9月19日の誕生花「サルビア」

「サルビア」

基本情報

  • 学名:Salvia
  • 分類:シソ科・サルビア属(アキギリ属)
  • 原産地:熱帯アメリカを中心に、世界各地に分布
  • 草丈:30cm〜1m程度(品種により幅広い)
  • 花期:初夏〜秋(5〜10月頃)
  • 花色:赤・紫・青・白など多彩
  • 特徴:園芸用の一年草として知られる「サルビア・スプレンデンス(Scarlet sage)」が特に有名。鮮やかな赤い花穂を長く咲かせ、公園や花壇を彩る代表的な花。多年草種や薬用種もあり、「セージ」と呼ばれるハーブ類も広義にはサルビア属に含まれる。

サルビアについて

特徴

  1. 花穂に並ぶ花
    長い花穂に小花がぎっしりと並んで咲く。群生すると赤い炎のように見え、強い存在感を放つ。
  2. 丈夫で育てやすい
    病害虫に強く、乾燥や暑さにも比較的耐える。街中の花壇や学校の植え込みによく利用される。
  3. 多様性のある属
    世界中に900種以上があり、観賞用だけでなく、ハーブ(セージ類)、薬用、蜜源植物としての利用価値も高い。

花言葉:「尊敬」

由来

サルビアには「尊敬」「知恵」「家族愛」などの花言葉がありますが、その中で「尊敬」という意味が与えられた背景には、以下のような由来があるとされています。

堂々とした花姿
真っ赤な花穂がまっすぐ伸びる姿は、威厳や強さを感じさせ、敬意を抱かせるイメージにもつながっている。

古代からの薬効と人々の敬意
サルビア属の中には薬用として利用されるものが多く、特に「セージ(Salvia officinalis)」は古代ギリシャ・ローマ時代から万能薬として珍重された。
→ 健康や命を守る植物として、敬意を込めて「尊敬」という意味が結びついた。

学名 Salvia の意味
学名 Salvia はラテン語の「salvare(救う)」に由来する。
→ 「人を救う=尊い存在」と解釈され、花言葉に反映された。


尊敬の赤 ―サルビアの庭にて―

夏の終わり、古い学舎の裏庭に、赤いサルビアが一列に並んで揺れていた。
 陽菜(ひな)は、その光景を見つめながら、胸の奥に小さな痛みを覚えていた。ここは恩師・佐伯先生がいつも手入れをしていた花壇だった。

 「人はね、花に教えられることが多いんだよ」
 先生は口癖のようにそう言っていた。とくにサルビアを指して、「これは尊敬の花だ」とよく語ってくれた。

 ――尊敬。
 陽菜にとって、その言葉は重かった。
 先生は誰に対しても真摯で、困っている生徒を見捨てず、時に厳しく、時に優しく導いてくれる存在だった。陽菜が進路に悩んでいたときも、何時間も付き合ってくれた。

 だが、もう先生はいない。去年、突然の病で世を去ったのだ。
 残されたのは、この赤い花壇だけ。夏の日差しに燃えるように咲き誇るその姿は、陽菜にとって痛みと誇りの象徴だった。

 花壇の前にしゃがみこむと、土の匂いがふわりと漂った。ふと先生が話してくれた由来を思い出す。

 ――サルビアの学名は「salvare」、救うという意味なんだ。
 ――古代から薬として使われ、人々を助けてきた。だからこそ尊敬という花言葉を持つんだよ。

 先生の声が耳に蘇る。
 救う。尊い。
 その言葉は、まるで陽菜自身に課せられた宿題のように思えた。

 「私も、誰かを救える人になれるのかな……」

 ぽつりと呟くと、風が吹き、サルビアの群れが揺れた。炎のような赤が一斉に揺らめき、答えるように輝いて見えた。

 陽菜は立ち上がり、スマホを取り出して大学の出願サイトを開いた。先生が最後に勧めてくれた進路――医療の道。ずっと迷っていたが、ようやく指が決意をもって動いた。

 「先生、見ていてください。私もサルビアのように、人を救える人になります」

 赤い花穂が空に向かって伸びる。
 その姿は、尊敬すべき人の生き方そのものであり、これから陽菜が歩むべき未来の象徴でもあった。

 夏の終わりの風が、鮮やかな炎の群れを揺らし、彼女の背中を押していた。