不思議の庭」の小さな管理人となった。カンガルーポーの秘密を知った彼女は、それからも何度も花に触れ、その度に新しい記憶や感情に出会った。
町の人々は相変わらず噂を続けていたが、ルナだけは知っていた。この庭が、ただの魔法の場所ではなく、心の奥に眠る大切なものを映し出す場所なのだということを。
そして、カンガルーポーは今日も風に揺れながら、誰かの想いを静かに映し出している——。