「ハナミズキ」

🌸 基本情報
- 学名:Cornus florida
- 英名:Flowering dogwood
- 科名:ミズキ科(Cornaceae)
- 原産地:北アメリカ
- 開花時期:4月中旬〜5月
- 樹高:3〜10メートル程度
- 花色:白、ピンク、赤など(実際の花は中心部の小花で、目立つのは総苞片)
ハナミズキについて

🌿 特徴
- 花のように見える部分は総苞片:ハナミズキの花のように見える部分は、実は「花びら」ではなく「総苞片(そうほうへん)」と呼ばれる葉の一部で、中心部に小さな本当の花が集まっています。
- 美しい紅葉:秋には葉が赤やオレンジに色づき、四季折々の姿を楽しめます。
- 赤い実がなる:秋には赤く小さな実がつき、野鳥にも人気です。
- 街路樹や庭木として人気:日本では街路樹や公園樹として広く利用されています。
花言葉:「私の愛を受け止めてください」

💌 花言葉「私の愛を受け止めてください」の由来
この花言葉の由来には、以下のようなエピソードや象徴が関係しています:
- 贈答の歴史:ハナミズキは1912年に日本がアメリカへ桜を贈った返礼として、1915年にアメリカから日本に贈られた木です。国と国との友情の象徴であり、「思いを届ける」という意味合いが込められています。
- 咲き方の象徴性:ハナミズキの花は十字型に広がって咲くことから、キリスト教圏では十字架や献身の象徴とされることもあり、「無償の愛」や「献身的な思い」のイメージがあります。
- ロマンチックな印象:春に咲き誇る美しい花が、見る人の心を惹きつけ、「愛を伝える」ように感じられることから、「私の愛を受け止めてください」という花言葉が生まれたとされています。
「ハナミズキの約束」

四月の終わり、春の風が柔らかく吹き抜ける並木道。満開のハナミズキが優しく揺れ、その白く広がる花びらは、まるで空へ向かってそっと手を差し伸べているようだった。
咲は高校三年の春を迎えていた。進学を控えた静かな日々の中で、心に秘めた思いが一つあった。それは、同じクラスの蓮への想い。二年間、となりの席で過ごしてきたけれど、咲は一度も自分の気持ちを伝えられずにいた。
「このまま何も言えずに、卒業してしまうのかな……」
そんな不安がよぎる中、ある日、担任の先生がクラス全員に言った。
「来週、ハナミズキ並木の下で卒業記念の写真を撮るから、全員時間に遅れないようにね」
その瞬間、咲の中で一つの決意が芽生えた。
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写真撮影の当日。咲はいつもより少し早く並木道に着いた。風に揺れる花を見上げながら、彼女はあるエピソードを思い出していた。
かつて日本がアメリカに桜を贈ったお返しに、ハナミズキが贈られたこと。遠く離れた地から思いが届くように、この花には「私の愛を受け止めてください」という花言葉があると、本で読んだのだ。
「……だったら、この気持ちも届くかな」
ポケットの中の白い封筒をぎゅっと握る。中には、丁寧に綴られた一通の手紙。ずっと言えなかった想いを、咲は言葉に託した。
「咲?」
声がして振り返ると、そこには蓮がいた。少し驚いたような顔で、でもすぐにいつもの優しい笑顔に戻る。

「早いな、咲」
「うん……ちょっと、渡したいものがあって」
咲はためらいながらも、封筒を差し出した。
「これ、読んでほしいの。今日じゃなくてもいいから……でも、読んでくれたら嬉しい」
蓮は一瞬目を見開き、ゆっくりとそれを受け取ると、うなずいた。
「……わかった。大事に読むよ」
風がまたふわりと吹いて、二人の間にハナミズキの花びらが舞い降りた。白い花が空からの返事のように降ってくる。
咲の心には、少しだけ春の陽射しのような温かさが広がった。
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数日後。放課後の教室で、蓮が咲に声をかけた。
「手紙、読んだよ」
咲は黙ってうなずく。胸が高鳴る。
「……ありがとう。受け取ったよ、咲の気持ち。俺も……ずっと同じ気持ちだった」
目の前の蓮の笑顔が、まるで満開のハナミズキのように咲いて見えた。
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その春、咲と蓮は並木道をゆっくりと歩いた。白い花の下で手をつなぎながら、「私の愛を受け止めてください」という想いが、確かに届いたことを感じていた。