6月17日の誕生花「リアトリス」

「リアトリス」

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基本情報

  • 和名:ユリアザミ(ユーリアザミ)
  • 学名Liatris spicata
  • 科名:キク科(Asteraceae)
  • 属名:リアトリス属(Liatris)
  • 原産地:北アメリカ
  • 開花時期:6月~9月
  • 草丈:60cm〜120cm
  • 花色:紫、ピンク、白など

リアトリスについて

Teodor BuhlによるPixabayからの画像

特徴

  • 花の形:花穂状(縦に長く伸びた穂状)で、細かい花が密集して咲く。上から下に向かって咲き進むという珍しい咲き方をする。
  • 茎・葉:茎は直立し、細長い葉が茎に沿って密につく。
  • 耐寒性・耐暑性:どちらも強く、初心者にも育てやすい。
  • 用途:花壇や切り花、ドライフラワーに人気。

花言葉:「燃える思い」

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リアトリスの花言葉のひとつが 「燃える思い」 です。この由来は主に以下の要素からきています:

  1. 花の形と咲き方
    • 真っすぐに天を突くような花穂の姿が、まるで炎が燃え上がるように見えるため。
    • 鮮やかな紫やピンク色が情熱を感じさせる。
  2. 咲き方の特徴
    • 上から下へと徐々に咲いていく様子が、内に秘めた感情が徐々に表に現れていく「燃え上がる思い」のように映る。
  3. 多年草としての生命力
    • 強い生命力で毎年咲き続ける様子が、一途で熱い想いを象徴しているとされる。

「燃える思い」

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夏の風が、古びた駅舎のホームを通り抜けていく。セミの鳴き声が響く中、陽子は一輪のリアトリスを握りしめて立っていた。

 紫色の花穂は、まるで空へ向かって燃え上がる炎のようだった。
 それは、あの日彼が最後にくれた花――「リアトリスっていうんだ」と微笑んで渡してくれた、たった一輪の花。

 陽子が彼――拓真と出会ったのは、ちょうど二年前のこの駅だった。

 大学の夏休みに田舎の祖母の家へ向かう途中、乗り換えのために立ち寄ったこの無人駅。電車の遅延で時間を持て余していた陽子は、ベンチで本を読んでいた。そのとき、「それ、面白い?」と声をかけてきたのが拓真だった。

 見知らぬ土地、見知らぬ人。けれどその声はどこか懐かしく、安心感を与えてくれた。

 それから毎年の夏、陽子は祖母の家を訪れるたびに彼と会い、駅の近くの林道を一緒に歩いた。木漏れ日の差す小道、そしてリアトリスが咲く草原――そこがふたりの秘密の場所になった。

 リアトリスは、背の高い花で、紫の穂が空へと向かって一直線に伸びていた。

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 「ほら、上から順に咲くんだよ。不思議だよな。まるで……心が燃えてるみたいだ」

 彼がそう言ったのを今でもはっきりと覚えている。

 ある夏、彼は突然、東京に行くと言った。

 「夢を追いたい。花の研究がしたいんだ。園芸じゃなくて、生態の方に興味があるんだ」

 陽子はその言葉を応援した。でも心のどこかでわかっていた。あの草原で会う日は、もう戻ってこないかもしれないと。

 それでも、別れの日、彼は一輪のリアトリスを手渡してくれた。

 「これは俺の“燃える思い”だ。君に出会って、花の意味が変わったよ」

 その言葉に、陽子は泣いた。

 それから一年が経ち、陽子は彼からの手紙を待ち続けたが、返事はなかった。連絡先も変わり、消息もわからない。

 諦めかけていた今年の夏、祖母の家に届いた一通の封筒。差出人の欄には「T. K.」の文字とともに、東京の病院の名前が記されていた。

 封を切ると、そこには短いメッセージと、押し花になったリアトリスの花が一緒に入っていた。

 《最後までリアトリスのように、上を向いて咲いていたよ。君に出会えて、本当に幸せだった》

 拓真の姉からの手紙だった。

 陽子は涙をぬぐい、草原へと向かった。いつもの小道を抜けると、そこには今年もリアトリスが風に揺れて咲いていた。

 空に向かって、まっすぐに――まるで彼の想いそのもののように。

 陽子はそっと、持ってきた一輪のリアトリスを花畑に添えた。

 「燃える思い……ちゃんと、受け取ったよ」

 空の青さの中で、紫の花が静かに揺れていた。