8月4日の誕生花「フロックス」

「フロックス」

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基本情報

  • 学名Phlox
  • 科名:ハナシノブ科(Polemoniaceae)
  • 属名:フロックス属
  • 原産地:北アメリカ、シベリア
  • 開花時期:3月から11月(種によって異なる)
  • 主な種類:多年草の「オイランソウ(宿根フロックス)」、一年草の「ドラムモンドフロックス」など
  • 花色:赤、ピンク、白、紫、青、混色など多彩

フロックスについて

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特徴

  • 花が密集して咲く
    フロックスは、星型の小花がまとまって球状に咲く姿が特徴的です。群れて咲くことで、花壇や庭を一気に華やかにします。
  • 丈夫で育てやすい
    病害虫に強く、初心者でも育てやすい植物。乾燥や高温にも比較的耐性があり、ガーデニング向きです。
  • 芳香がある品種も
    特に多年草タイプ(宿根フロックス)は、ほんのり甘い香りを放つものもあり、夏の庭に涼やかさを添えます。
  • 種類と花期の幅広さ
    春に咲く品種から、真夏、晩秋まで楽しめるものまであり、長い期間ガーデンを彩ってくれます。

花言葉:「協調」

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フロックスの花言葉「**協調(Harmony / Agreement)」」は、主に以下のような花の性質や姿に由来すると考えられます:

● 小花が集まり、調和して咲く姿

フロックスは、一輪一輪は小さな花ですが、それが密集して球状や房状になって咲くため、まるで「調和のとれた集団」のように見えます。その姿が、人と人とが互いに譲り合い、うまく関係を築く「協調性」のイメージと重なります。

● 多色でありながら調和を乱さない

フロックスにはさまざまな花色がありますが、同じ株に複数の色が混ざって咲いても、どこか全体が調和して見える点も、「異なるものが共に美を作る=協調」の象徴となっています。

● 風に揺れながら咲く柔らかさ

強く主張しすぎることなく、風に揺れながら群れ咲く姿は、まるで周囲と呼吸を合わせるよう。目立たずとも調和を重んじる植物のように感じられます。


「フロックス通りの約束」

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 小さな坂道の途中に、ひっそりと咲く花壇がある。誰が世話をしているのかはわからないけれど、季節ごとに違う花が咲いて、通る人の足をふと止める場所だ。

 六月のある日、その花壇は淡いピンクや白、紫の星のような花でいっぱいだった。風が吹くたび、花はさわさわと揺れ、まるで内緒話でもしているように見える。

 その花が「フロックス」だと教えてくれたのは、毎朝そこに水をやっている老婦人だった。

 「これは“協調”の花言葉を持つのよ」

 彼女はにこやかに言った。

 「ほら、一輪一輪は小さいのに、こうしてまとまって咲くでしょう? まるで性格も年齢も違う人たちが、穏やかに並んで笑ってるみたいで、好きなの」

 その頃、私は新しい職場での人間関係に悩んでいた。立場も経験も違う同僚たちとうまくやれず、自分ばかりが浮いている気がしていた。

 「協調かあ……苦手です」

 私がそう漏らすと、老婦人はふと空を見上げて言った。

 「それは、“誰かに合わせる”って思ってるからかもしれないわね」

 「え?」

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 「“一緒に咲く”って、必ずしも自分を曲げることじゃないのよ。フロックスみたいに、それぞれの色や形のままで、そばにいる。それだけでいいの」

