「ブルーベリー」

基本情報
- 学名:Vaccinium
- 科属:ツツジ科 スノキ属
- 原産地:北アメリカ
- 収穫時期:6月~9月上旬
- 種類:ハイブッシュ系、ローブッシュ系、ラビットアイ系など複数の栽培種がある
- 利用:果実は生食やジャム、ジュース、菓子などに用いられるほか、アントシアニンを多く含み、目の健康維持にも良いとされる
ブルーベリーについて

特徴
- 花:春に壺形の白~淡いピンク色の小さな花を下向きに咲かせる。
- 果実:夏に青紫色の果実をつける。ブルーム(白い粉状のワックス層)が表面を覆っており、鮮度の指標にもなる。
- 樹姿:低木で、樹高は品種により数十 cm から 2 m 前後まで。
- 性質:酸性土壌を好み、耐寒性が強い。品種間で受粉すると実つきがよくなる。
花言葉:「思いやり」

ブルーベリーの花言葉はいくつかありますが、特に「思いやり」が知られています。
その背景には次のような要素が関係しています。
- 家族で分け合う果実
小粒の実が房状にたくさん実る様子は、「みんなで分け合える恵み」を象徴し、思いやりや優しさを連想させる。 - 鳥や動物への贈り物
自然界では熟した果実を鳥や小動物が食べ、種子を広めていく。自分の実を他者に与える姿が「思いやり」と重なる。 - 健康を支える効能
古くから民間療法で目や体の健康を守る果実とされてきた。人の生活を助ける存在であることから、「相手を気遣う心=思いやり」の象徴となった。
「青い実の贈りもの」

山あいの小さな村に、古くから一本のブルーベリーの木があった。
村人たちはそれを「分かち合いの木」と呼んでいた。
初夏になると、小さな白い壺形の花を下向きに咲かせる。やがて花は実を結び、夏の光を浴びるごとに青紫に色づいていく。房のように連なった果実は、まるで「どうぞ」と差し出す手のように見えた。
ある年のこと。村のはずれに住む少年・陽太は、病気がちの祖母と二人で暮らしていた。祖母は視力が弱まり、外を歩くのも難しくなっていた。陽太は学校帰りに山へ行き、その木からこっそり実を摘んでは祖母に食べさせていた。

「ほら、おばあちゃん。今日もたくさん実っていたよ」
祖母は指先で小粒の実をつまみ、口に運ぶ。その酸っぱさと優しい甘さに、自然と笑みがこぼれる。
「ありがとね。お前の手が、森の恵みを運んできてくれるんだね」
ブルーベリーの実を食べ続けるうちに、祖母の体調は少しずつ落ち着きを取り戻していった。陽太はその変化に気づき、ますます大切に木を訪れるようになった。

やがて秋が近づくと、鳥たちが群れをなして木の実をついばみに来た。陽太は最初、その光景に心を痛めた。自分と祖母の分が減ってしまうと思ったからだ。しかし祖母は静かに言った。
「鳥たちだって、この実を待っていたんだよ。私たちと同じようにね」
その言葉に、陽太ははっとした。木は人だけでなく、鳥や動物にも実を差し出している。誰かを選ばず、惜しみなく分け与えているのだ。
冬が訪れるころ、祖母は息を引き取った。最後の夜、陽太の手を握りながらこう言った。
「お前はあの木のような人になりなさい。自分のためだけでなく、誰かのために実を結ぶんだよ」

それから年月が流れた。陽太は大人になり、村で子どもたちに学びを教えるようになった。夏が来ると、子どもたちを連れて山のブルーベリーの木へ行き、房の実を皆で分け合った。
「一粒は酸っぱいけれど、たくさん食べると甘くなるんだよ」
子どもたちは笑いながら、青い指先を見せ合った。
その光景を見つめながら、陽太は思う。――祖母が最後に残してくれた言葉の意味は、今になってようやくわかる気がする。木は花を咲かせ、実を与え、命をつなぐ。その姿こそが「思いやり」なのだ。
青紫の実をひとつ口に入れる。酸味と甘みが舌に広がるたび、祖母の笑顔が心に蘇った。
ブルーベリーは今年も、変わらぬ恵みを分け与えている。