「ラークスパー」

基本情報
- 学名:Delphinium ajacis
- 科・属:キンポウゲ科・デルフィニウム属
- 原産地:南ヨーロッパ、地中海
- 開花期:初夏〜夏(5〜6月頃)
- 花色:青・紫・ピンク・白など
- 草丈:品種によって30cm~2m以上
- 英名の由来:「Larkspur」は英語でヒバリ(Lark)の足の爪(Spur)を意味し、花の形がヒバリの足に似ていることから。
- 特徴:古くから切り花や花壇用として人気があり、特に背の高い品種は庭園の背景やボーダーガーデンに重宝されます。
ラークスパーについて

特徴
- 花の形
花の後ろに「距(きょ)」と呼ばれる細長い突起があり、それがヒバリの爪に似ていることが名前の由来です。 - 鮮やかなブルー系統の花色
青系の花が豊富で、涼しげで澄んだ印象を与えます。ガーデニングでは夏の空や水を思わせる色彩効果があります。 - 繊細で風に揺れる立ち姿
細長い茎の先に小花を穂状に多数咲かせるため、軽やかで涼しげな印象を与える植物です。 - 有毒植物
全草にアルカロイドを含み、誤食すると中毒を起こすことがあるため注意が必要です。
花言葉:「軽やかさ」

ラークスパーの花言葉「軽やかさ」は、以下のような特徴から生まれたと考えられます。
- 風に揺れる柔らかい花穂
細長い茎に小花が集まって咲き、そよ風にふわりと揺れる姿が、まるで軽やかに舞うように見えることから。 - 上に向かって伸びるシルエット
細く伸び上がる茎の先に、軽やかに咲く花々が並ぶ様子が、天へ軽く舞い上がるイメージを連想させます。 - ヒバリ(Lark)の連想
英名の「Larkspur」に含まれる「Lark(ヒバリ)」は、空高く舞い上がり軽やかにさえずる鳥。このイメージと花の立ち姿が重なり、「軽やかさ」の花言葉につながったといわれます。
「空へ舞う青」

梅雨明けの庭に、ラークスパーが咲きそろっていた。透き通るような青い花穂が、夏の光を受けて揺れている。その風景を前に、私はふと立ち止まった。
祖母の家の庭は、子どものころの私にとって、秘密基地のような場所だった。いつも祖母は背の高い花の並ぶ庭の奥で、少し猫背になって土をいじりながら、「この花はヒバリの足みたいな形をしているのよ」と笑っていた。
当時の私は、花の名前も意味も気にしたことがなかった。ただ、祖母の後ろ姿と風に揺れる花々の色彩が、やわらかい記憶として胸に残っている。

祖母が亡くなって三年。誰も手入れをしなくなった庭は、すっかり野性味を帯びていた。だけど、今年も青いラークスパーが、まるで空を仰ぐように茎を伸ばしている。あの頃と同じように、風に合わせて揺れていた。
私はしゃがみ込み、花の先を指でそっとなぞる。
──軽やかさ。
いつか花屋で見た本に、ラークスパーの花言葉がそう記されていたのを思い出す。理由は、風にそよぐ花穂や、細くまっすぐに天へ伸びる姿、そしてヒバリのように空高く舞い上がる英名の由来にあるという。

祖母はきっと、この花に自分を重ねていたのかもしれない。幼い私を見守りながら、軽やかに笑い、空に向かうようなまっすぐな心を持っていた。
庭の奥、錆びたベンチに腰かけると、ふわりと風が吹いた。青い花々が、一斉に羽ばたく鳥のように揺れた気がした。その瞬間、祖母の声が微かに聞こえた気がした。
「空を見なさい。泣いてばかりじゃなくて、もう少し軽やかに生きなさい」
私は空を見上げた。真夏の光がまぶしくて、自然と笑みがこぼれた。
──軽やかさ。

その言葉が、今は不思議と胸にしみ込む。これからの人生をどう生きていくか、明確な答えはまだ見えない。だけど、心に何かが芽吹く感覚がある。
庭のラークスパーは風に揺れ続けていた。まるで「ほら、私たちみたいに軽くなればいい」と語りかけるように。
私は立ち上がり、花壇の雑草を一本抜いた。あの日祖母がそうしたように、青い花々の間を少しだけ整えてみた。
空に向かって舞う花穂を見上げると、未来が少しだけ明るく見えた。
ラークスパーの花は、今年も変わらず、軽やかに空へ手を伸ばしている。