 私はその言葉を、何度も心の中で反芻した。

 翌日から、私は職場で少しだけ、相手の話をよく聞くようにした。無理に意見を合わせようとはせず、「そういう考え方もあるんだな」と思うようにした。

 すると不思議なことに、少しずつ空気が和らいでいった。

 会議のあと、先輩がコーヒーを差し出してくれた。後輩が「この資料、すごく分かりやすかったです」と言ってくれた。私は、いつの間にか“浮いている”感覚を忘れていた。

 数週間後、また花壇の前を通った。フロックスはそろそろ見頃を過ぎ、色あせ始めていた。

 「今日で最後かな」

 老婦人が言った。

 「でもまた来年、同じ場所で、同じように咲くわよ。まるで“また一緒にいようね”って約束するみたいに」

 私はその言葉に、小さくうなずいた。

 別々の色をまといながら、寄り添うように咲くフロックス。

 きっと私たち人間も、そうやって“協調”していけるのかもしれない。

5月2日の誕生花「キキョウナデシコ」

「キキョウナデシコ」

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基本情報

和名: キキョウナデシコ(P.drummondii)、クサキョウチクトウ(P.paniculata)、ツルハナシノブ(P.stronifera)、シバザクラ(P.subulata)
学名: Phlox
科名 / 属名:ハナシノブ科 / クサキョウチクトウ属(フロックス属)
分類 :ナデシコ科 ナデシコ属
原産地 :日本、中国、朝鮮半島など
開花時期 :初夏〜秋(6月〜9月)
花色 :淡いピンク〜赤紫、白など
草丈: 約30〜80cm

キキョウナデシコについて

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特徴

  • 花弁が細かく裂け、ふんわりとした繊細な印象がある。
  • 名前に「キキョウ」とあるが、キキョウ(桔梗)とは直接の関係はなく、色や雰囲気が似ているためこの名がついたとされる。
  • 日本の秋の七草のひとつとしても知られる(ナデシコとして)。
  • 日当たりと水はけの良い場所を好む。
  • 観賞用として庭や野原に植えられることが多い。

花言葉:「協調」

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「協調」という花言葉は、キキョウナデシコ(またはナデシコ)の持つ柔らかくしなやかな姿、そして他の植物と自然に調和して咲く性質に由来します。

  • 繊細で主張しすぎない外見から、周囲との調和を大切にする姿勢を象徴。
  • 群生することが多く、他の花と共に美しさを引き立て合う様子が「協調性」を感じさせる。
  • 日本文化における「大和撫子」の美徳(控えめ、思いやり、調和)とも関係があると考えられています。

「撫子の咲く庭で」

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祖母の家の裏庭には、毎年夏になると、淡いピンク色のキキョウナデシコが揺れていた。風にそよぐその姿は、まるで遠い昔の誰かが笑っているように見えた。

 「この花はね、協調の花言葉を持ってるんだよ」

 小学三年生の夏、祖母が小さなスコップを片手にそう言った。私は土遊びの途中で手を止め、花をじっと見つめた。「協調ってなに?」

 祖母は少し考えてから言った。「自分だけ目立とうとせず、まわりと上手にやっていくこと。助け合って、心を寄せ合うことかな」

 そのときは、なんとなく分かったような、分からなかったような顔をしてうなずいた。でも今になって思えば、あの言葉は私の中に深く根を下ろしていたのだ。

 十年後、私は東京の大学に通い、四人部屋のシェアハウスで暮らしていた。地方から出てきた同年代の女の子たちと一緒に生活するのは、想像以上に気を使う。冷蔵庫の使い方、洗濯機の順番、深夜の音…。ささいなことがすぐに摩擦を生む。

 ある夜、私は一人だけリビングに残っていた。軽い言い合いのあと、空気は凍りついたままだった。

 「何も言わないって、結局逃げてるんじゃないの?」

 誰かの言葉が耳に残っていた。

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 けれどその時、ふと思い出したのは、あの裏庭で祖母が語った「協調」という言葉だった。主張しすぎず、でも黙りこくるでもなく、花のようにそっと寄り添うこと。そんなことが、人との関係でもできるだろうか。

 次の日、私は小さな花瓶に一輪のナデシコを差して、リビングのテーブルに置いた。説明は何もなかった。でも誰かがそれに気づいて、「きれい」とぽつりと呟いた。

 それがきっかけだった。少しずつ、皆の表情が和らいだ。お互いに譲り合うこと、感謝を言葉にすること、それが自然と生まれてきた。

 春休み、私は久しぶりに祖母の家に帰った。裏庭には、まだ冬の名残があったけれど、ナデシコの芽がいくつか顔を出していた。

 祖母は相変わらず穏やかに笑っていた。

 「ちゃんと咲いてるよ。協調の花は、ちゃんとね」

 私はナデシコのそばにしゃがみこみ、小さな芽にそっと触れた。しなやかで、けれど確かにそこに根を張っている。

 人と生きるということは、花のように寄り添うことだと思う。自分だけが咲こうとすれば、やがてその花は折れてしまう。けれど、共に咲くことを選べば、風の中でもきっと、互いを支え合って揺れることができる。

 ナデシコの咲く庭で学んだことは、今も私の心の中で、そっと花を咲かせている。