2月25日の誕生花「ハナカイドウ」

「ハナカイドウ」

ハナカイドウ(花海棠)は、バラ科リンゴ属の落葉小高木で、春に美しいピンク色の花を咲かせる植物です。日本では、広く北海道南部から九州まで栽培されています。また中国では、観賞用として親しまれており、公園や庭園に植えられることが多いです。

ハナカイドウについて

科名:バラ科リンゴ属
原産地:中国

開花時期:4月中旬~5月上旬
:小さな赤い実がなる(食用にはあまり向かない)
:楕円形で秋には紅葉する

ハナカイドウと文化

  • 中国では「海棠(カイドウ)」と呼ばれ、美の象徴とされています。
  • 楊貴妃の美しさにたとえられたこともある花です。
  • 俳句や詩にも詠まれ、春の風情を感じさせる花として愛されています。

優雅で繊細な雰囲気を持つハナカイドウは、春の訪れを告げる美しい花ですね! 🌸


花言葉:「美人の眠り」

「美人の眠り」という花言葉は、ハナカイドウのしだれるような優雅な花姿や、つぼみのときのふんわりとした可憐な印象からきています。眠っている美しい女性を連想させることが由来とされています。

また、他にも 「温和」「妖艶」「友情」 などの花言葉があります。


「美人の眠り」

春の訪れを告げるように、庭のハナカイドウが淡いピンクの花を咲かせた。枝はしなやかに垂れ、まるで微睡む少女の髪のように風に揺れる。その花の下に、一人の女性が佇んでいた。

 彼女の名は沙織。白いワンピースを着て、そっとハナカイドウに手を伸ばす。指先が柔らかな花弁に触れた瞬間、彼女の瞳に遠い記憶がよみがえった。

 それは、十年前の春のことだった。

 「沙織、この花の名前を知ってる?」

 あの日、彼女の隣には幼馴染の蓮がいた。蓮は優しい笑みを浮かべながら、満開のハナカイドウを指さしていた。

 「カイドウの花でしょ?」

 「うん。でも、正式には“ハナカイドウ”っていうんだ。花言葉はね――」

 「えっと……たしか……」

 「『美人の眠り』だよ」

 蓮はそう言って、沙織の髪に一輪の花を挿した。ふわりと甘い香りがした。

 「美人の眠り……なんだか、夢みたいな言葉」

 「うん。でも、眠り続けるのは寂しいよな」

 蓮の言葉が妙に引っかかった。彼はまるで、何かを悟ったような目をしていた。

 ――その数日後、蓮は突然、遠くの街へ引っ越してしまった。理由も告げられず、別れの言葉すらなかった。ただ、最後に見た彼の後ろ姿が、今も沙織の記憶に焼き付いていた。

 それ以来、春が来るたびに、彼女はこの庭のハナカイドウを眺めていた。まるで、蓮の面影を探すように。

 「沙織?」

 不意に、懐かしい声がした。

 振り向くと、そこにいたのは――蓮だった。十年の時を経て、彼は変わらぬ優しい眼差しで彼女を見つめていた。

 「……蓮?」

 「久しぶりだね」

 沙織は言葉を失った。何かを言おうとするたびに、胸がいっぱいになって声が詰まる。

 「驚かせてごめん。ずっと……戻ってきたかったんだ」

 「……どうして、何も言わずに行っちゃったの?」

 蓮は少しだけ視線を落とした。そして、ハナカイドウを見上げながら、静かに口を開いた。

 「母さんが病気でね、急に引っ越さなきゃならなかった。でも、沙織にちゃんと伝える勇気がなかったんだ」

 「……そうだったんだ」

 「それに――もしまた会えたら、そのとき伝えたいことがあったから」

 沙織は息をのんだ。蓮はそっと、ハナカイドウの花を手に取る。

 「沙織、覚えてる? この花言葉」

 「……『美人の眠り』」

 「うん。でも、俺にとっては――」

 蓮は彼女の髪にそっと花を挿した。

 「ずっと心の中で眠っていた、大切な想いの証なんだ」

 沙織の頬がふわりと赤く染まる。春風がそっと吹き抜け、ハナカイドウの花弁が舞った。

 彼女の中で眠っていた想いも、ようやく目を覚ましたようだった。